■謎の類人猿 ~ アメラントロポイデス・ロイシ(モノス)(セクション1)
1917~1920年、南米ベネズエラで油田開発に伴う地質探索を行っていたスイス人地質学者フランソワ・ド・ロワ(François de Loys)一行は、ジャングルの奥地でとんでもない生物に遭遇します。
のちに「ド・ロワの類人猿(De Loys's ape)」として世界に知られることになる、謎の生物です。
― ジャングルで遭遇した謎の類人猿 ―
ジャングルの奥地で、ド・ロワ一行の進路を塞ぐように突如現れた2匹の謎の生物。
折った枝を手に持ち、激しく咆哮しながらド・ロワたちを威嚇し、ついには排泄物まで投げつけてきたといいます。
恐怖を感じたド・ロワがライフルを放つと弾丸が1匹に命中し、もう1匹はそのまま森の奥へと逃げていきました。
撃たれた個体はメスで、ド・ロワによれば2匹はつがいのように見えたといいます。
オスをかばうようにして立ちはだかったメスが撃たれたというのです。
薄暗い森の中での出来事だったこともあり、撃ち殺した死体を見るまで、ド・ロワたちは一体どのような生物なのかはっきり分かっていませんでした。
地面に横たわっていたのは、身長4フィート5インチ(約136センチ)ほどの尾のない霊長類。
つまり、類人猿です。
もしこれが事実なら、南米初の類人猿ということになります。
しかし、腐敗するであろう大型霊長類の死体を抱えたまま探索を続けることはできません。
そこでド・ロワは、死体を解体する前に石油缶に座らせ、顎を木の枝で支えて1枚の写真を撮影しました。
物的証拠として頭骨だけを塩の入ったリュックに入れると、本来の目的である探索を続けることにします。
ところが、その道中でモティロン族に襲われ、その際に頭骨は破損・紛失してしまったとド・ロワは語っています。
探索を終えたド・ロワは、謎の霊長類のことなどすっかり忘れてしまいました。
そして、この1枚の写真もアルバムの中で10年近く眠ることになります。
― 世紀の大発見 ―
このまま忘れ去られる運命にあった謎の類人猿を「発見」したのが、ド・ロワの友人で人類学者のジョルジュ・モンタンドン(Georges Montandon)でした。
職業柄、当然ながら霊長類に精通していたモンタンドンでしたが、写真に写るような生物は見たことがありません。
世紀の大発見。
そう考えたモンタンドンは興奮し、謎の類人猿についてド・ロワから詳細な情報を聞き出しました。
生息地は南米ベネズエラの奥地。
身長は4フィート5インチ。
尾はなく、歯は32本。
南米で繁栄するクモザルの仲間に似ていますが、クモザルにしてはあまりにも大きい。
しかも尾がなく、32本の歯を持つという点は、まさに旧世界の類人猿を思わせます。
モンタンドンは、南米にも未知の類人猿が存在することを確信しました。
そして、この謎の生物にアメラントロポイデス・ロイシ(Ameranthropoides loysi)という学名を与え、満を持して学会で発表します。
種小名の「loysi」は、もちろん発見者であるド・ロワ(De Loys)に敬意を表した献名です。
「南米にも類人猿が存在した」
「絶滅したピテカントロプスが生存している可能性もある」
世紀の大発見として、当時のマスコミもこのニュースを大々的にもてはやしました。
しかし、学会での反応は芳しくありませんでした。
モンタンドンの発表当初から、「ド・ロワの類人猿」、あるいは「ド・ロワズ・エイプ」に対して疑いの目が向けられたのです。
― 本当に未知の類人猿なのか ―
まず疑われたのは、写真そのものでした。
「単に尾を切り落としたクモザルではないのか?」
という疑問です。
いや、そもそも尾を切り落とす必要すらない。
正面から撮影された写真1枚しか存在しないのだから、尾が写っていないことだけでは、尾のない類人猿の証拠にはならない。
さらに、「本当に身長が1.36メートルもあるのか?」という疑問も投げかけられました。
これに対してド・ロワは、類人猿を座らせた石油缶の高さが45センチあることを根拠として、その大きさを主張します。
しかし、後の鑑定では、実際の身長は1メートルにも遠く及ばないのではないかという指摘も出ています。
そもそも、その写真は本当に南米のジャングルで撮影されたものなのか。
そんな疑問まで呈される始末でした。
しかも、本来UMAに対して比較的寛容な態度を取る未確認動物学者からも、芳しい反応は得られていません。
身長4.5メートルのフロリダ・ジャイアント・ペンギンのような、よっぽどなUMAですら擁護するUMAファンの鑑、未確認動物学者アイヴァン・T・サンダーソン(Ivan T. Sanderson)氏でさえ、
「ド・ロイズ・エイプは未知の類人猿などではない。大型のクモザルに過ぎない」
と一蹴しています。
― バナナの木が暴いた矛盾 ―
さらに未確認動物学者ローレン・コールマン(Lauren Coleman)氏は、写真そのものに写り込んでいる植物に注目しました。
謎の類人猿の右側に写っている植物。
コールマン氏によれば、これはバナナの木です。
「この植物はバナナの木ですが、南米にバナナは自生していません。
バナナが存在するとすれば、バナナ・プラントが持ち込まれた人里近い場所に限られます。
ド・ロワの主張通り、この類人猿がジャングルの奥地で撮影されたのであれば、バナナの木が写真に写り込むはずはないのですが」
もちろん、この指摘だけで写真が捏造だと決定できるわけではありません。
しかし、身長の根拠、尾のない姿、撮影場所、そして写真に写り込んだ植物。
一つひとつは小さな疑問でも、それらが積み重なるにつれて、「本当に未知の類人猿なのか」という疑念は次第に大きくなっていきました。
そして、後世の調査によって、さらに決定的な問題が浮上することになります。
セクション2へ続く。
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15000年前のブラジルには大型のクモザルであるCartelles coimbrafilhoiという種が生息していたようです。
返信削除頭から尾の先まで1.7mに達し、体重は23kgにもなったと考えられています。
他にもCaipora bambuiorumやProtopithecusなど大型の新世界ザルの化石がいくつか確認されており、モノスがこういった種の生き残りである可能性も否定できないかもしれません。
これは面白いですね。UMAの醍醐味といえば有史以前の生物の生き残り説が定番ですからね。クモザルで20キロオーバーといえばかなり大きかったでしょうね。
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