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2030年12月31日火曜日
2025年7月4日金曜日
恐竜の名にも冠されたキメラ系の幻獣 ~ タラスク
■恐竜の名にも冠された幻獣 ~ タラスク
ティラノサウルス (Tyrannosaurus) 等、大型獣脚類は前肢が相対的に短いものが多いですが、その中でも前肢はほぼ痕跡しか残っていないカルノタウルス (Carnotaurus)。
さてこのカルノタウルスに比較的近縁でフランスで化石が発見されているアベリサウルス科の獣脚類にタラスコサウルス (Tarascosaurus) がいます。
タラスコサウルスは3メートル程度の比較的小柄な獣脚類で、恐竜に詳しくない人でしたら小さなティラノサウルスを思い浮かべれば遠からずです。
タラスコサウルスは「タラスクのトカゲ」を意味しますが、この「タラスク」とはフランス南部のタラスコン市に伝わる幻獣の名前で、今回はこのタラスク (Tarasque) を紹介します。
タラスクはフランスのプロヴァンス地方を流れるローヌ川の岸辺に住んでいる (いた) といわれています。
恐竜の名に冠されているものの両者は全く似ていません。
タラスクの姿はいくつかタイプがありますが、一般的に、ライオンの頭部、ヘビの尾、6本のクマの脚、ウシの体、そしてカメの甲羅を持つ巨獣として描かれます。
複数の既知動物が融合した典型的なハイブリッド (キメラ) 系のUMA (?) ですね。
ただ、幻獣としては一応「ドラゴン」にカテゴライズされており、現代のイメージだとドラゴンと呼ばれるものは多かれ少なかれ爬虫類的な要素を持ち合わせているため、現代基準のドラゴンで比較すると若干の感覚的なズレを感じますね。
タラスクは13世紀に著された聖人伝の黄金伝説 (Legenda aurea) により広まったといわれていますが、タラスク自体は12世紀には既に知られていたといわれています。
非常に恐ろしい存在であり、基本的には半水棲の幻獣として描かれており、ローヌ川に潜み、目から硫黄の炎を放ち、口からは毒の息を吐き近寄るものすべてを引き裂き殺す、と描写されています。
タラスクに困った村人たちは聖女マルタに助けを求めました。
マルタは人々を襲うタラスクを発見すると聖水をかけ十字架をかざすだけでタラスクは従順になったといいます。
彼女はタラスクを紐で結わえ、村に連れて帰ると村人たちによって殺されたといいます。
(20世紀初頭に造られたタラスク像)
(image credit: Wikicommons)
と、こんなストーリーであり、その姿も性質もとても実在するような要素はなく、また、キメラ化したその姿からも元になった生物は特にひとつに絞ることは難しそうです。
幻獣以上のものではないでしょう。
とはいえ、700年以上の歴史を持つこの幻獣の存在は非常に文化的価値が高いと考えられ、2005年11月、ユネスコの「人類の口承及び無形遺産に関する傑作の宣言」に登録されました。
ちなみに日本でも「歌舞伎」「雅楽 (ががく)」「能楽 (のうがく)」をはじめ多くのものが無形文化遺産に登録されています。
現在、フランスのタラスコンでは毎年6月の最終週にタラスク祭りがおこなわれており、かつて伝説上では恐れ憎まれ、そして殺された怪物ですが、現在では愛される存在になっているようです。
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2025年7月3日木曜日
絶滅寸前!残り僅か50頭 ~ 心優しきマルシカヒグマ
■絶滅寸前!残り僅か50頭 ~ マルシカヒグマ
イエティ (ヒマラヤの雪男, Yeti) はクマの誤認だとする説があります。
そのクマにもいくつか候補がありますが、チベットの山岳地帯に棲息するウマグマ (Ursus arctos pruinosus) ことチベットヒグマはその中でも有力視されているもののひとつです。
(イエティ)
全然話は逸れますが、ヒグマって姿かたちはどれもよく似ていますが、その毛色で呼び分けが多いですよね。
「白」はホッキョクグマ (Ursus maritimus) やシロアメリカグマ (Ursus americanus kermodei)、「黒」はアメリカグマ (Ursus americanus) やツキノワグマ (Ursus thibetanus)、「灰色」はハイイログマ (Ursus arctos horribilis)、「栗色 (もしくはシナモン色)」はクリイロアメリカグマ (Ursus americanus cinnamomum)、「赤」はヒマラヤグマ (Himalayan red bear / Ursus arctos isabellinus)、その他のヒグマは「茶色」ですかね。
(シロアメリカグマの親子)
(image credit by Wikicommons)
チベットヒグマは英名が "Tibetan brown bear" なんでまあ「茶色」なんですが、実は "Tibetan blue bear"、つまりチベットアオグマとも呼ばれ、「青色」なんですね。
ちなみにシロアメリカグマとクリイロアメリカグマは学名を見ればわかる通りアメリカグマの亜種です。
ま、シロクマ・シロアメリカグマは別として、他のクマたちはいわれるほど毛色に差はありませんけどね。
イエティの有力候補、このチベットヒグマは動物園等で見ることはできるものの、野生下では滅多に目撃されることがないといわれており、それ故その希少性からUMA (イエティ) として誤認されていたとしても不思議ではありません。
(ユーラシアヒグマ)
(image credit by Wikicommons)
さて今回はそのチベットヒグマよりも激烈に希少なヒグマ、イタリアに生息するマルシカヒグマ (Marsican brown bear / Ursus arctos arctos) です。
ヨーロッパはあまりクマのイメージがありませんが、そんなことはなくふつうにヒグマが棲息しています。
但し、ヨーロッパ全体の60%がルーマニアに集中して棲息しており、他の国の生息数はそれほどで多くはありません。
マルシカヒグマはヒグマ (ユーラシアヒグマ) の亜種 (亜種ではなく単に隔離された個体群との見方もあります) で、マルシカヒグマという名はイタリアの都市、ラクイラのマルシカ地域に由来します。
このマルシカヒグマはオスの平均体重が220キロ、メスで140キロ、気性が穏和で知られ人間を見ても襲わないといいます。
そういわれても生身では怖くて近づけませんけどね。
このマルシカヒグマの生息数は現在かなりクリティカルな状況で、アブルッツォ・ラーツィオ・エ・モリーゼ国立公園 (Abruzzo, Lazio and Molise National Park) に僅か40~60頭を残すのみとなっています。
しかもそのうち繁殖可能なメスは10数頭と推測されており相当厳しい状況におかれています。
イタリアは最近になってマルシカヒグマの保護を本気ですると宣言したようですがここまで数を減らしてしまうと近親交配等で多様性が失われる恐れがあり、環境の変化にも対応できなくなってしまうかもしれません。
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2025年7月2日水曜日
二人の警官も目撃した謎の生物 ~ キャットガルーキー
■二人の警官も目撃した謎の生物 ~ キャットガルーキー
今回はキャットガルーキー (Catgarookey)、イングランドのソールズベリー北東部、ラヴァーストックで目撃されたUMAです。
イギリスのタブロイド紙、ザ・サンで紹介され、少なくとも関係性のない4人の人物により、異なる時間・場所で3度目撃されており、それがUMA (未確認動物) か既知生物の誤認かは別として、なにかしら馴染みのない生物が存在していたのは確かなようです。
2005年5月5日、初めに目撃したのはなんとパトカーでパトロール中の警官、しかも二人同時に目撃しており、彼らの車の前を通り過ぎました。
パラノーマル感はないものの、見たことのない生物だったといい、体高は2フィート (約60センチ)、長いリング状の尾を持ち、「サル」に似た動きで移動していたといいます。
その翌日の5月6日、ニッキ・ロマス (Nicki Lomas) という名の23歳の女性によりまたもキャットガルーキーが目撃されます。
彼女によればその生物は先端が白く、黄色と黒の縞模様の尾を持つ「ネコ」に似た生物だったと証言しています。(正確には「ヒョウ」に似た大型ネコ科動物と表現しています)
最後に目撃したのはレイモンド・クラーク (Raymond Clark) という79歳の男性です。
同年6月1日、謎の生物が茂みに向かって逃げていくのを目撃しましたが、長いリング状の尾を持つその生物は小柄な「カンガルー」に似たシルエットをしていたと証言しています。
目撃されたのはこの僅か1ヶ月弱の間。
彼らの見たものが本当に同一の生物なのか確実ではありませんが、長い尾を持つのは確実なようで、みな一様に頭部の特徴よりも尾の特徴を挙げています。
さてこのキャットガルーキー、奇妙名前ですが、これはそれぞれの「サル」「ネコ」「カンガルー」に似ていたという証言から、ネコ (Cat)、カンガルー (kangaroo)、サル (monkey) の名前を一部分ずつ拝借 (Cat-garoo-key) してザ・サンが命名したものです。
この不思議な生物の正体は何か?
2種の生物が有力視されています。
(アカハナグマ)
(original image credit: Wikicommons)
ひとつは最後に目撃したレイモンド・クラーク氏が提案しているアカハナグマ (Nasua nasua) です。
アカハナグマは南米に棲息するアライグマの仲間で、目撃証言の「長い縞模様の尾」や体長、シルエットすべてをほぼ満たしています。
シロバナハナグマ (Nasua narica) の可能性ももちろんありますが、いずれにしてもハナグマはかなり有力です。
そしてももうひとつがマダガスカルに棲息するワオキツネザル (Lemur catta) です。
「リング状の尾」や「サル」に似た、という点ではむしろこちらの方が有力な感じがします。
但し、ワオキツネザルはハナグマよりもひとまわり小柄であり、そこら辺がウィークポイントといえるかもしれません。
イギリスにはワオキツネザルはもちろん、ハナグマの仲間はおろかアライグマすら棲息しておらず、正体がワオキツネザルであってもハナグマであってもテレポート・アニマル (その地域に本来生息していない生物のUMA用語) であり、おそらくはペットが逃げ出したものではないかと推測されています。
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2025年7月1日火曜日
5回その名を唱えると現れる都市伝説の殺人鬼、キャンディマンは実在した!?
■5回その名を唱えると現れる都市伝説の殺人鬼、キャンディマンは実在した!?
アメリカのホラー映画では浴室の薬棚 (キャビネット) や鏡をぶち破って殺人鬼が登場することがあります。
1992年に公開されたキャンディマン (Candyman) が特に有名です。
キャンディマンは鏡に向かってその名を5回唱えると召喚され、その呼んだ人物を殺すという (映画の中の) 都市伝説上のキャラクターです。
ホラー映画の殺人鬼はどうやってそこに潜んでたんだよ、家の構造どうなってんだよ、的なツッコミたくなる演出が多いですが、キャンディマンは1890年代、この世に恨みを持って死んだ人物のスーパーナチュラルな存在、という設定なのでそこら辺は許容されます。
ところがこのキャンディマン、映画の中の都市伝説どころか実在した、なんて話があります。
到底あり得そうにもありません。
薬を入れるキャビネットはそんなに大きいものではありませんし、そもそも厚みがありません。
生身の人間がどうしてもキャビネットから登場したい!という願望を叶えるのであれば、壁の間に潜り込む以外にありません。
しかしそれはキャンディマン事件は事実でした。
映画キャンディマン公開される僅か5年前の1987年4月、ルーシー・メイ・マッコイ (Ruthie May McCoy) という名のアフリカ系アメリカ人の女性が強盗集団によって殺害された事件があります。
ルーシーさんは誰かが壁の中におり、部屋に侵入しようとしている、と911に助けを求めましたが、警察はルーシーさん宅 (集合住宅の一室) に来たものの玄関が閉まっており、応答もないためよく調べもせずに引き返してしまいました。
彼女が住んでいたのは、当時、シカゴでも最も危険な地域のひとつサウス・サイドであり、警察の取った行動はなんて杜撰な!と感じますが、実はこれには理由があります。
彼女が統合失調症の後遺症により日ごろから「誰かが家に押し入ってくる」という極度の強迫観念に悩まされおり、これがはじめての通報ではなかったからです。
近所にもその強迫観念から戸締りは怠らないようにと忠告する等、有名な存在だったようです。
警察は最初からまた妄想で通報したに違いない、という先入観が働いてしまったようです。
しかし隣に住んでいた女性は異変を感じ取っており、その集合住宅の管理人に鍵を開けて調べた方がいいと忠告し事件が発覚します。
ルーシーさんは亡くなって2日経っており、まさしく911に助けを求めた日に襲撃されていました。
そしてルーシーさんが911に話した通り、浴室の薬を入れるキャビネットから強盗が侵入したことも分かりました。
どうしてそんなことがありえたのか?
この集合住宅は配管工が水回りの修理・修繕を簡易にするため各部屋のキャビネットを取り外して中に入れるような作りになっていたのです。
妄想が現実化するという不幸が重なった悲劇としか言いようがありません。
この事件の容疑者として二人の男性が逮捕されましたが証拠不十分で無罪となっています。
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