■絶滅したのか、それとも生き残っているのか? ~ スコティロ
今回はスコティロ (Sukotyro)。
1669年、東インド諸島を旅行中のヨハン・ニーホフ (Johan Niewhoff) 氏により、滞在していたジャワ島で目撃されたもので、彼の説明によれば「大きさはウシ程度、ブタに似た鼻を持ち、頭部の両側からやや黒っぽいゾウのような牙を2本生やしている」とのことでした。
イラストも残されており、まさにそのままです。
このイラストは17世紀に描かれたものであり、当時描かれたエキゾチックな動物たちはおそらく実物を見ずに、伝聞 (目撃証言) だけで描かれたと思われるものも少なからず存在します。
イラストを見た限り「牙」の生え際が両目の横からとやや不自然であり、やはり目撃者と描き手で齟齬 (そご) が生じてしまったのでしょうか?
(ニーホフ氏のイラストを元に複製されたイラスト)
(image credit: Wikicommons)
しかし、このイラストはニーホフ氏の目撃証言をもとに描かれたものではなく、彼自身によって描かれたものだといい、(旅行後であれば記憶違いも考えられますが) 基本的にはこのイラストのような動物であったということでしょう。
イラストをもう少し詳しく見ていきましょう。
全体的なシルエットは「ゾウの牙を持つ大柄なブタ」です。
大きく垂れ下がった耳を持つ頭部は吻部等、牙さえ除けばまさにブタそのものといった感じです。
首の後ろから尾にかけて背中に鬣 (たてがみ) のような短い毛が生えており、ウマのようなフサフサの長い尾を持ちます。
四肢の付け根も筋骨隆々と言った感じで、頭部以外はあまりブタっぽくはなく、むしろサイを彷彿とさせます。
既知の動物で表現すると「スコティロ = ブタ + ゾウ + サイ」といった感じでしょうか。
まさに摩訶不思議な姿をした生物です。
やはりキーを握るのは頭部、ブタやイノシシである可能性が一番高そうに感じます。
そこでその正体の最右翼とされたのがバビルサ (Babyrousa babyrussa) です。
(バビルサ)
(image credit: Wikicommons)
バビルサはインドネシアのスラウェシ島 (セレベスバビルサ / Babyrousa celebensis) やトギアン諸島 (トギアンバビルサ / Babyrousa togeanensis) に棲息する原始的なイノシシで上顎と下顎に一対ずつ、つまり二対四本の牙を持ちます。
上顎の牙は皮膚を突き破って伸びるため、湾曲しているという違いはあるものの、ニーホフ氏のイラストのように、牙にも関わらず顔から生えているように見えます。
しかし似ているのはこの吻部と牙の生え方ぐらいで、牙の形状は大きく湾曲しており耳も大きくなく、頭胴長1メートル強、尾にも毛はなく全体的なシルエットはそれほど似ていません。
そこで牙の形状や体格に重点を置いてその正体を再考し、未確認動物学者らによって考え出されたのが島嶼化 (とうしょか) した (未発見の) ステゴドン (Stegodon) というもの。
ステゴドンは絶滅したゾウの仲間です。
島嶼化とは、簡単に言うと島において大きな生物は矮小化し、小さな生物は巨大化するといった説で、大柄なゾウは矮小化する側になります。
ステゴドン・ソンダーリ (Stegodon sondaari) やステゴドン・フローレンシス (Stegodon florensis) は人類よりも背が低く、先に挙げたバビルサと異なり、大きな垂れ耳や緩く湾曲した牙は、よりスコティロにシルエットが近いかもしれません。
ただまあ「スコティロの牙」なるものもロンドン自然史博物館に寄贈されているものの、調査から水牛のものと特定されており、ニーホフ氏が寄贈したものではないかもしれませんが、スコティロはニーホフ氏により「創造」されたハイブリッドUMAである可能性も考えられます。
(関連記事)
0 件のコメント:
コメントを投稿