■鳥肌が止まらない、人の皮膚の下を這いまわる ~ ヒトヒフバエ
さて今回は人体寄生、ヒトヒフバエ (Dermatobia hominis)。
いわゆるハエと聞いて頭に思い浮かぶのはイエバエ (Musca domestic) で家の中に入ると厄介ですが、まあそうはいっても衛生面で不快であるとか、近くを飛び回って鬱陶しい、と言った感じでいうほど害はありません。。
特に、眠り病 (アフリカ睡眠病) を引き起こすトリパノソーマ (Trypanosoma) を媒介するようなツェツェバエの仲間 (Glossina) なんかと比べたら可愛いものです。
ヒトヒフバエはイエバエとツェツェバエの中間的な人間にとってかなり不快な存在といえます。
それでは見ていきましょう。
ヒトヒフバエが棲息するのは中南米です。
まずヒトヒフバエの本体、というか親バエ (成虫) は普段見慣れているイエバエなんかより遥かに大きく2センチ近くにもなります。
もうこの時点で不快というか怖いぐらいですが、成虫は人間に直接的な害は一切与えませんし、それどころか森林に暮らし人間が目にすることすら稀だといいます。
そもそも成虫には口 (口器) もなければ針もないので人間に悪さのしようがありません。
ヒトヒフバエの寄生ライフサイクルはそれほど複雑ではありません。
「ヒトヒフバエ ⇒ 蚊・ハエ・ダニ等 ⇒ 人間を含む霊長類・大型哺乳類」
というとってもシンプルなもの。
どうせなら直接人間に寄生すればいいじゃん、と思うかもしれませんが、この中間媒介者の蚊・ハエ・ダニに卵を産み付けるだけで成虫は人間等の大型動物に近寄ることなくノーリスクで彼らに卵を運んでもらえます。
飛翔能力の高いハエの中でも最上級レベルの飛翔能力を持つといわれ、飛翔中の蚊を捕まえてそのまま卵を産み付けるという芸当もみせます。
口がないので成虫になってからのエネルギー補給はできないため寿命は1週間ほど、この短い生涯の間で最大400の卵を産み付けます。
蚊・ハエ・ダニに産み付けられた卵は人間を含む大型哺乳類に触れると孵化します。
つまり蚊を例にとると、蚊が人間の体に付着し血を吸っている僅かな時間で孵化するということです。
どうして感知できるのかというとそれは温度センサーによるもので、大型の哺乳類は昆虫と比べ体温が高いため、蚊が人間の皮膚に付着した時点でゴーサインが出るという仕組みのようです。
まんまと人間の体に滑り落ちることに成功すると、蚊が開けてくれた穴から人間の体内に侵入します。
(ヒトヒフバエの幼虫、これが皮膚の下にいるのに精神的に耐えられるかどうか)
(image credit by Wikicommons)
ここからが気持ち悪い。
皮下に潜り込んだヒトヒフバエの赤ちゃん (ウジ虫) は最大3ヶ月もの間、人間の組織を食べ続け成長します。
赤く腫れあがり、しかも皮下にいるため目視できてしまい、ウジ虫が皮膚の下でモゾモゾと動くのが分かるという想像するのも気持ち悪い状態となります。
衝動的に叩き殺したいところですがそれはNG、幼虫が体内で破裂することにより感染症にかかるリスクがありからです。
一番いいのはなんと「放置」。
体の部位によっては幼虫の動きにより激痛が走る場合もあるというものの、この幼虫が皮下にいる状態でも健康的に大ダメージを被ることはなく、十分成長すると蛹になる前に勝手に出て行ってくれます。
しかし体に害はなくても皮膚の下で幼虫を飼っているという現実は、おそらく多くの人にはメンタル的に大ダメージ。
病院行けば毒抜き用注射器で幼虫を傷つけないように簡単に抜いてもらえるそうなので病院に行きましょう。
ちなみにヒトヒフバエの幼虫は人間から脱出すると土中で蛹となり成虫となりますが、人間から抜け出て土のある場所に辿り着くのが今の時代ではえらく大変そうです。
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昔飛行機事故か何かでアマゾンをさ迷った女の子が寄生虫などに苦しみながらも必死に生き延びたみたいな番組を見た記憶があります
返信削除このハエだったのかな…想像するだけで発狂しそうです
幼虫が潰れないで皮下で死亡した場合ってどうなるんだろう…
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