■致死率97%、脳食いアメーバが水道水から検出される ~ フォーラーネグレリア
さて今回は殺人アメーバ、フォーラーネグレリアのニュースから。
(フォーラーネグレリアについては「生きた人間の脳を喰いつくす、殺人アメーバ ~ ネグレリア・フォーレリ」の記事をお読みください)
水道水から発見されて「殺人アメーバ」がまさに身近なところにいることで話題になっていますが、以前にも水道水から発見されたことがあり、今回が初めてではありません。
「脳喰いアメーバ」というフレーズが、これまたクラシックなB級ムービーを彷彿させる響きを持っており、毎年のように感染者が出るとニュースになります。
滅多なことで感染はしませんが、感染すると狂犬病並みに助からず、致死率はなんと97%――
まさに「感染 = 死」であり、実際おそろしいアメーバです。
― フォーラーネグレリアとは? ―
フォーラーネグレリアことネグレリア・フォーレリ (Naegleria fowleri) は単細胞のアメーバの仲間で、簡単にいってしまえば人間の脳を食い荒らすアメーバです。
感染した場合の増殖スピードが凄まじく、原発性アメーバ性髄膜脳炎を引き起こし感染者を死に至らしめます。
流れのない25度以上の温水を好み、温水プールはもちろん、夏場の川の淀み、温泉等が主な感染場所となります。
死者が出るとその都度ニュースになるほど滅多なことで感染することはなく、日本では現在までで感染・死者は一例しかありません。
そんな特に心配するようなこともない、といいましたが、それが水道水に紛れ込むと聞いたら――
― 水道水に潜むホラームービー ―
実はここ数年、フォーラーネグレリアは海外でたびたび報道されており、その多くが意外にも水道水絡みの事例です。
単なる川やプールでの感染例ではなく、まさに「日常生活に潜む見えない脅威」としてニュースになっているのが特徴です。
たとえば2023年のフロリダ州。
州内の水道システムからフォーラーネグレリアが検出されたことで、市全域に対して「水を鼻に入れないように」という異例の警告が発令されました。
市民にとっては、普段何気なく使っていた水道水が「怪物の住処」に変わった瞬間だったかもしれません。
同じ2023年、アーカンソー州でも鼻うがいの直後に感染が確認され、悲しい死亡例が報告されました。
これを受け、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は「水道水は飲む分には安全だが、絶対に鼻には入れないこと」と注意喚起を再度発信しています。
この警告文からも、いかに鼻からの侵入が危険であるかがわかります。
2024年のテキサス州、そして2025年のミズーリ州でも同様のケースが続きました。
特にミズーリ州では「比較的冷涼な地域でも発生した」という点が衝撃的で、専門家は「温暖化の影響で感染地域が北上している可能性」を指摘しています。
このことから、フォーラーネグレリアは単なる南国の問題ではなく、私たちの生活圏にも潜在的なリスクがあることを示しています。
まさに、家の蛇口に潜む「顕微鏡サイズのホラー」。
とはいえ、注意すべきはあくまで――鼻から侵入した場合だけです。
正しく使えば、日常生活で水道水を飲むこと自体は安全なのです。
― ネグレリアが人間の「鼻」に執着するワケ ―
フォーラーネグレリアが「鼻」に執着する理由は簡単です。
彼らは、胃酸には弱く、口から入った場合はたちまち死んでしまうからです。
ではなぜ鼻なのか?それは、鼻の奥に脳へと続く「唯一の抜け道」が存在するからです。
その抜け道を突破されると、あっという間に脳組織で増殖し、人間にとって致命的な原発性アメーバ性髄膜脳炎を引き起こすのです。
これが、致死率がほぼ100%に近い理由です。
恐ろしいことに、症状が現れた時点では手遅れという場合がほとんどで、まさに「見えない攻撃者」の恐怖を体現しています。
― 過剰に恐れないこと ―
日本での感染例はこれまで一例のみ。
水道水から感染した報告もなく、安全性は確保されています。
とはいえ、今後どうなるかは誰にも分かりません。
温水プール、川の淀み、温泉、フォーラーネグレリアが好む条件は日本にも数多く存在するからです。
気を付けるポイントは非常にシンプルです。
・川遊びや温水プールで鼻に水を入れない
・鼻うがいには必ず滅菌水または煮沸して冷ました水を使う
・温水が長時間溜まった場所での遊泳を避ける
こうして見ると、ホラー映画のタイトルに負けないほど恐ろしい敵でありながら、意外にも弱点は明確。
「恐ろしい敵が思わぬ弱点を持っている」という点は、まさにB級ホラー映画の定番パターンのようで、恐ろしさと滑稽さを併せ持っています。
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