■成長したはずのない娘 ~ 家の中ですれ違った未来の姿
今回はグリッチ・イン・ザ・マトリックス。
それは深夜の道路でも、異界の入口でもありません。
ごく普通の昼下がり、家族しかいないはずの自宅で起きた出来事です。
― いつもの台所 ―
それは年明け間もない日のことでした。
私と妻はキッチンで昼食の準備をしながら、他愛のない会話をしていました。
五歳になる娘は、リビングでテレビを見ています。
家の中にいるのは、私たち三人だけ。
2LDKの集合住宅で、キッチンのドア越しに廊下の一部が見える間取りでした。
何の違和感もない、日常の一場面です。
― 妻が止まった ―
会話の途中、妻が私の方を向こうとして、途中で動きを止めました。
キッチンのドアの向こうを見つめたまま、完全に固まっていたのです。
私は違和感を覚え、「どうした?」と声をかけました。
その直後、妻は息を呑むような声を上げました。
私は反射的に、彼女の視線の先を見ました。
― 何かが通った ―
ほんの一瞬でした。
廊下の角を曲がり、リビングの方向へ向かう「人影」が見えたのです。
速すぎて、はっきりとは確認できません。
しかし、「誰かがいる」と確信するには十分でした。
私の頭に浮かんだのは、侵入者という言葉でした。
娘が一人でリビングにいる。
そう思った瞬間、体が勝手に動いていました。
私は咄嗟に包丁を掴み、妻に警察を呼ぶよう叫び、廊下へ飛び出しました。
― 何もないリビング ―
リビングには、何の異変もありませんでした。
娘はソファに座り、アニメを見ていました。
私を見て、不思議そうな顔でこう言いました。
「どうしたの?」
包丁を持ったまま立ち尽くす自分が、ひどく滑稽に思えたのを覚えています。
娘に誰か入ってきたかと聞きましたが、心当たりはない様子でした。
私は家中を調べました。
玄関、窓、クローゼット、カーテンの裏。
侵入の痕跡は一切なく、ドアも施錠されたまま。
三階の部屋から逃げることも不可能です。
すべては、十分ほどの出来事でした。
― 妻が見たもの ―
キッチンに戻ると、妻はすすり泣いていました。
恐怖で体が動かず、警察に電話すらできなかったそうです。
落ち着いてから、彼女は見たものを話してくれました。
廊下を歩いていたのは、背の高い女性。
花柄のワンピースに、ヒールのある靴。
足音はなかったと言います。
そして、その女性は途中で立ち止まり、妻の方を見た。
目が合った、その瞬間。
妻は気づいてしまった――
その顔が、娘に酷似していたことに。
ただし、今よりずっと成長した姿だった。
次の瞬間、女性は急ぐように角を曲がり、リビングの方へ消えた。
私が見たのは、その後ろ姿だけでした。
― 否定できない違和感 ―
もし私が何も見ていなければ。
妻の話を、錯覚や思い込みとして片付けたかもしれません。
しかし、私も「何か」を見た。
それだけで、否定はできなくなりました。
侵入者ではない。
幻覚とも言い切れない。
では、あれは何だったのか。
成長した娘の姿に見えた理由を理解できる説明は、今もありません。
― 家の中ですれ違ったもの ―
あの日以来、私たちはその話を何度も思い返しました。
しかし、どれだけ考えても、現実的な答えには辿り着けません。
確かなのは、
「存在しないはずの人物」が、
確かに家の中を通り過ぎた、という感覚だけです。
未来なのか、記憶なのか、それとも――。
あのとき、私たちは家の中ですれ違ってしまったのかもしれません。
成長するはずの、もう一つの時間と。
(参照サイト)
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