■翼竜から思いもよらないものに変貌 ~ ヒタチナカリュウ
翼竜ニクトサウルス (Nyctosaurus)。
巨大種がわんさかという翼竜としては控えめな3メートルほど (4メートル説もあり) の翼開長、しかし一度見たら忘れられない長大な突起 (トサカ) をもちます。
このトサカは頭骨の3倍以上 (55センチ) の長さにもなり、しかも後方ではなく頭部からほぼ垂直に伸びており、トサカというより「角」と表現したほうが適切なほどです。
更にトサカは途中で分岐し、後方にこれまた長く伸びます。
ちなみに属名のニクト (Nycto) には「夜」や「コウモリ」の意があり、サウルスは「トカゲ」を意味するため「夜のトカゲ」や「コウモリのトカゲ」といった意味で、「トサカ」ついては一切言及されていません。
これは、ニクトサウルスがトサカをもつことが当初は分かっていなかったからです。
その化石のほとんどが北米大陸、僅かに南米でも発掘されています。
そんな南北アメリカ大陸限定の翼竜の化石が、2002年、日本の茨城県ひたちなか市の白亜紀後期 (約7200万年前) の地層から小学校教諭によって発見されました。
骨の内部は泥が詰まったようになっており、つまり中空であることが示唆されます。
軽量化された骨、これはもしかすると翼竜の化石なのではないか?
もちろん初めはニクトサウルス科に属するかどうか以前に翼竜かどうかも分かっていませんでした。
この骨の鑑定を、イングランドのレスター大学で教鞭をとる古生物学者デイヴ・アンウィン (Dave Unwin) 博士にレプリカを送付し依頼しました。
アンウィン博士は翼竜研究の第一人者でニクトサウルスをプテラノドン科に属さないと結論付けた研究者のひとりであり、大変頼もしい方です。
そして待ち望んだアンウィン博士の鑑定結果が出ます。
当初の予想通り、この骨は正真正銘翼竜のものであり、翼竜の右肩甲骨であることが判明したのです!
ニクトサウルスの骨が南北アメリカ以外の地ではじめて発見されたのです。
地理的に考えても新種である可能性が高く、日本産のニクトサウルスの頭部のトサカは一体どんな形だったんだろう?なんて想像するだけでもワクワクします。
鑑定結果を受け、ミュージアムパーク茨城県自然博物館ではこの骨を「ニクトサウルス科の可能性がある化石」とし「ヒタチナカリュウ」と名付けられ展示されました。
時は流れて2017年、
同博物館の学芸員、加藤さんが自らの論文作成を祝い、自分で捌いたスッポン鍋を家族にふるまっていたときのことです、展示しているヒタチナカリュウとよく似た骨が出てきました。
どうも気になり展示しているヒタチナカリュウの化石を再度調べてみると骨は中空になっておらずスポンジのような軟組織で埋まっていることに気付きました。
そんなこんなで再度調査したところ、翼竜の右肩甲骨と思っていた骨はスッポンの上腕骨に酷似していることが判明、ヒタチナカリュウはスッポンである可能性が高まり名前を変更、ヒタチナカオオスッポンと生まれ変わり現在に至ります。
学芸員さんの観察力が凄いこと。
なおヒタチナカオオスッポンは甲長80センチもある巨大なスッポンでした。
頭部を入れれば軽く1メートルは超えるであろう巨大なスッポンでも十分魅力的ではありませんか。
(関連記事)
日本でたまに報告される大亀UMAの正体の可能性はあるのでしょうか
返信削除