■19世紀に宮城県で捕獲された謎のサメ ~ ミカドザメ
今回は宮城妖怪事典さんに掲載されていたUMAです。
1882年 (明治16年) 1月18日、宮城県石巻市金華山 (きんかさん) 沖で謎の魚が捕獲されました。
この謎の魚のニュースは捕獲から1年以上も経過した1883年4月4日の「奥羽日日新聞」、4月11日の「東京日日新聞」に掲載されたといいます。
この捕獲から新聞に掲載されるまでの大きなタイムラグはなんだったのでしょうね。
さて、謎の魚の話を見ていきましょう。
その姿はサメに似ているものの、頭部から背中にかけて「菊の模様」があったといいます。
あまりに不思議なことから帝 (みかど) の鮫、「ミカドザメ (Mikado-zame)」と命名されました。
英語だとエンペラーシャーク (Emperor shark) ですね。
ただの一度きりの捕獲で、その後似たようなサメの捕獲は聞きません。
さてこのサメの正体はなんでしょう?
真っ先に思いつくのはやはりチョウザメです。
(ダウリアチョウザメ)
(image credit: Wikicommons)
チョウザメはサメではありませんがシルエットはサメに似ており、なんといってもその特徴的な鱗の形状はミカドザメの「菊の文様」を幾ばくか想起させます。
今では絶滅してしまいましたがかつて北海道にチョウザメは棲息しており、それはミカドチョウザメ (サハリンチョウザメ, Acipenser mikadoi) とダウリアチョウザメ (Huso dauricus)。
当時ですらほぼ北海道限定のチョウザメですから宮城県沖で捕獲されようものなら魚種を特定できず「謎の鮫」として扱われたとしてもそこまで不思議なことではありません。
それこそ名前も「ミカドチョウザメ」ですし。
ちなみにミカドチョウザメは体長1.5メートルほどに対し、ダウリアチョウザメは5.6メートルの記録を持ちます。
(image credit by Wikicommons)
ということで、その正体はチョウザメで決まり、、、
といいたいところですが、チョウザメの鱗は確かに特異な形状ではあるものの「菊の文様」に見えるかというと「う~ん、、、」といった感じです。
ここは大胆に、ミカドザメの正体として「ダイオウイカと格闘歴のあるサメ」を候補に挙げておきましょう。
以前に「ダイオウイカが勝てるかもしれない新たなライバル現る ~ ヨゴレ」の記事で取り上げましたが、ダイオウイカの吸盤跡を残すヨゴレ (Carcharhinus longimanus) が発見されたことがあります。
一応念のために断っておきますがヨゴレとはメジロザメの仲間の鮫の一種で、体長は最大3.5メートルにも達します。
(マッコウクジラの皮膚に残されたダイオウイカの吸盤跡)
(image credit: Wikicommons)
このヨゴレに限らず、ダイオウイカの永遠のライバル、マッコウクジラ (Physeter macrocephalus) の体にダイオウイカの吸盤跡が残されていることが多々見られることから「ミカドザメ」も同様であった可能性が考えられます。
大型個体のダイオウイカの吸盤の直径は5センチメートルを超え、イカの吸盤の特徴である「爪」は天敵の体に食い込み、その傷は見ようによっては「花」のようにも見えます。
ということで当サイトではミカドザメの候補として「ダイオウイカと格闘歴のあるサメ」を推すことにします。(笑)
(ダイオウイカとの格闘で傷だらけで死んでいたマッコウクジラ)
(参照サイト)
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当時の新聞で出された図では、頭部の菊の模様とは別に腹や背中に菱形の構造が並んでいたので、私的にはチョウザメで確定かと思います。菊云々を考えると外傷を負ったチョウザメってところでしょうか
返信削除コメントありがとうございます。
削除へぇ~菱形の鱗が描かれているんですね、それだとチョウザメの可能性が格段に上がりますね~
クリプティッドWikiのmikadozameとかにあるのがその画像ですね。
削除鋭い歯が生えていること以外はチョウザメそのものっぽい印象を受けるので、「サメであるという偏見のもとで描かれたチョウザメ」ではないかと。海外だと鼻が長いのと歯からミツクリザメじゃないかという人もいましたが、そうだったら菱形は描かないと思うので違いそうです