■捕獲され見世物にされたUMA ~ ホダッグ
今回はアメリカ、ウィスコンシン州北部のラインランダー (Rhinelander) のUMA、ホダッグ (Hodag) です。
UMAながらナソバチルス・ヒストリボラトゥス (Nasobatilus hystrivoratus)、デフォルミス・コルニゲル・ラクリマンス (Deformis corniger lacrimans)、そしてインペラトル・レックス (Imperator rex) の3つの学名が提唱されています、もちろんすべて無効ですが。
ホダッグは北米大陸の主に五大湖周辺に伝わる民間伝承上の生物群、フィアサム・クリッター (Fearsome critters) のひとつで、その中でも根幹をなす存在です。
「フィアサム・クリッター」を直訳すれば「恐ろしい生物」で、確かに人間に対し敵対的で「恐ろしい」存在であるにも関わらず、そのほとんどはユーモラスな特徴やバックグラウンドを兼ね備えているのが特徴です。
ホダッグは人間に虐待されて死んだ動物の化身といわれており、湾曲した一対の角を持ち頭部こそ幾分雄牛を彷彿とさせるものの、短い四肢を備えたその全体的なシルエットはむしろ爬虫類 (特に恐竜) 的です。
また首から尾にかけて背中には湾曲した大きく鋭いトゲを持つのも特徴です。
見た目は醜悪であり、悲しいことにホダッグは自分の醜さを自覚しているといいます。
そのため嘲笑されることを極端に嫌い、嘲笑されると凶暴性が増すためホダッグの前で笑うことは禁物です。
また、ホダッグは独りでいるとき自らの醜さ憂い涙を流すといわれ、その涙は時間が経つと上質な琥珀のように結晶化するといいます。
さあどうでしょう?
こういった特徴を聞けば多くのフィアサム・クリッターがそうであるように、ホダッグもまた到底実在する生物とは思えないに違いありません。
(捕獲されたホダッグ)
(image credit by Wikicommons / Public Domain)
しかし20世紀も終わりに近い1893年、ホダッグが捕獲された、と写真付きで新聞に掲載されたのです。
捕獲したのは地元では著名な人物ユージーン・シェパード (Eugene Shepard) 氏。
その後もシェパード氏は別のホダッグを生け捕りに成功したと主張し、見物料10セントで自宅に展示していました。
実際はワイヤーで動かしているだけのハリボテにすぎませんでしたがとても人気があり、この小さな町の人口 (当時2,600人) 以上の人々がホダッグを一目見ようとラインランダーに訪れました。
時にはホダッグの気性の粗く今日は展示できないとシェパード氏は主張し、それを証明するため彼はホダッグのいる小屋に入ってみせ、ボロボロの服に着替えて再登場、ホダッグと格闘したことを装 (よそお) ったりもしました。
なかなかのエンターテイナーです。
しかしホダッグがあまりに人気になりすぎてしまい、スミソニアン協会の科学者がホダッグを調査しに行く、という話が持ち上がるとシェパード氏は観念し (?)、ホダッグがハリボテであることを告白しました。
シェパード氏の「詐欺」に引っかかったと見物者たちは怒ったでしょうか?
中にはそういう人もいたかもしれませんが概ねホダッグは好意的に受け取られました。
その証拠にラインランダーの町はホダッグを公式シンボルとし、ホダッグの故郷と主張、毎年ホダッグのフェスも催されています。
ホダッグの存在は古き良き時代の名残といった感じです。
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当時としては相当に完成度の高いハリボテだったんですかねー
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