■帰ってきたトカゲ男 ~ リザードマン2008
「わたしに会うとみんなこう言うんです。
『保安官、あの車の傷を見ました?あれはきっとリザードマンの仕業ですよ』って。
わたしは住人たちにリザードマンに気をつけてください、なんて言うつもりは毛頭ありません。
あれはコヨーテの仕業に違いありません。
心配はいりません、コヨーテが暴れて、そしてその犯人であるコヨーテ自身が死んでしまったんですから」
これはアメリカ、サウスカロライナ州で2008年2月に起きたリザードマン騒動について問われた地元保安官の言葉です。
ことの発端はビショップヴィル (Bishopville) に住むボブとディクシーのローソン夫妻 (Bob & Dixie Rawson) のライトバンが何者かによって傷だらけにされていたことに始まります。
特に車の前部の損傷がひどく、引っかき傷や咬まれたような穴がいくつも空いていました。
(何者かによって破壊されたライトバン)
(image credit by CNN via The Ancients)
そしてこの事件を境にローソン夫妻が飼っていた6匹の飼い猫も全て行方不明、猫たちがいつも寝ていたお気に入りのタオルもずたずたに引き裂かれていました。
そして夫妻の自宅近くには牛とコヨーテの死骸が横たわっていました。
この惨状を目の当たりにすれば、これをやったのはかなり獰猛な生物に違いない、皆がそう思うのも無理はありません。
運良く車には血痕が残されていたため、DNR (Department of Natural Resources, 天然資源省) にサンプルを送り、DNA鑑定による真犯人の特定を依頼しました。
しかし残念ながらサンプルには不純物が混入しており初期に行われたDNA鑑定では種の特定には至りませんでした。
鑑定には失敗しましたが、DNRは破壊されたライトバンの傷跡からコヨーテによるものではないか、との見解を示し、保安官がそれに追随したのが冒頭の発言です。
破壊された車の持ち主であるディクシーさんはその発言に憤ります。
「車を破壊したのがコヨーテだっていうのなら、牛とコヨーテは誰が殺したっていうのよ!?」
そう、犯人であるコヨーテが死んでいるからです。
おそらくは散々暴れた挙げ句、猫や牛との格闘の末、傷つき疲れ果て死んでしまった、、、に違いない、少なくともDNRと保安官はそう解釈したのです。
しかしそんな説明に納得できないディクシーさんはあくまでリザードマンの仕業と主張します。
何者かが暴れたのは確かですが、誰もその姿を見ていません。
にも関わらずディクシーさんがなぜそんなバカげた (失礼!) 主張を繰り返すのか?
そう、ここサウスカロライナ州のビショップヴィルは元祖リザードマン (トカゲ男) の誕生 (目撃) の地だからです。
この無惨なライトバンを見たディクシーさんは、すぐさま20年前に起きたリザードマン事件を思い出したのです。
20年前の1988年、全米を揺るがすリザードマン襲撃事件が起きたことにより、ビショップヴィルではすっかりリザードマンの存在が定着しているのです。
さて納得のいかないディクシーさんのためかどうかは分かりませんが、再度のDNA鑑定を行ったところ、なんとディクシーさんの主張通りコヨーテの仕業でないことが分かったのです。
死んだ上に真犯人の濡れ衣まで着せられていたコヨーテでしたが、なんとか嫌疑は晴れました。
コヨーテは被害者だったのです。
DNA鑑定により血痕の正体は謎の生物と判明し、リザードマンの可能性も残されている、、、とはいかず、なんと飼い犬のものであることが判明しました。
どんだけ獰猛な飼い犬だったのか。
野生化した野犬の集団だったのか、単独犯だったのか、これ以降、偽リザードマンの襲撃はなく結局犯人の特定には至りませんでした。
さて1988年、リザードマン目撃事件の中心人物、当時16歳だったクリストファー・デイビス (Christopher Davis) 少年。
20年越しに起きたリザードマン襲撃事件を聞いてなにを思ったか?是非とも話を聞いてみたいものです。
しかし残念なことにデイビス氏はこの事件の翌年、2009年に麻薬絡みの銃撃事件に巻き込まれ37際の若さで亡くなっています。
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