■ヤギの血を吸うもの ~ チュパカブラ
メジャーなUMAは後回しにしているため、いまさらながらチュパカブラ (Chupacabra) の紹介です。
UMAファンにはもうお馴染みの根幹をなす有名なUMAなだけに要点だけ軽く触れていくので復習がてらお読みください。
チュパカブラはプエルトリコ発のヒューマノイド系UMAで、スペイン語で「ヤギ (の血) を吸うもの」を意味し、英語圏では直訳しゴート・サッカー (Goat sucker) なる異名を持ちますが海外サイトで使われているのはあまり見たことはありません。
この名は1995年3月、チュパカブラによって初めて襲撃された農家で、体に刺し傷を負い血を抜かれた8頭のヤギの惨殺死体が発見されたことに由来します。
この後しばらくは中南米を中心に目撃されていましたが、21世紀頃を境に北米での目撃が爆発的に増加することになります。
但し、注意しないといけないのが中南米で目撃されるチュパカブラ像と、のちに北米で目撃されるようになるチュパカブラ像が全く異なるという点です。
中南米のチュパカブラは日本人のUMAファンがチュパカブラと聞いて思い描くヒューマノイドタイプであるのに対し、北米で目撃されるチュパカブラはイヌ科に似た四肢動物タイプです。
まずは元祖チュパカブラ、ヒューマノイドタイプ。
(日本製のチュパカブラの食玩フィギュアを見れば一目瞭然)
(コレクト俱楽部七不思議編 UHA味覚糖製)
(月刊ムー監修 株式会社ハート製)
(ブリスターがそのままディスプレイになります)
(飛び抜けて精度の低い (笑) チョコエッグキッズ フルタ製)
ヒューマノイドタイプは二足歩行する爬虫類といった感じで恐竜の獣脚類に似ています。
体長は0.9~1.5メートルほど、全身緑色の鱗もしくは皮膚で覆われており、四肢には大きなカギ爪、頭頂部から尾部にかけて鋭く尖った刺を並びます。
身体に比してやや大きめの頭部には、爬虫類的な大きな赤い目、口からはみ出る巨大な犬歯、ヘビやトカゲを彷彿させる二股に分かれた舌を持ちます。
後肢はカンガルーのそれに似ており敏捷性に優れ驚異的な跳躍力を有していることで知られています。
また、前肢と体がコウモリのような被膜 (もしくは翼) で繋がっているという目撃もありますが、飛翔できるほど大きなものではなく高く跳躍するときの補助、もしくは高所から飛び降りた際に着地の衝撃を和らげる、といった役割を担う程度のようです。
(典型的な北米版チュパカブラ)
(original image credit: MONGABAY)
一方、全米で目撃される四肢動物タイプはというと、こちらは完全にイヌ科の動物を彷彿とさせるもので中南米のものとは全く姿が異なります。
写真や死骸も数多く報告されていますが、一般的に痩せこけて毛が無く青黒~灰色の体色をしています。
このタイプはほぼ野犬かキツネ、コヨーテ (Canis latrans) が皮膚病 (疥癬) に罹患し毛が抜け落ちやせ細ってしまったものが正体と考えられています。
(タテガミオオカミ)
(image credit by Wikicommons)
北米のチュパカブラはより野生動物的かつ現実的ですが、如何せん、中南米で目撃されるチュパカブラとはあまりに姿が違いすぎるため、本来は別物と考えるべきだったでしょう。
とはいえ、もうどちらのタイプも「チュパカブラ」で浸透してしまっているので今更手の打ちようはなく、チュパカブラには異なる2つのタイプがある、と考えるしかなさそうです。
北米系のチュパカブラの正体は前述の通り「皮膚病に罹って毛が抜け落ちたイヌ科動物」である可能性が濃厚ですが中南米系のチュパカブラはどうでしょう?
まず注意しなければならないのは何千件と寄せられるチュパカブラの目撃情報ですが、そのほとんどは実際に目撃したというよりは家畜や野生動物の惨殺死体をすべて「チュパカブラの仕業」とみなし、目撃情報としてカウントしている可能性があることです。
実際にチュパカブラを目撃した、というのはおそらくそれほど多くなく、しかも体の一部しか目撃していない場合、それぞれの目撃者が異なる生物を見ていた可能性があります。
異なる生物の目撃情報を「チュパカブラ」というひとつの生物に集約してしまうと、UMAの定番のキメラ化 (もしくはハイブリッド化) された生物が誕生してしまいます。
家畜の惨殺死体を発見した際、その付近にいた生物 (惨殺死体の犯人かどうかは関係なくたまたま近辺で目撃されただけの生物も含む) は全てキメラ化の材料になったに違いありません。
キメラ化に一役買った野生動物の候補としてピューマ (Puma concolor)、ジャガー (Panthera onca)、ジャガランディ (Herpailurus yagouaroundi) といった中型・大型のネコ科動物、タテガミオオカミ (Chrysocyon brachyurus)、コミミイヌ (Atelocynus microtis)、カニクイイヌ (Cerdocyon thous)、ヤブイヌ (Speothos venaticus) といったイヌ科動物、それにレア (Rhea americana) なんかを挙げておきましょう。
特に怪しいのは巨鳥レアですかね。
「二足歩行し翼を持つチュパカブラという怪物が存在する」という先入観を持った状態で、シルエット程度しか判別できない夜間に遠目でレアを目撃しようものならチュパカブラと思い込む可能性は十分あります。
まあこれはあくまでも既知生物の誤認であれば、という一例であり、すべての目撃が既知動物の誤認とは決めつけられません。
チュパカブラの勢いは今でも落ちていないことから存在を証明する動かぬ証拠をカメラや動画に収めてくれることを期待しましょう。
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