■飛行する透明の翼を持つ種 ~ ハネフクベ
自ら動いて移動することが苦手な植物はその分布する地域を広げるのに種を飛ばすことで達成しようとします。
タンポポのような軽い素材にして風でどこかへ運んで行ってもらったり、美味しい実の中に種を紛れ込ませ鳥や動物たちに食べさせることによって運んだもらったりするのが一般的です。
ウリ科の一種、アルソミトラの仲間でジャワキュウリ (Javan cucumber) ことハネフクベ (Alsomitra macrocarpa) の種子はそのいずれでもない、方法を編み出しました。
タイやニューギニアを中心に自生するこの植物、その実の直径は30センチ、タンポポのように空を舞うのは絶望的な大きさで、この種入りの実を遠くへ運んでもらうには動物に食べてもらうのがいいです。
しかしハネフクベはそんな一般的な方法を選択しませんでした。
かつて人間が空を飛ぶのを夢見たように、この巨体にして彼女は空を舞う夢を諦めなかったのです。
そしてその夢は叶いました。
実の中にある種に翼をつけるという画期的な方法を思いついたのです。
ハネフクベは実の中で、薄く長く成長する包葉 (花序を保護する葉) を種に取付けることに成功しました。
(ハネフクベの種)
(image credit by Wikicommons)
種が熟すころ包葉は乾燥し、まさにブーメランのように両端が湾曲します。
その長さ13センチ、操縦士の種は翼の真ん中に鎮座、いつでも離陸OKです。
実が熟すと、一番下側に亀裂が入り最終的に穴が開くことで翼をもった種たちは空に放たれます。
GO!
そのまま地面に向かって真っ逆さま、、、なんてことにはならず、自然が生んだその絶妙の重さ・形状をもつ飛行機は揚力を得て、放たれた高さよりも高く舞い上がると、失速、急降下、再浮上というサイクルを繰り返し飛び続けます。
その飛行距離は数百メートルにも及び、また、この飛行機は極度の方向不安定性を持ち同時に放たれてもお互いにランダムな方向へと向かいます。
距離的にも方向的にも兄弟姉妹たちとは遠く離れ離れになることで家族間での資源の奪い合いも起こりません。
まさにいいことづくめ、自然が生んだ奇跡の乗り物です。
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1枚目の画像を見た瞬間、『そんなアホなw』と思いましたが
返信削除説明文と実際の写真を見て納得できました
不思議な植物もあるものですね