■イヌイットたちに伝わる謎の巨大哺乳類 ~ ティゼラク (チツェラク)
今回は、アメリカ、アラスカのイヌイットたちに伝わるUMAティゼラク (Tizheruk) です、パル・ライ・ユク (Pal Rai Yuk) とも呼ばれます。
この悩ましいスペルをどう発音するかで悩みますが、旧サイトでは「チツェラク」で紹介したものの、ティゼラクもしくはティゼルクが近いのではないかと再考し、ティゼラクと発音することにしました。
アラスカ本土から48キロ沖に浮かぶヌニバク島 (Nunivak Island) で目撃されるパル・ライ・ヤク (パル・ライ・ユク, Pal Rai Yuk) もおそらく同一の生物を指していると考えられています。(こちらも発音がよく分かりませんが)
ティゼラクの存在が初めて西洋知られるようになったのはアラスカから64キロ沖に浮かぶキング島 (King Island) で民俗学者ジョン・ホワイト (John White) 氏が島民から情報収集している際に偶然に得たものです。
イヌイットたちはティゼラクを神聖視し殺すことは許されない存在であるためかハンターを含める何人かの住人たちがこの生物の犠牲になっていると主張しています。
ティゼラクは海棲生物であることからも部分的な目撃しかないためその全容ははっきりとはわかっておらず、取り敢えずはシーサーペント (巨大海蛇) に分類されています。
はっきりしていないものの、複数の部分的な目撃からティゼラクはヘビに似た巨大な頭部を持つこと、体が細長いこと、水面に対し平行な尾鰭を持っていると考えられています。
但し、これもUMAの目撃情報で多いことですが、異なる人々の目撃情報は実はそれぞれ異なる生物を目撃した可能性があるため、その複数の生物の特徴を一つの生物に集約したことにより実際の生物とは全く異なるハイブリッド生物が出来上がってしまうことがあります。
そのため、必ずしも目撃情報のすべての特徴をもたなくても、そのUMAの候補とはなりえます。
話はちょっと逸れますが、あくまで個人的な意見ですが著名な未確認動物学者について少し話しましょう。
ベルナール・ユーヴェルマンス (Bernard Heuvelmans) 氏やアイヴァン・T・サンダーソン (Ivan T. Sanderson) 氏は未確認動物学というジャンルを体系化したUMAファンは足を向けて寝られない偉大な人物ですが、そのUMAの正体に対する考察はややオカルト色が高めです。
具体的には恐竜や同時代の海生爬虫類、翼竜、またはその後に現れた巨大哺乳類を提案することが多いです。
対極をなす未確認動物学者はカール・シューカー (Karl Shuker) 氏やローレン・コールマン (Loren Coleman) 氏で、絶滅巨大生物を正体とするのを好みません。
個人的にその中間と考えているのがロイ・マッカル (Roy Mackal) 氏です。
今回のティゼラクの正体についてもそれが顕著に表れています。
マッカル博士はその正体としてはヒョウアザラシ (Hydrurga leptonyx) を挙げています。
ヒョウアザラシはメスがオスよりやや大きく最大3.5メートル、500キロに達し、人間に対する幾度かの襲撃記録が報告されており、2003年には死亡事故も起きています。
ヒョウアザラシの生息域はアラスカの真逆、南極大陸周辺で当然アラスカには生息していません。
そこでマッカル博士は北半球に生息する未発見のヒョウアザラシの亜種を提案しています。
ちなみにユーヴェルマンス博士は当然のように (?) 絶滅種、クジラの祖先バシロサウルス (Basilosaurus) を挙げています。
で、全体像がつかめてない以上、正体はもちろん不明なのですが、ヘビに似た頭部、水面と平行は尾ビレ、ということからアザラシ等の鰭脚類 (ききゃくるい) である可能性が高そうに感じます。
(キタゾウアザラシ)
(image credit by Wikicommons)
かなり大きいことが予想されるため、それが既知種の誤認だとすれば現実的なところではキタゾウアザラシ (Mirounga angustirostris) が有力と考えます。
オスであれば最大5メートルに達し、一時期絶滅の危機に瀕していたこともあり、過去にUMA的に扱われていたとしても不思議ではありません。
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