このブログを検索

2025年2月24日月曜日

未発見の巨大なヒヒか? ~ イスナチ


■未発見の巨大なヒヒか? ~ イスナチ

今回はイスナチ (Isnachi)。

イスナチとはキチュア・ラミスタ語で「強き男」を意味し、獣人系UMAの呼称であるのと同時に南米唯一のクマ、メガネグマ (Tremarctos ornatus) の別称でもあります。

イスナチはペルーの多くの山間部から報告があり、体色は真っ黒、その身長は4フィート (約1.2メートル) ほど、頭部はヒヒマンドリルに似るといいます。

中南米の霊長類として広く繫栄する広鼻類 (クモザル、オマキザル、サキ) が華奢で尾の長いのが一般的なのに対し、イスナチは筋肉質で胸板が暑く、また尾が太く非常に短いのが特徴であり、全体的な印象はゴリラに似るという目撃証言もあります。

クモザル科の最大種、ウーリークモザルのキタムリキ (Brachyteles hypoxanthus) であれば、頭胴長こそ50センチ程度ですが、直立すればなんとかイスナチと同程度の身長を誇ります。

(キタムリキ)
(image credit: Wikicommons)

しかし、イスナチの頭部がヒヒやマンドリルに似ている、筋肉質で分厚い胸板を持つ、といった身体的特徴を考慮するとキタムリキだろうとミナミムリキ (Brachyteles arachnoides) だろうとその正体とは考えにくいところです。

アメリカ系ペルー人の動物学者・鳥類学者のピーター・ジョセフ・ホッキング (Peter Joseph Hocking) 氏は幼少より未確認動物に興味を示し、人生の多くの時間を未確認動物の調査・研究に割きました。

そのひとつがイスナチであり、彼のまとめたイスナチの調査によればこの動物は熱帯の山岳地帯に分布する樹上棲の霊長類であり食性は主に植物食、単独で行動することが多いものの稀に小さな群れをつくる、といったものでした。

ホッキング氏が聞き込みをした人々の中には実際に目撃しただけではなく、狩猟によりイスナチを殺したと主張する人や、写真撮影に成功したと主張する人も含まれますが、にもかかわらず物的証拠はひとつも残っていないようです。

UMAあるあるではありますが。

冒頭で述べた通り、イスナチはメガネグマの別称であり、むしろ地元ではメガネグマ (Spectacled bear) とは呼ばずアンデスグマ (Andean bear) やそれこそイスナチと呼ぶ方が一般的でありその正体はメガネグマは必然的に筆頭候補となります。

(メガネグマ)
(image credit: Wikicommons)

メガネグマの頭胴長は1.2~2.0メートル、体重100~200キログラムとUMAのイスナチより遥かに屈強そうですが1.5メートル以上になるのはほとんどがオスでメスはオスよりはるかに小柄で平均体重も65キロ程度です。

メガネグマは樹上棲で稀に群れることはあるものの基本は単独で暮らし、その食料の95%は植物、一般的に獰猛なクマのイメージとは異なり肉を食べることはほとんどありません。

UMAのイスナチのそのほとんどの特徴、すなわち樹上棲、単独行動、植物食、筋肉質の体、体長 (特にメスのメガネグマ) がメガネグマと丸被りし、かつメガネグマがイスナチと呼ばれることからも「(UMAの) イスナチ = メガネグマ」である可能性はかなり高いと言えます。

メガネグマには頭部から胸元にかけて特徴的なクリーム色の模様がありますが、ホッキング氏はUMAのイスナチにはその模様がないため別種であると主張するものの、メガネグマの模様は個体によってバラバラ、ほとんど目立たないものもいますから、その模様の有無だけでメガネグマと別種とするにはちょっと根拠が乏しいような気もします。

UMAの定番として絶滅種にその正体を求めたいところですが、南米にヒヒが棲息していたことはなく、めぼしい大きめの霊長類としてカルテレス・コイムブラフィルホイ (Cartelles coimbrafilhoi) とかでしょうか。

カルテレスは僅か1万5千年前に絶滅したホエザルの近縁種で、キタムリキが最大で15キロ程度に対し24キロほどもあったと推定されています。

(関連記事)



0 件のコメント:

コメントを投稿