2022年9月11日日曜日

グリフォンは「実在した」動物を誤認したものである

(image credit by Wikicommons)

■グリフォンは実在した動物を誤認したものである

猛禽類の上半身にライオンの下半身をもつ幻獣といえば?

言わずと知れたグリフォン (Griffon) (もしくはグリフィン (Griffin)) です。

キマイラ (キメラ) の例を出すまでもなく、神話に出てくる生物としては別段珍しくもない、いわゆる複数動物をかけ合わせたハイブリッド生物です。

見ての通り、猛禽であるワシ (もしくはタカ) と猛獣であるライオンをかけ合わせて「創造」されたものに違いありません。

とふつうの感性だとそう思ってしまいます。

いやいやそうではない、と面白い仮説を立てた人物がいます、スタンフォード大学の古代科学の歴史研究家、エイドリアン・メイヤー (Adrienne Mayor) 氏です。

メイヤー氏は、実在した生物を誤認したことによりグリフォンが創造されたのではないかという仮説を提唱し、それなりの支持を得ています。

実在した生物の誤認?

実在「した」と過去形ということは今は滅んでしまっているということ?

ギリシア神話が誕生したころというと紀元前15世紀ごろといわれていますから、今から3500年ぐらい前には実在した生物を指しているのでしょうか?

その生物とは?

(プロトケラトプス アンドレウシ Protoceratops andrewsi)
(image credit by Wikicommons)

なんとそれは恐竜で、人類が現れるはるか前の6500万年前に絶滅した角竜、プロトケラトプス (Protoceratops) だというのです。

現在絶滅している生物どころか、ギリシア神話が作られた当時でもすでに絶滅し長い年月が経っています。

そもそもプロトケラトプスとは?と思う人もいるかもしれません。

肉食系恐竜の代表をティラノサウルス (Tyrannosaurus) とすれば、草食系恐竜の代表としてステゴサウルス (Stegosaurus) と双璧をなすトリケラトプス (Triceratops) なら恐竜にあまり興味のない人でもご存じの方も多いでしょう。

プロトケラトプスはそのトリケラトプスと同じ角竜に属し、乱暴な言い方をすればトリケラトプスのちっちゃい版という感じ、体もフリルも小さくかなり地味目な存在です。

メイヤー氏はあの名門スタンフォード大学の先生ですよね?オカルト信者じゃありませんよね?

心配になる人もいるかもしれませんし、逆に喜ぶ人もいるかもしれませんが。

メイヤー氏は、なにもプロトケラトプスが人類と共存したと主張しているわけではありません。

というか、仮に共存していたとしてもプロトケラトプスの姿からグリフォンを「創造」できるとはとても思えません。

メイヤー氏は、古代の人々がプロトケラトプスの化石を目にし、グリフォンを思いついたのではないか、と仮説を立てたのです。

(成体の化石と、二足立ちもできたといわれる幼体の化石)
(image credit by Wikicommons)

プロトケラトプスの頭骨は、角竜ならではの鳥類を彷彿とさせる「クチバシ状」です。

そのことから、猛禽類を彷彿とさせますが、頭骨以外の骨格を見てみると見慣れた四肢動物のそれと大差ありません。

体長は6.6 からせいぜい8.2 フィート (約2メートルからせいぜい2.5メートル) ほど、恐竜としては決して大きくなく、体高も人間よりもかなり低く1メートルにも満たないものの、その頭骨を鳥類のものと考えたらバカでかいです。

そこで、古代の人々は閃いたのです、この生物はきっと生前は上半身がタカやワシのような猛禽に似た奇妙な四肢動物に違いないと。

グリフォンの誕生です。

(プロトケラトプスの化石を横から見るとグリフォンを彷彿とさせます)
(image credit by Wikicommons)

この説に賛同するのであれば、角竜としては小さめのフリルはむしろ好都合で、グリフォンの耳であったり翼の一部であったり、そういったものに解釈された可能性も否定できません。

とても興味深く独創的な発想ですよね。

確かにグリフォンを見ているとプロトケラトプスのような雰囲気があります。

気になる点といえば、グリフォンは中東のイラクやヨーロッパ南東部のギリシア方面の幻獣であるのに対し、プロトケラトプスは現在の中国やモンゴルのあたりに生息していた恐竜であることです。

生息地と伝説の誕生の地では地理的にあまりに離れすぎているような気がします。

しかしこれについてはイラン系の遊牧民、スキタイの人々により、伝わったものと解釈されています。

皆さんはこの説をいかが思いますか?

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