■19世紀に目撃された唯一無二のモンスター ~ スワン・バレー・モンスター
今回はスワン・バレー・モンスター (Swan Valley Monster)。
アメリカ、アイダホ州ボンネビル郡のスワン・バレー (Swan Valley) で目撃されたことからこの名で呼ばれます。
スワン・バレーは人口が200~300人程度と、とてもとても小さな町です。
そんな小さな町で目撃されたスワン・バレー・モンスターは、アイダホ州出身の作家 ヴァーディス・フィッシャー (Vardis Fisher) 氏によって書かれ、1939年12月に出版された「アイダホの伝承 (Idaho Lore)」の「ストレンジ・フォーナ (「奇妙な動物相」Strange Fauna)」の章にに登場します。
1868年8月22日、目撃したのは一頭の馬を連れた老人でした。
彼が川を渡ろうと岸に近付いたとき、水中からなにかが浮き上がってきたのです。
初めに水面に現れたのは「鼻」でした。
先端から勢いよく水を噴出しながら浮き上がってきたその生物の鼻はゾウのそれに似てとても長いものでした。
ゾウがアイダホに?
しかしそれは決してゾウではありませんでした。
鼻に続いて頭部が現れるとそれはヘビに似ていたのです。
そしてヘビやトカゲのように二股に分かれた舌を揺らしながらその怪物は老人のいる岸へと向かってきました。
体長は20フィート (約6メートル) ほど、鼻をつんざく悪臭を放っていました。
首の周りはライオンのたてがみのように長い毛 (もしくはトゲ) のようなものが飛び出ており、体は虹色に輝く大きな鱗で覆われていました。
ゾウのような鼻を除けば全体の印象は完全に爬虫類で、実際に老人もその生物を爬虫類と認識しました。
しかしその体には哺乳類にも爬虫類にも当てはまらない特徴がありました、6対12本もの短い脚があったというのです。
しかしただ茫然と見ているわけにはいきません。
その不気味な怪物は老人の方へ向かってきているのです。
しかも毒を巻き散らしていたといい、その毒が触れたものは動物であれ植物であれ瞬く間に死に至ったといいます。
老人は手持ちのライフルをその怪物に向かって2発撃ち込むと怪物は川岸に崩れ落ちました。
老人は町へ引きずって帰ろうと思いましたがとても一人の力では不可能です。
ひとまず死体をその場に放置し、若い衆を呼びに町へと戻りました。
戻ってくるとかなり遠い距離からでも悪臭が漂ってきたといいます。
しかし怪物の姿はありませんでした。
てっきり死んだと思い込んでいたものの瀕死の状態で逃げたのかもしれないと老人は考えました。
老人はその後もスワン・バレー・モンスターを追い求めたといいますが二度と出遭うことはなかったようです。
さて、この生物の正体は?
あまりに独特過ぎて候補が見当たりません。
単純にこういった謎の動物 (UMA) がいる (いた) かもしれない、と考えるもよし。
個人的には特に掘り下げるべき動物ではないような気もします。
この生物を取り上げたヴァーディス・フィッシャー氏の著書は連邦作家プロジェクト (Federal Writers' Project) の一環で書かれたものです。
連邦作家プロジェクトは世界恐慌で職を失った作家に対する国家主導の救済プロジェクトで、各州に根付いた歴史や民族史、州ガイド等、たくさんの書物が作成されました。
フィッシャー氏は「アイダホの伝承」を執筆するにあたり、特に勤勉にアイダホ州の歴史を研究したといい、その膨大な資料の中から非常にレアな民間伝承等も掘り起こしていたかもしれません。
このスワン・バレー・モンスターの話はおそらく民間伝承で、フィッシャー氏が少しばかりモキュメンタリー風の脚色を加えたものかもしれません。
(参考文献)
Idaho Lore
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