■200年続いた謎の野獣の目撃 ~ ディーンの野獣
今回はビースト・オブ・ディーン (Beast of Dean) ことディーンの野獣です。
ディーンの野獣はイングランドのグロスタシャー (Gloucestershire)、ディーンの森 (フォレスト・オブ・ディーン) で18~19世紀にかけて目撃されたイノシシによく似たUMAです。
そしてその正体は実際にイノシシ (Sus scrofa) そのものだった可能性があると考えられています。
えっ?ただのイノシシ?と拍子抜けしてしまうかもしれません。
まず、ディーンの野獣は「ただのイノシシ」ではありません。
非常に大柄であり、突進して樹木や垣根をなぎ倒すとてつもなく凶暴なイノシシだったといいます。
そしてそもそもその正体が仮にただのイノシシだったとしても不思議な存在なのです。
頂点捕食者のニホンオオカミ (Canis lupus hodophilax) を失った日本ではイノシシは増加傾向にあり問題にもなっていますが、世界的に見るとそうではありません。
特にイングランドでは15~16世紀、遅くとも17世紀までには狩猟により絶滅しており、その後、数度の再導入を試みるも定着することはなく短期間で絶滅しているからです。
そう、現在の日本でニホンオオカミやニホンカワウソ (Lutra nippon) が目撃されるようなもので、ディーンの野獣の噂のあった18~19世紀、イングランドでイノシシが目撃されること自体が事件だったのです。
1805年にディーンの野獣を仕留めたという不確かな記録もありますが、それによればディーンの野獣はイノシシに似るものの、イノシシより巨大で別の生物であった、というようないかにもUMA的な逸話です。
その後もディーンの森で謎の咆哮が聞こえたといったものやイノシシの群れを見たといった噂は続くものの、それ以降捕獲した例は皆無であり、そもそも1805年の射殺されたというディーンの野獣も物的証拠は一切残っておらず、その存在は200年にもわたり都市伝説以上のものではありませんでした。
ディーンの野獣は絶滅したと思われていたイノシシの生き残りだったかもしれませんし、もしかすると短期間で絶滅したと思われた再導入後のイノシシだったかもしれません。
ま、日本のニホンオオカミやタスマニアのフクロオオカミ (タスマニアタイガー, Thylacinus cynocephalus) のように、絶滅直後は逆に注目が集まり不確かな目撃情報が増えるので、ディーンの野獣もそういった類のものに過ぎなかったのかもしれません。
無くなると欲しくなっちゃう人間の性 (さが) による創造物ですね。
いずれにせよ、20世紀にもなるとディーンの野獣は噂すらなくなってしまいました。
なお現在は何度目の再導入か分かりませんが20世紀末に導入したものが野生下で繁殖が成功、ディーンの森には確かに「野獣」が存在しているようです。
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