■復活なるか?胃袋で子育てするカエル ~ カモノハシガエル (イブクロコモリガエル)
オーストラリア東部、クイーンズランド州につい最近まで棲息していたカモノハシガエル (platypus frog)。
カモノハシガエルは二種存在し、クイーンズランド州南部のものをカモノハシガエル (Rheobatrachus silus)、北部のものをキタカモノハシガエル (Rheobatrachus vitellinus) と呼び分けます。
いずれの種も1980年代半ばまでには絶滅したものと考えられていますが、胃の中で子育てするという恐ろしく特殊なカエルで、英語圏ではむしろもうひとつの和名イブクロコモリガエルの意であるガストリック・ブルーディング・フロッグ (Gastric-brooding frog) とも呼ばれる方が多いようです。
(実際のカモノハシガエル)
カモノハシガエルという呼び名については、カモノハシと同様にオーストラリアの固有種であること、また、カモノハシのように滅多に水から上がってこない由来するといわれています。
ただ、水棲・半水棲が多いカエルの仲間としてはそれほど珍しいことではありませんからなんかイマイチな命名に感じてしまいます。
とはいえ、少ない観察記録の中でも採餌 (さいじ) の時以外、滅多に水辺を離れることはなく、陸に上がったとしても水辺から3メートル以上離れたことはほとんどなかったといいます。
食性は昆虫食で水棲・陸棲問わず、水棲の昆虫で賄いきれなかったときのみ仕方なしに水から出た感じでしょうか。
カモノハシガエルの体長はオスが4センチ前後、メスが少し大きく5センチ前後、キタカモノハシガエルはオスが5センチ前後、メスが8センチ前後と一回り大きいのが特徴です。
いずれの種もクイーンズランド州の熱帯雨林のほんの僅かな地域の渓流に生息していたと考えられます。
このカエルの特徴は前述した通り「育児を胃の中ですること」。
体外で受精した卵を飲み込んでしまい胃の中に格納します。
平均的な産卵数は40個に対し胃の中で発見される卵はその半分の20個。
半数はどこに消えてしまったのかは謎で、はじめから飲み込めるのが20個程度だったのか、それともすべて飲み込んでも半数は胃酸で消化されているのかどちらか分からないといわれています。
カモノハシガエルは卵を飲み込む前の胃の状態は他のカエルと同様、強い消化酵素を持ちそのままであれば卵はすべて消化されてしまいますが、卵を包むゼリー状物質に含まれる化学物質 (プロスタグランジン) により胃酸の生成を止めてしまうことで消化を逃れることができます。
なのでその効果が表れる前に半分は消化されてしまっていたのかも?という仮説があるのです。
胃酸の分泌も止まり安全となった母親の胃の中、やがて卵は孵化しオタマジャクシになりますが仔ガエルになるまで最大7週間前後、親は食事を摂ることはありません。
この不思議なカエルは絶滅してしまいましたが、1970年代から冷凍保存されていたカモノハシガエルの細胞を使い復活計画、ラザロ・プロジェクト (the Lazarus Projec) が行われています。
代理母に抜擢されてているのはカモノハシガエルの遠縁のチャイロシマアシガエル (Mixophyes fasciolatus) の卵子、胚の初期分裂までは進むもののそれ以上は進まずオタマジャクシの誕生には至っていません。
いずれ成功する日がやってくるのか?
ちなみに似たような子育てをする南米のダーウィンハナガエル (Rhinoderma darwinii) もいますが、こちらはオスが鳴くときに膨らませる鳴嚢 (めいのう) の中で育てるという点で異なります。
こちらも生息数はクリティカル、絶滅の危機にあります。
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