■マヤの神話から伝わる死のコウモリ~ カマソッツ (カマソッソ)
今回はカマソッツ (Camazotz)。
元々はマヤ神話に登場する巨大吸血コウモリですが、神話の世界から抜け出し、中南米の代表的なコウモリ系UMAとしても知られます。
カマソッツという言葉は先住民族キチェ族が使うキチェ語で、「死のコウモリ」を意味し、そのまま英語圏では直訳されデス・バット (Death bat) と呼ばれることもある「不吉の象徴」的存在です。
オオコウモリ系のUMAは多いですが、カマソッツはそれらとは少々趣が異なります。
というのも多くのオオコウモリ系のUMAの特徴が、既知のオオコウモリより単に大型である、もしくは頭部 (顔) のみが人間的なオオコウモリである、というのに対し、カマソッツは頭部はコウモリのままで体がが人間的、と描写されるからです。(単に大型のコウモリという目撃もあります)
取り敢えずカマソッツは「死」を連想させるということなので吸血コウモリに候補がいないか見ていきましょう。
1400種以上知られるコウモリ (翼手目) の中で吸血するのはナミチスイコウモリ (Desmodus rotundus)、ケアシチスイコウモリ (Diphylla ecaudata)、シロチスイコウモリ (Diaemus youngi) の僅かに3種しかいません。
にも関わらず、映画やゲームの影響でしょう、ドラキュラと行動を共にし「コウモリ = 吸血」のイメージがついており、コウモリたちは甚大な風評被害を受けています。
また、吸血コウモリの吸血についてもそのイメージとは大分異なります。
逃げ惑う人間に襲い掛かる、なんてことはなく、睡眠中の家畜 (ウシ・ウマ等) に忍者のようにそっと近寄りカミソリのような鋭い歯で皮膚に傷をつけ、染み出てきた血を舐めるという地味~なもので直接的な攻撃で人を殺傷する能力は皆無です。
但し、稀に狂犬病ウイルスを媒介することがあるため、人間を標的にすることはまずありませんが潜在的な危険性はあります。
まあいずれにしても彼らは揃って体が小さく、血を吸おうが吸うまいがカマソッツの正体になりそうもありません。
やはり巨大コウモリ系のUMAの正体は定番のオオコウモリ類 (Pteropodoidea) に違いありません。
といいたいところですが、中南米にオオコウモリ類は棲息していません。
(チスイコウモリモドキ)
(image credit by Wikicommons)
その代わりといってはなんですが、チスイコウモリモドキ (Vampyrum spectrum) という大型のコウモリが棲息しています。
このコウモリはオオコウモリ類でないにも関わらず、最大個体の翼開長は1メートルに達し、英名は「お化けコウモリ」を意味する「スペクトル・バット (Spectral bat)」。
和名に「血吸い」とあるものの「モドキ」がついてあることからも分かる通り、吸血コウモリではありません。
但し、このチスイコウモリモドキ、多くのコウモリが昆虫食であるのに対し獰猛な肉食性のコウモリで、他のコウモリをはじめ小柄な鳥類やネズミ等を捕食する、まるでフクロウのような存在です。
オスが狩りをし、狩った獲物をその場で解体、可食部以外の羽や尾を捨て可食部だけを巣に持ち帰って家族に分け与えるという非常に珍しい生態をしています。
オオコウモリが棲息していない以上、カマソッツの正体は既知種であればチスイコウモリモドキである可能性が高そうな気がします。
未知種であればチスイコウモリモドキばりの大型の吸血性コウモリを候補に挙げておきましょう。
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