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2024年6月28日金曜日

サルを主食とする木 ~ モンキー・トラップ・ツリー


■サルが主食? ~ モンキー・トラップ・ツリー

南米ブラジルのジャングルには、サルを捕えて栄養を摂る伝説の木、モンキー・トラップ・ツリー (Monkey Trap Tree) という食虫植物があるといいます。

植物学者ランドール・シュワルツ (Randall Schwartz) 博士の1974年の著書、「食虫植物 (Carnivorous Plants)」に掲載されているといいます。

この木はブラジル人探検家マリアーノ・ダ・シウバ (Mariano da Silva) 氏により発見されたもので、クモザル、マーモセット、タマリン等の小型哺乳類を引き寄せるフェロモンを出し誘引します。

フェロモンが出ているのは木の上部であり、その匂いに誘われ木を登るとたちまち大きな葉に包み込まれ身動きが取れなくなるといいます。

その動物たちを包んでいる葉は完全に消化しきるまで開くことはなく、次に開くときは動物たちは白骨化しており地面へばらばらと落ちてしまいます。

さて食虫植物が昆虫を捕らえられるのか?捕まえたところで消化できるのか?という質問についてはイエスです。

(ネペンテス・ラジャ)
(image credit by Wikicommons / left / right )

ウツボカズラの最大種、ネペンテス・ラジャ (オオウツボカズラ, Nepenthes rajah) やネペンテス・アッテンボロギ (Nepenthes attenboroughii) の捕虫器は容量が2リットルを超えるバケツみたいな大きさに成長することがあり、小型の哺乳類や爬虫類が誤って落ちて溺れ死に、実際に消化されているのも確認されています。

しかしモンキー・トラップ・ツリーは目撃者によればもっと能動的でハエトリソウ (Dionaea muscipula) タイプです。

ハエトリソウはハエももちろん捕えますが、全体の食事の約10%、ほとんどはアリとクモで構成されます。

この植物らしからぬ葉を閉じて獲物をつかまえる、という「能動的」な動作には恐ろしいほどのエネルギーが投入されるため、間違って閉じるということはできる限り避けなければいけません。

そのため短時間で2回の刺激を感じて初めて生物と感知し葉を閉じます。

しかしそれでもたまたま短時間で異物が2度も飛んできて2度刺激を与えることもあるでしょう、葉は生物と感知して閉じてはしまいますが、今度は閉じた後に5回の刺激がなければ消化酵素を出さないようになっています。

ただの無機物を挟み込んで消化液まで出す、とになるととんでもないエネルギーを消費した上に収穫ゼロというヘタすると命に係わるため、かなり考えられた進化を遂げています。

とこのように植物にしてみると能動的に動くのはハエを捕まえることですらこれほど大変ですから、サルを捕まえるにはとんでもないパワーが必要とされます。

事実上、厳しいと言わざるを得ません。

ただ、もしかするとモンキー・トラップ・ツリーはここから誕生したのではないか?という植物は存在します。

その植物はサガリバナ科のブラジルナッツ (Bertholletia excelsa)。

(ブラジルナッツの実)
(image credit by Wikicimmons)

高さ50メートルに育ち、その樹上には最大2キロにもなる固い殻に覆われた実をつくります。

50メートルの高さから固い2キロの物体が落ちてきてまともに当たって無事でいられるはずがありません。

人間ですらヤバいですから、小型の哺乳類ならそのまま意識不明の重体か死んでしまうでしょう。

まあそんなしょっちゅう当たることはないと思いますが。

白骨化した哺乳類が根元に落ちている、その木はいつもブラジルナッツ。

これはもしかしてこの木がサルを消化し骨を捨てているのでは?そう思ってモンキー・トラップ・ツリーが出来上がったかもしれません。

ちなみに似たような木にホウガンノキ (Couroupita guianensis) がありますが、こちらの実の重さは最大5キロになるとか。




1 件のコメント:

  1. ブラジルナッツの収穫って危険なんだな。次からもっと感謝して食べよう。

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