カナダのブリティッシュ・コロンビア州にあるテティス湖 (Thetis Lake)。
森の木々に囲まれた自然豊かな湖で、1958年カナダ初の自然保護区に制定されました。
この湖のテティス (Thetis) という名はイギリス海軍のフリゲート艦、テティス号 (HMS Thetis) に由来しますが、もともとテティスとはギリシャ神話に登場する女神の名前です。
景観といい湖の名といい妖精こそ現れそうなものの、怪物など無縁と思われるこの湖で怪物騒動が起きました。
1972年8月22日、少年ふたりが湖の近くの警察署に飛び込んできたのです。
少年たちはこの湖に訪れていた地元のティーンエイジャーで、ふたりの話によれば見たこともない生物に追いかけられたというのです。
怪物の身長は5フィート (約1.5メートル)、その姿はモノクロ映画「大アマゾンの半魚人 (Creature from the Black Lagoon)」に出てきた半魚人 (Gill-man) そのものであったといいます。
怪物に追われた際に、少年のひとりは怪物によって怪我をさせられたといい、実際、腕に怪我を負っていました。
半魚人に襲われたかどうかは別として、少年が怪我をしていたことは事実であり、またふたりとも非常に怯えていたことから警察は湖の周りを調査することにしました。
調査の甲斐なく湖の周りからなにひとつ証拠を発見することはありませんでしたが、この騒ぎは新聞に取り上げられカナダ中に知れ渡ることになります。
新聞に掲載されて4日後、今度は釣りをしていた別のふたりの少年が半魚人との遭遇を告白します。
目撃場所は最初の目撃とは反対岸だったといいます。
「そいつ湖から這い上がってきてキョロキョロあたりを見渡したんだ。
それからすぐに湖に戻ったけどね。
僕らは走って逃げたよ!
体つきはふつうの人間と変わらなかった、けど顔は怪物さ、そいつは全身がウロコで覆われていて、頭部が尖って突き出ていた、耳もものすごく大きかったよ」
かれらによれば半魚人の体色は銀色を帯びたブルーだったといいます。
しかし、、、
(「ビキニの悲鳴」より)
作家にして懐疑論者のダニエル・ロクストン (Daniel Loxton) 氏はこの事件から数年後、少年たちの怪物の描写がホラー映画「ビキニの悲鳴 (The Beach Girls and the Monster / Monster from the Surf)」に出てきた怪物と酷似していることに気付きます。
実際、少年たちが怪物を目撃したと主張する数日前にこのエリアで「ビキニの悲鳴」がテレビで放映されていたことを突き止め、少年のひとりにインタビューします。
すると少年は世間の注目を浴びたいからと、半魚人の目撃をでっち上げたことを告白します。
結局は連れのもうひとりもでっち上げを白状したことにより2度目の遭遇は完全な嘘だったことが判明します。
それでも残る最初の目撃談。
とき同じくしてテティス湖近郊に住む人物から警察へ電話が入ります、自らが飼っていたテグートカゲ (Tegu lizard) が脱走してしまったと。
テグーは中南米を原産とする大柄なトカゲの仲間です。
この報告を受けた警察は、少年たちはこの脱走したテグートカゲを半魚人 (もしくはトカゲ男) と認識してしまったものと断定し捜査を終了します。
しかしこれはかなり苦しい幕引きです、おそらく半魚人との遭遇というバカげた主張の捜査が面倒くさくなったのでしょう。
(アルゼンチンブラックアンドホワイトテグー)
(image credit by Bernard DUPONT from FRANCE)
ちなみにテグートカゲの最大種はアルゼンチンブラックアンドホワイトテグー (Salvator merianae) です。
仮にこのとき脱走したテグートカゲがアルゼンチンブラックアンドホワイトテグーだったとします。
本種は稀に1.4メートルという巨体に成長することがあるといわれていますが (通常は1メートル以下)、今までに脱走したアルゼンチンブラックアンドホワイトテグーがワニに誤認されたことはあれど、半魚人に間違われたことはありません。
当然です。
いくら大きくても歩行の際は腹ばいであり、これが二足歩行する半魚人やトカゲ男に誤認するとは考えられません。
2度目の目撃談がでっち上げだったことで、現在テティス湖の怪物の話自体が全部嘘のように扱われていますが実は解決されていないUMA目撃談なのです。
ちなみに水生爬虫類型ヒューマノイドということで日本語では「半魚人」がしっくりきますが、一般的には「リザードマン (トカゲ男)」にカテゴライズされているUMAです。
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