■大津浜で捕獲された怪魚 ~ 龍魚
今回は龍魚 (りゅうぎょ / Ryu-gyo)。
龍魚と呼ばれる魚の目撃や捕獲はたびたび報告されており、その中で最も有名なのが1873年3月7日、茨城県多賀郡大津浜(現北茨城市) で大黒屋の勇八により捕獲されたものです。
体中に不思議な模様があったといい、頭部には五三桐 (ごさんのきり) と呼ばれる桐の葉と桐の花をそれぞれ3つ・5つ並べた模様が、背中には葵紋 (あおいもん)、体の側面には蝶 (アゲハチョウ) の模様の鱗が並んでいました。
体長は8寸 (約2.4メートル) と巨魚、その華やかな模様を体全体にあしらっていたことから縁起の良い吉祥魚 (きっしょうぎょ) とされていました。
現在から150年も前の話ですが運がいいことに詳細な図も残されており、その正体はほぼ確実にチョウザメと推測されます。
(実際に描かれた龍魚の詳細図)
(image credit: Wikicommons/Public Domain)
日本の沿岸部 (北海道・東北) や北海道の一部の河川で、昭和初期 (1926~1945年) ぐらいまではふつうにチョウザメは見られた、なんていいますが、上記の例でいうと1873年は明治6年であり、この時点で「吉祥魚」と呼ばれニュースになるぐらいなのでいうほど潤沢に棲息していたとは思えません。
まあこれは茨城県とチョウザメがよく見られた地域から少し外れているのも関係しているとは思いますが。
さて茨城県で捕らえられたこの龍魚、大型であったことからダウリアチョウザメ (Huso dauricus) やカラチョウザメ (Acipenser sinensis) を候補とし、特にカラチョウザメに似ているような気がします。
冒頭に書いた通り、龍魚の目撃・捕獲はこのただ一度ではありませんが、時代とともにその目撃数は先細りとなりその目撃は絶えて久しいものとなっています。
(カラチョウザメ)
(original image credit: Wikicommons)
日本近海のチョウザメはすでに絶滅したと考えられており、龍魚の正体がチョウザメであればこの点でもつじつまが合います。
但し気を付けたいのは「龍魚」と呼ばれ、報告されたものすべてチョウザメかどうかはまた別の話だということです。
各々の詳細な記録が残っているわけではないため、チョウザメとは異なるタイプのものも紛れているかもしれません。
2020年前後から「龍魚」ではなく「チョウザメ」の目撃がまた増えてきましたが、これはペットを放流したもの、養殖場から逃げ出したもの、と考えられており、これらは外来種にほかならず決して吉祥なことではありません。
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