■沼に巨大生物が潜んでいる ~ ユーロア・ビースト
今回はユーロア・ビースト (Euroa Beast)、オーストラリアのUMAです。
オーストラリア、ビクトリア州北東部のストラスボギー郡にあるユーロア地区で目撃されたことによりこの名で呼ばれます。
ユーロアという単語自体は先住民族アボリジニの言語で「ジョイフル (楽しい、嬉しい)」を意味しますが、ユーロア・ビーストは全く「楽しいビースト」ではありません。
ユーロア・ビーストが初めて報告されたのが1884年、文書化された最も古いものは1890年2月25日のブリスベン・クーリエ紙に掲載されたものといわれています。
「約14マイル (約22キロメートル) 離れたワイロネンビーの沼地でとてつもない動物が目撃されたことによりユーロアでは大変な騒ぎが起きています。
過去6年以上に渡り小川が流れ込む幅150ヤード (約137メートル) ほどのこの沼地にはなにか尋常ではない動物が彷徨っているといわれ、犬ですら近寄りません。
先週二人の若者が沼地へ行き、丈6フィート (約1.8メートル) にも伸びた葦 (あし) の除草作業を行っていたときのことです、突如彼らの近くで水しぶきが上がると荒い鼻息と共にまるで大きな動物が通ったかのように葦が揺れたのです。
驚いた二人は急いでその場から逃げましたが、翌日、若者のひとりは刈り取った葦を片づけるため再び沼地へやってきました。
しかしまたも奇妙な唸り声が沼地に響き渡ったため、若者は驚き、その拍子で丸太に飛び乗ったといいます。
すると30ペース (約23メートル) ほど先にブルドッグに似た大きな頭部をもつ生物が浮かんでいるのに気付きました。
怪物は身動きせず若者と暫くの間対峙していましたが10分ほどすると何もせずそのまま姿を消したといいます。
(全体像は見えなかったものの) 葦の揺れから若者はその怪物の体長を30フィート (約9メートル) と推測しました。
若者はひどく怯えていたといいます。
このニュースが地元紙に掲載されると狩猟家や地元の先住民族たちが集結し怪物退治に沼地へと向かいました。
しかし1時間以上に渡って沼を捜索した甲斐もなく怪物は現れず、一団は諦めて帰ろうとしたそのとき葦の揺れる音が聞こえました。
振り向いて音の行方を追うとそこには成人男性の太ももほどもある尾が藪の中へと逃げ込もうとしている瞬間でした。
一団はその怪物に向け発砲するもどうなったかは分かりません」
いかがでしょう?
僅か150メートル足らずの小さな沼地で9メートルもある巨大生物が6年間も発見できない、というのはなかなか考えにくいところではあります。
しかしこの9メートルという大きさは「葦の揺れ」で判断したあくまで推定値であり、実際はそれほど大きくなかった (半分以下)、と考えれば信憑性がぐんと増すのではないでしょうか。
オーストラリアの既知動物で一番あり得そうなのはやはりワニ (クロコダイル) でしょう。
オーストラリアにはイリエワニ (Crocodylus porosus) やオーストラリアワニ (Crocodylus johnsoni) といった大型のクロコダイルが棲息しています。
ただユーロア・ビーストの目撃された地域がオーストラリア最南端のビクトリア州であり、クロコダイルたちの生息域から大きく外れているのが難点です。
ユーロア・ビーストの頭部がブルドッグ的なのもクロコダイル説にはマイナス要素です。
ではオオトカゲはどうでしょう、ゴアナの一種でペレンティーオオトカゲ (Varanus giganteus) やレースオオトカゲ (Varanus varius) 等、オーストラリアにオオトカゲは豊富です。
(メルテンスオオトカゲ)
(image credit by Wikicommons)
メルテンスオオトカゲ (Varanus mertensi) のように水辺に生息するオオトカゲも棲息しています。
クロコダイルと比べ吻も短くブルドッグ的とは言いませんが頭部の特徴はクロコダイルよりは近そうです。
但し、こちらもクロコダイルよりは若干マシとはいえ、オオトカゲが棲息するにはビクトリア州は少々南過ぎるかもしれません。
まあ生息域から外れていても実在する生物ですからクロコダイル、オオトカゲ共に筆頭候補でしょう。
(クーラスクス・クレエランディ)
(original image credit by Tim Bertelink)
最後にUMAらしく絶滅種を候補に挙げ上げて締めましょう。
オーストラリアのビクトリア州で発見された巨大両生類といえばクーラスクス・クレエランディ (Koolasuchus cleelandi)、巨大なオオサンショウウオのような姿をしていたと考えられており最大体長は4メートル、生息域、体長、姿、全てにおいてユーロア・ビーストの正体として申し分ありません。
絶滅したのが1億2000万年前と恐竜よりも早く絶滅してしまっているのが最大の難点ではありますが。
尚、同じくオーストラリアの代表的UMAのひとつ、バニープとは姿形を異なるものの、犬的な頭部、水辺を好む (水棲もしくは半水棲) といった習性に共通点があることから関連性はあるかもしれません。
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オーストラリア肺魚という説はどうでしょうか。顔が短いし、頭部があまり魚っぽくないので奇怪な生き物に見えるかもしれません。食用にすると言う話は聞かないので当時なら現地民でも知らない人は多そうな気がします。
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