■実在する天使?それとも悪魔? ~ グルトレグア
今回はグルトレグア (Gurutregua)。
グルトレグアはチリ領でフエゴ島に次ぐ2番目に大きな島、チロエ島に伝わる精霊です。
先住民族、マプチュ族の神話に登場し、その姿は大柄なキツネに近いといいます。
興味深いことに、グルトレグアは旅人に対し「間接的に」災いを事前に知らせてくれます。
いったいどのように?
まず大事なのはグルトレグアに敬意をもって接することを心掛けないといけません。
旅人が道中、森の中でグルトレグアと鉢合わせした場合、彼らに敬意を表し道を譲る必要があります。
グルトレグアの進行の妨げにならないよう横に逸れ、黙ってお辞儀をし、グルトレグアが通り過ぎるのを待ちます。
グルトレグアが過ぎ去ったら旅人はまた先ほどの道へ戻り目的の地を目指します。
敬意を表した旅人をグルトレグアは守ってくれるといい、そうしなかったものには彼らによって呪いをかけられるといいます。
ではまたグルトレグアと鉢合わせしたら?
再び道を逸れ、彼らが通り過ぎるのを待つ、、、
いえ、今回はそうはしてはいけません。
旅人が2度グルトレグアに遭遇した場合、それは旅人がその道を進むべきではない、というサイン (兆候) なのです。
そのまま進み続ければ、不幸や悲劇が必ず旅人の身に降りかかることを、自らの存在によってグルトレグアは暗示してくれているのです。
なのでグルトレグアと2度遭遇した場合、旅人はその道を進み続けるのを断念し踵を返さなければいけません。
悪魔的であり天使的であり、その扱いで両極端な振る舞いをします。
と、伝承上のグルトレグアはこんな感じです。
いかにも、お伽噺的な感じではあるものの、その姿は冒頭にも書いた通り、大柄なキツネ、人の言葉を喋ったり二足歩行するわけでもありません。
森の中で同じ生物に2度出会った場合、人はどう考えるか?
ただの偶然と思う人もいれば、何か意味があるに違いない、、、それは何かのサインなのでは?と、捉える人もいるでしょう。
そしてグルトレグア (と呼ばれる野生動物) に2度遭遇するのは「悪いサイン」と考えたのでしょう。
悪魔的、天使的、というのはあくまで人間が考え出したストーリー。
それに加え、その姿からもグルトレグア自体、実在しても全く不思議ではありません。
(ダーウィンギツネ)
(image credit: Wikicommons)
そしてその候補はダーウィンギツネ (Lycalopex fulvipes)。
この伝承のある、チロエ島にのみ生息するキツネ (但しキツネ属ではない) で、その名はかのチャールズ・ダーウィンに捕獲されたことに由来します。
頭胴長60センチほどの黒っぽい毛のキツネで、決して伝承のように大柄な生物ではありません。
しかし、この島の固有種であり、一風変わった見た目や毛色から、仮に「ダーウィンギツネ = グルトレグア」でないとしても、この伝承に関与しているのはほぼ間違いないでしょう。
大柄な哺乳類であればクマがやはり候補となりますが、南米のクマといえばメガネグマ (Tremarctos ornatus)、しかしチロエ島にメガネグマは棲息しておらず誤認したものではなさそうです。
あわよくば、、、西表島にイリオモテヤマネコとその巨大種、UMAのイリオモテオオヤマネコ (ヤマピカリャー) がいるように、チロエ島にもダーウィンギツネとその巨大種、「オオダーウィンギツネ」がいれば最高なんですけどね。
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