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2024年5月17日金曜日

カバ?オオトカゲ?ワニ?クジラ?目撃証言がバラバラ ~ ニャーマ


■カバ?オオトカゲ?ワニ?クジラ?目撃証言がバラバラ ~ ニャーマ

今回はニャーマ (ニャマ, Nyama)。

ニャーマはコンゴ民主共和国のアルウィミ川 (Aruwimi River) に生息するといわれているUMAです。

国境北東部で接する南スーダン共和国にはニャール (ラウの別名)、西アフリカにはニャマラとそっくりの名前のUMAがいてややこしいですが、一応別のUMA (のはず) です。

一般的にニャーマは既知動物で例えるとカバに似ているといいますが、たぶんそれは大きさ家の話でしょう。

というのもニャーマの頭部は小さいといわれており、デカい頭の代表格であるカバと似ているとは到底思えないからです。

しかしそれは非常に形容詞がいた姿をしているのは確かです。

19世紀末、アルウィミ川沿いのコミュニティ、ヤンビュヤ (Yambuya) に駐留していたジェームズ・スリゴ・ジェームソン (James Sligo Jameson) 士官の日記にニャマとの遭遇体験が書かれていました。

そしてその姿は非常に捉え難いものでした。

「今朝、シリア人通訳であるアサド・ファラン (Assad Farran) がわたしの元へ来ると、とても興味深い野獣について話し始めたのです。

彼はその生物をクジラと確信しているといい、自分たちが乗っている2隻のカヌー近くに一定の間隔で浮上しては岸辺の草を食 (は) み、近づくと潜ってしまうというのです。

ファラン氏がいうにはカヌーに同乗していた監視役は常にその生物を目撃していたというので、わたしは彼にそれは本当にクジラだと思っているのか質問をぶつけてみました。

『もちろんですとも!どことなくその姿はクロコダイルに似ていますが、わたしはそれがクジラであると確信しています』

わたしは個人的にはイグアナやオオトカゲを想像してしまいましたが、ファランは今度見つけたら私にすぐに教えてくれると約束しました」

推測を交えたこの日記だけでもクジラとワニ (クロコダイル)、そしてオオトカゲ (イグアナ) の3種類の動物が出てきます。

ワニとオオトカゲならまだしも、この2種とクジラは相容れません。

さてこの生物は一体何なのか?

頭部が小さい、というのを無視し、ファラン氏とその護衛の目撃情報だけであればカバの可能性もワニの可能性もいずれもあり得そうです。

ただクジラと確信している、という言葉から、爬虫類である可能性は低いかもしれません。

一番いいのは証言通り未知のクジラは生息していることですが、淡水域に生息するクジラといえばカワイルカ、この可能性はどうでしょう?

残念ながらアフリカ大陸にはなぜかカワイルカ類が生息していません、その代わりといってはなんですがアフリカウスイロイルカ (Sousa teuszii) は西アフリカの海岸沿いに生息するイルカですが、ニジェール川等、一部西アフリカの河川にも棲息することが分かっています。

体長は2~2.5メートルほどとさほど大きくはありませんが、河川で目撃すればそれなりに大きく見えるに違いありません。

但しコンゴ民主共和国はかなり内陸の国であり、誤ってそこまで遡上する可能性はあり得なくはないもののかなり厳しそうです。

(アフリカマナティ―)
(image credit by Wikicommons / Public Domain)

それよりも大きさ的にも候補としてうってつけなのははアフリカマナティ (Trichechus senegalensis) でしょう。

最大個体の記録は4.5メートルというモンスター級のものが知られており、1トン近くあったかもしれません。

こちらも西アフリカ沿岸から西アフリカの河川に生息していますが、上記のアフリカウスイロイルカと比較すればかなり内陸まで入り込み、一般的な生息域ではありませんがコンゴのアルウィミ川まで到達する可能性はイルカよりもはるかに高いでしょう。

ハクジラ類 (イルカ含む) と違い草食性であるのも目撃情報から有利な点です。

というわけでニャーマの候補として既知生物であればこの2種を挙げておきます。

但し、ニャーマのもうひとつの伝説は人間を捕らえ頭をかち割って脳を貪るという凄惨なもの、そちらの伝説が正しければカバやワニ等、もう少し獰猛な生物が候補になるでしょう。

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2024年5月16日木曜日

弾丸すら弾いた伝説の巨大なヘラジカ ~ スペクター・ムース


■真っ白の神々しい巨大なヘラジカ ~ スペクター・ムース

北米のUMA、スペクター・ムース (Specter Moose)。

ムースとはヘラジカ (Alces alces) の英名で「亡霊ヘラジカ」といった意味ですね。

UMAですから目撃情報にはそれなりのスーパーナチュラルな能力はないわけではないですが、少なくともその姿は巨大なヘラジカです。

雄大な角を持ち、何と言ってもその特徴は体が真っ白なこと、おそらくはアルビノによるものと考えられています。

1890年代に集中して目撃されており、初めて目撃されたのはメイン州北メインウッズのロブスター湖 (Lobster Lake) 近くです。

ちなみにこの湖、淡水なのでロブスターは棲息できませんが、それでは代わりに大型種のザリガニでも棲んでいるのかというと、そうでもなく、この湖の形状が上下逆さまにしたロブスターのハサミのような形状をしていることに湖の名前は由来します。

さてスペクター・ムースですがこの時目撃したのは狩猟案内人であり、おそらく見間違いではないでしょう。

同じ年に再度目撃があり、このときはハンターによって強力なスラッグ弾を撃ち込まれていますが、効き目はなく (跳ね返されたとも) それどころか怒ったムースはハンターに向かって突進してきたといいます。

ここら辺のスラッグ弾が跳ね返されたというのはちょっと信じ難く、そもそも当たっていないか、当たりどころが良かったか、当たったのは角だった、とにかく致命的ではなかったのでしょう。

翌年の1892年、再度スペクター・ムースは人の前に現れました。

目撃したのはニューヨークから狩猟に来ていたハワード・ヴァン・ネス (Howard Van Ness) 氏。

彼もまたこのムースにライフルを向けましたが仕留めることはできませんでした。

そして2度目の目撃の時と同様、ハンターに向かって突進してきました。

ハワード・ヴァン・ネス氏はこの時見たスペクター・ムースはラクダほどもあり、巨大な角の枝角は20以上に分岐し、体重は1トンと推定しました。

実際のところヘラジカはもともと非常に大きな生物で、大型個体ともなると肩高で7フィート超え (約2メートル)、公式記録の最大は7フィート8インチ (約2.33メートル)、体重は2,601ポンド (1180キロ) という記録があることから、スペクター・ムース級のヘラジカが実在していたとしても全く不思議ではありません。

この後、少しの間目撃は止みますが1899年に目撃情報があります。

1891~1899年に目撃が集中していることからこれらの目撃された固体は同一個体であった可能性が十分考えられます。

ライフルで撃つと逃げるのではなく反撃してくるという闘争心も似ています。

アルビノでもそうじゃなくても別にヘラジカはヘラジカですが、日本あたりだとアルビノの珍しい個体を見ると神々しく扱われ、それこそ「撃ったら罰が当たる」ぐらいの感覚となりますが、アメリカのビッグトロフィーハンターは白かろうが珍しかろうが容赦ないようです。

というか「アルビノ (白) = スペクター (亡霊)」と日本人とは全く逆の捉え方をしている文化の違いが大きいのでしょうか。

いずれにしてもスペクター・ムースの正体はやはりアルビノのヘラジカの飛び抜けて大きく成長した巨大個体だったに違いありません。

ちなみに1899年の目撃を最後に1985年までスペクター・ムースは人々の前に現れることはなかったことから、ヘラジカの寿命を考えれば1985年に目撃された個体は別個体だったでしょう。

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2024年5月15日水曜日

ウソから誕生したUMA ~ スクヴェイダー (スクベイダー)


■ウソから誕生したUMA ~ スクヴェイダー (スクベイダー)

北欧スウェーデンのUMA、スクヴェイダー (Skvader)、剥製も存在します。

お伽話に出てきそうないかにもヨーロッパ的なウサギ系のUMAで、ドイツのヴォルパーティンガー (Wolpertinger) とかなり似ています。

1874年、ホーカン・ダールマルク (Håkan Dahlmark) なる男性が、スンツヴァル (Sundsvall) にあるレストランでスクヴェイダーを狩猟中に撃ったと主張したことからこのUMAの伝説は始まります。

ダールマルク氏が撃った生物は野ウサギに似ているものの体はライチョウのような羽毛に覆われているという奇妙な生物でした。

実際、地元の博物館に展示されているスクヴェイダーの剥製はこのダールマルク氏によって射殺されたものといわれており、その存在は確実のようにも思えます。

しかしこの時系列は実際は逆で、展示されている剥製はダールマルク氏の死後「作成」されたものです。

スクヴェイダーはダールマルク氏がレストラン客を楽しませるため、何度も話したことで有名となりましたがこれは全くのジョークでした。

1907年の彼の誕生日にはサプライズで家政婦の甥が描いたスクヴェイダーの絵がプレゼントされました。

それから5年後、ダールマルク氏は地元の博物館にこのスクヴェイダーの絵を寄贈します。

(博物館に展示されているスクヴェイダーの剥製)
(image credit by Wikicommons)

すっかり有名な存在となっていたスクヴェイダー、その絵を寄贈された博物館のオーナーはどうにかこれを「実在化」したいと思い、剥製師のルドルフ・グランベルグ (Rudolf Granberg) に依頼し完成されたものです。

この剥製はヨーロッパノウサギことヤブノウサギ (Lepus europaeus) とヨーロッパオオライチョウ (Tetrao urogallus) のメスを掛け合わせて作ったものです。

そして実在する動物のようにラテン語による学名、Tetrao lepus pseudo-hybridus rarissimus L も与えられました。

とんでもなく長い学名ですが、これは「非常に珍しいライチョウとウサギの疑似ハイブリッド」といった意味で、無理やり和名にすれば「キチョウニセウサギライチョウ」みたいになるでしょうか。

完成したのは1918年、ダールマルク氏が亡くなって6年後のことでした。

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2024年5月14日火曜日

クモの巣の作り方すらマインドコントロールする ~ クモヒメバチ


■クモの巣の作り方すらマインドコントロールする ~ クモヒメバチ

今回は寄生虫のお話。

コスタリカにのみ棲息するクモヒメバチ (Hymenoepimecis argyraphaga) は寄生バチの中でもかなり特殊で手の込んだマインドコントローラーです。

寄生虫が宿主をマインドコントロールすることはそれほど珍しいことではありませんが、このクモヒメバチの英名はそのまま「マインドコントロールバチ (Mind control wasp)」です。

ターゲットはシロガネグモの一種、プロシオメタ・アルギラ (Plesiometa argyra / Leucauge argyra) という腹部がやや細長い楕円形をした小さなクモです。

クモヒメバチはプロシオメタ・アルギラの体内に卵を産み付けることで孵化した子供が寄生生活を送りますが、この卵を産み付ける時点で既に狡猾です。

クモの周りを飛び続け疲弊させ、隙を狙って襲い掛かるという一般的な方法がまずひとつ。

そして、もうひとつの狡猾な方法はプロシオメタ・アルギラのクモの巣に引っかかった振りをしてクモ自らをおびき寄せるという体を張った方法です。

いずれの方法でもクモをしっかりと押さえつけると麻酔を打ち込み完全に動かなくなるまでめった刺しにします。

といってももちろんこれ以降、子供たちのエサになってもらう大事なクモですから致死量の毒を打ち込むことはありません。

麻酔の効果時間は5~10分、卵をさっさと打ち込んでおさらば、、、はしません。

このクモの体が痺れている時間を有効活用し、まずはこのクモに既に他のクモヒメバチ (つまり自分たちの仲間) に寄生されていないかのチェックをします。

卵はクモの腹部に産み付けられているので、見つけたら引き剥がします。

幼虫になると体内に移動するので、産卵管を使ってクモの体内に幼虫がいないかチェック、見つけたら幼虫を引きずり出して捨ててしまいます。

擬人化したら本当に恐ろしいのなんの。

この作業を麻酔の効いている時間にササっと済ませ、自分の卵をクモのおなかにぺたりと貼り付けるとその場を去ります。

卵は孵化するとクモの腹部を食い破って中に侵入、内部からクモの新鮮な体液を摂取し成長します。

蛹になるまで2~3週間かかりますから、それまでは元気でいてもらわないといけません。

致命的にならない程度に体液を吸い取り、まったくクモも健康そうです。

しかしそれは体液を吸ってクモヒメバチの幼虫がすくすくと育つためで蛹になるときはもう食事を摂る必要もなく、一見するとクモは用済みに感じます。

しかしまだまだやってもらうことがあります。

幼虫は蛹化前にクモに特殊な化学物質を注入することで、今まで全くふつうの行動をしていたクモの挙動が突如としておかしくなります。

獲物をつかまえるために放射状のクモの巣を張っていたプロシオメタ・アルギラは突如その作業をやめてしまいます。

クモの巣を張るのをやめると、なんとクモヒメバチの蛹を守るための揺りかご (繭) を作り始めるのです。

繭を作り終えてもいつもの獲物をつかまえるための巣を張ることはありません、クモはじっと繭の中に入り動かないのです。

クモヒメバチにとってクモができることはすべてしてもらい、この時点で完全にクモは用済みとなります。

クモヒメバチの幼虫は今では微動だにせず繭の中で佇むクモを容赦なく殺すと体液を全て吸い上げ繭から放り出します。

クモヒメバチは揺りかごの中で蛹化し1週間ほどで成虫となると繭を破って飛び立ちます。

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2024年5月13日月曜日

魔獣『長い耳を持つもの』 ~ フッチコ・チョプコ (フヴッコ・カプコ)


■魔獣『長い耳を持つもの』 ~ フッチコ・チョプコ (フヴッコ・カプコ)

今回は日本ではたぶんフヴッコ・カプコで知られるフッチコ・チョプコー (Hvcko Capko)。

フッチコ・チョプコーは、アメリカ、フロリダ州とオクラホマ州地域に住む先住民族セミノール族 (Seminole) に伝わる伝説の野獣です。

伝説、いわゆる民間伝承上の生物といっても突飛な生物ではありません。

フッチコ・チョプコーはハイイロオオカミ (Canis lupus) に似ており、「フッチコ・チョプコー」とはセミノール族の言葉で「長い耳 (をもつもの)」を意味するといいます。

但しオオカミよりも大きく、その大きさはロバ程もあり、非常に毛深く尾は馬に似ているといいます。

また耐えがたい悪臭を放ちその存在は伝説上、疫病の源とみなされ、出遭ったものは病気になるといいます。

それではこの魔獣がなんなのか考えてみましょう。

さて、その正体としてはもちろん大きな個体のオオカミとなるでしょうが、オオカミを見て一度たりとも「長い耳」を持つ生き物だなぁ、なんて思ったことはなく、名前の由来だけ聞くと少し疑問ではあります。

「耳が長い」と認識できるのはウサギのように長い耳を立てているか、例えばバセットハウンドのように長い耳を垂らしているかのいずれかです。

オオカミはどちらでもありません。

オオカミに似ているということから、やはり大型犬で耳が垂れたタイプ、身近なところではレトリバーのような大型犬のもっと耳が大きい犬種を想像してしまいます。

このタイプの可能性が高そうですが、個人的にはロバそのものを誤認したのではないかと推測します。

ロバは15世紀末には植民地支配を狙ったヨーロッパ人によって北米に持ち込まれておりその歴史は長く、多くの部族にとってもそこまで見慣れない生物ではなかったと推測できます。

とはいえ、繁殖し北米中に増えていくにはそれなりに時間がかかったと思われ、まだ見慣れない期間、かつ野生化したロバが皮膚病等、実際に病気に罹った状態を見れば魔獣とみなされても不思議ではありません。

病気に罹ったロバ見すぼらしく不衛生であり、興味本位で触れたものは実際に病気を移される可能性もあります。

またなんといってもこのUMAの名前の由来となったフッチコ・チョプコーの「長い耳」はロバのトレードマークです。

馬は耳が長いですが、ロバは小柄なうえに耳は大型のウマほどもあり相対的に非常に耳が大きく (長く) 見えます。

日本だけの独自な呼び方ではありますが、ロバのことを「ウサギウマ」と呼ぶこともあります。

こういったことからオオカミ説に加え、ロバ説も推していきたいと思います。

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