■いかなる鍵も開錠出来る魔法のハーブは実在する ~ ラスコヴニク
ラスコヴニク (Raskovnik)。
スラヴ系の民間伝承に登場するハーブで、万能薬としても知られますが、元々はいかなる鍵も開けることができる魔法のハーブです。
単に家の鍵を開けられる、なんて陳腐なものではなく財宝が入った宝箱を開けることができる、といった解釈です。
セルビアではラスコヴニクでしか開けられない宝箱が実在するとまで信じられていたほどです。
また、ラスコヴニクは鍵を開ける能力だけではなく、地下に埋まった財宝を見つけたり鉄を黄金に還る、つまり錬金術の能力も備わっているといいます。
さて、このハーブはどこに生えているのか?そしてどんな姿をしているのか?
実はそれほど珍しいものではなく、そこら辺に生えているといい、その姿は四つ葉のクローバーに似ているといいます。
しかし、人間にはラスコヴニクを識別する力はなく、見つけることは甚だ困難だといわれています。
ならどうやって見つけるのか?
ブタがトリュフを見つけるのが得意なように、ある特定の動物たちにはラスコヴニクを見つける能力が備わっていると信じられています。
セルビアではハリネズミ、ブルガリアではカメ、クロアチアではヘビといった具合に、その地方によってその動物も異なります。
ここからは少しおとぎ話的ですが、その方法を紹介しましょう。
ハリネズミを使う方法はハリネズミの赤ちゃんを鍵付きの箱に閉じ込めてしまうだけです。
母親はそのカギを開けるためにラスコヴニクを見つけ戻ってくるのでそれを奪い取るという方法です。
注意が必要なのはハリネズミの母親は鍵を開けるとすぐに飲み込んでしまうので素早く奪う必要があります。
カメを使う方法は巣穴に産卵した後、巣を離れたすきに巣穴に鍵付きの柵で囲んでしまう方法です。
これも先のハリネズミと同様、柵の鍵を開けるためにカメはラスコヴニクを探して戻ってくるのでそれを奪うというもの。
いずれの方法も動物の母性本能を利用する卑劣な方法という共通点があります。
ではこのハーブ、実在するのか?といえば、ありそうにもありません。
但し、一つのヒントはあります。
ラスコヴニクは各国、または地方でも呼ばれ方が異なり、相互に似通ってはいるものの微妙にスペルが違ったりします。
(デンジソウ)
(image credit by Wikicommons)
ブルガリア語のラズコヴニチェ (Razkovniche) は実在する植物、デンジソウ (Marsilea quadrifolia) のことであり、四つ葉のクローバーに似ています。
デンジソウはシダ類の水草で、抗炎症作用をはじめ、浄化作用、解熱作用、冷却作用があるといわれ民間療法ではヘビに咬まれた時の処置にも使われるといいます。
こういった有用な作用を有することからラスコヴニクの元になったのか、それとも逆にラスコヴニクにその姿が似ているからそう命名されたのか、それは分かりませんが、いずれにしても関係はありそうです。
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