■ウサギと犬のハイブリッド奇獣 ~ グリーン・ドライブの野獣
今回はグリーン・ドライブの野獣 (The beast of Green Drive / The Green Drive beast)。
2005年4月、イングランド北西部ランカーシャーのリザムで地元住民、サンドラ・スターロックという名の女性により奇妙な動物が報告されました。
「車の運転中、野原を横切るときにそれを目撃しました。
正直、何だったのか全くわかりません。
ラブラドールレトリーバーくらいの大きさの生物ということはわかりましたが、ノウサギのようにも見えました。
しかしいずれでもありません、不思議な光景でした」
この目撃がこのグリー・ドライブの野獣のスタートです。
リザムでの目撃であることからリザムの野獣 (Beast of Lytham) とも呼ばれます。
特に初期の1ヶ月は爆発的に目撃情報が寄せられました。
特に、グリーン・ドライブでローンボウルズ (屋外でするボウリングのような競技) をしていた塗装工のウィリー・デイヴィッド氏の目撃証言はニュースとなりイギリス中に広く知れ渡ることになりました。
「グリーン・ドライブの近くでローンボウルズをしていたとき、背後から唸り声が聞こえんだ。
ドクター・フーに出てきそうな怪物で、追跡する価値はあると思うね」
目撃者により大きさは中型犬のボーダーコリーぐらいから大型犬のラブラドールレトリーバーぐらいまで若干の開きはありますが、少なくともUMAにありがちな怪物めいた巨大な生物ではないようです。
青白い体毛、耳が大きくウサギに似ており、口はとても大きい。
この生物は一体何なのか?
話を聞く限り、そこまでパラノーマル感は強いものではなく、おそらく地元住民にも馴染みのない生物であろう、ぐらいな感じです。
しかし、良くも悪くもこれをよりパラノーマルな生物に押し上げたのは超常現象やUMAに造詣が深くそれらをモチーフとするダーク・アーティスト、サム・シアロン氏が描いたイラストです。
(サム・シアロン氏の描いたグリーン・ドライブの野獣)
(image credit: Sam Shearon)
「地元住民も知らない中・大型犬ぐらいの生物」が一気に地球外生命体を含めた「パラノーマルな生物」へと変化しました。
痩せた筋肉質のイヌ科のような濃緑色の生物で、昆虫の触角を彷彿させる奇妙に曲がりくねった長い耳は特に目を引きます。
パラノーマルな生物への変化はより人々の注目を引くこととなりましたが、少なくとも既知の動物でこのようなものはおらず、多くの目撃証言から異なる複数の生物を「グリーン・ドライブの野獣」というひとつの生物に集約しハイブリッド化してしまった可能性があります。
UMAではよくあることですよね。
そこで初心に戻り「地元住民も知らない中・大型犬ぐらいの生物」と考え、有力視されたのがホエジカ (Muntiacus) です。
日本ではホエジカの仲間ではキョン (Muntiacus reevesi) が有名ですね。
イギリスに元来ホエジカは棲息していませんが、1世紀ほど前にホエジカを輸入したものが野生化し全土に広がりつつあり、それを誤認したものでは?というわけです。
しかし確かにホエジカは外来種で見慣れない生物であるかもしれませんが、伝えられるグリーン・ドライブの野獣の特徴、大きさ、体色、耳の形等々、なにもかもが違いすぎます。
いくら見慣れない動物とはいえ、ホエジカを見て怪物騒ぎになるとは思えません。
そこで次に考えられたのはイヌ科の動物、特にキツネではないか、というもの。
キツネ?
とてもありそうにも思えませんが、それはキツネが健康体であるときの話。
そうではなく病気のキツネ、特に疥癬末期のキツネです。
北米版チュパカブラの正体が、コヨーテ等、イヌ科動物が疥癬に罹り毛が抜け落ちてしまった個体の誤認であることが多いことから、この説はかなり有力です。
毛が抜け地肌が剥き出しとなった野生動物は青白かったり青黒かったりします。
また、それほど耳の大きくない (と思っていた) 生物でも毛が抜け落ちることで耳が思っていたよりも長く、大きく見えることもしばしばあります。
素人では疥癬に罹った動物を特定するのは難しく怪物騒ぎになるのは茶飯事です。
イギリスには日本と同じくアカギツネ (Vulpes vulpes) が棲息しており、疥癬に罹ったアカギツネがその正体だった可能性は十分考えられます。
疥癬は酷くなると衰弱し死に至るため、グリーン・ドライブの野獣の目撃された期間がほぼ1ヶ月程度と短かったのもその説を後押しします。
なんだ、ただの疥癬に罹ったキツネか、、、
と残念がることはありません、すっかりその存在を忘れ去られそうになった2年後の2007年、またもグリーン・ドライブの野獣騒ぎが起きたのですから。
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