■チェサピーク湾のシー・モンスター ~ チェシー
今回はアメリカ、メリーランド州とヴァージニア州に跨るチェサピーク湾 (Chesapeake Bay) で目撃されるシーモンスター、チェシー (Chessie) です。
閉ざされた湖のレイクモンスターと異なり、シーモンスターの目撃はただの一度きりであったり、せいぜい良くて2~3回程度です。
留まる理由がない限りエサを求めて制限なく移動できるからです。
ところがこのチェシーはチェサピーク湾を気に入っているのか幾度も目撃されている珍しいシーモンスターです。
但し、閉ざされていないことが逆に裏目にもなり、チェサピーク湾は海の生物であれば出入り自由、実は全く異なる生物であってもこの湾で謎の生物が目撃されれば全部チェシーになってしまっている、という可能性は否定できません。
実際、1980年に写真撮影に成功したチェシーは分析の結果フロリダマナティー (Trichechus manatus latirostris) であることが分かったこともあります。
とはいっても異なる生物の目撃情報が一つの生物に集約されハイブリッド化するのは閉ざされたレイクモンスターでも日常茶飯事ですから、ま、あまり気にせず見ていきましょう。
もっとも初期のチェシーの記録は1936年に遡りますが、その生物が詳細に目撃されたのは1943年、ボートでシーバス釣りに来ていた男性二人によるものです。
彼らによればボートから70メートルほど離れた場所にサッカーボール程の大きさのウマに似た頭部を持つ生物が浮いているのに気付きました。
体色は黒っぽく、全体の大きさは分かりませんが、水面から出ている部分だけでおよそ3.5メートルはあったといいます。
頭部の特徴はラクダに似ているといわれるキャドボロサウルスことキャディと似ていますが、キャディは北米大陸の西海岸、キャドボロ湾での目撃であり大陸を挟んで真逆なので別物でしょう。
また1978年には湾内だけではなく、この湾に流れ込むポトマック川 (Potomac River) でもチェシーが目撃されています。
前述の通り、1980年に目撃されたのはマナティーであったことが判明しましたが、実はこの時のマナティーに付けられたニックネームがチェシーです。
それ以降、チェサピーク湾の謎の生物はチェシーと呼ばれるようになりました。
チェサピーク湾はマナティーが棲息するには冷たすぎますが、どういうわけか遠路はるばるこの湾に訪れているようです。
1982年は動画の撮影にも成功、左右に体をくねらせながら泳ぐ生物が写っていました。
チェシーは1980~1990年代に最も目撃が集中しました。
その目撃の多くはいわゆるシーサーペントタイプ、細長い形状をしており、シーサーペントとしては珍しく (本来はこちらが正当なのですが)、体を左右にくねらせて泳ぎます。
体を左右にくねらせることから魚類か爬虫類である可能性が高いといえます。
体長は3~9メートル、既知の生物であれば古来からシーサーペントと誤認されてきたリュウグウノツカイ (Regalecus russelli) はチェシーの正体の筆頭候補です。
しかし現代ではリュウグウノツカイの存在自体はレアであっても、決してシーサーペントではなく風変わりな深海魚であることは認識されているため、その目撃のすべてがリュウグウノツカイではないでしょう。
もうひとつの候補は巨大なアナゴです。
ただアナゴはリュウグウノツカイほど大きくはなりませんから少し難しい感じではあります。
ペースは落ちたものの、21世紀以降もチェシーの目撃は続いています。
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