■シーサーペントの幼体か? ~ 巨大なレプトケファルス (レプトセファルス)
特にウナギの仲間の幼体として有名なレプトケファルス (Leptocephalus)。
左右に極端に扁平で (薄っぺら) で赤血球を持たないためほぼ透明、笹の葉のような独特の形状をしています。
そのこともあってか以前はレプトケファルスを「葉形仔魚 (ようけいしぎょ)」とか「葉形幼生 (ようけいようせい)」と訳されていましたが、現在はラテン語に忠実に「小さい頭 (または細い頭)」と訳されているようです。
ウナギ目以外にも、フウセンウナギ目、カライワシ目、ソトイワシ目の幼体はレプトケファルス期を経て成体になります。
古代魚にして巨大魚ターポン (Megalops atlanticus) なんかもカライワシ目でレプトケファルス期を経ているのは意外な感じがします。
(ターポン)
(image credit: Wikicommons)
レプトケファルスは通常とても小さく、数センチ程度しかありません。
ですがウナギやアナゴの生態を見れば分かる通り、成体は優に1メートルを超します。
レプトケファルスと成体の体長の比率はウナギで1:18、アナゴで1:30、つまりレプトケファルスの体長を知れば、その成体の大きさがおおよそ推測できるというわけです。
そして1930年、セントヘレナ島近海で1.8メートルのレプトケファルスが捕獲されました。
(巨大なレプトケファルス)
(image credit: Prof. Jørgen Nielsen via Shuker Nature)
この大型のレプトケファルスは、頭部と体のほとんどの部分は小柄なレプトケファルスと似ているものの、尾に向かって極端に細くなり、尾部の先端部分はほぼがひも状でした。
形状がどうであれ、この時代の研究ではレプトケファルスの体長は大きくても成体の1/18程度しかない、逆の表現をすれば最低でもその体長の18倍以上に成長すると考えられていました。
仮にこれがウナギのレプトケファルスであれば成体は1.8×18=32.4メートル、アナゴのものであえば1.8×30=54メートルとなるわけです。
まあこれが既知のウナギやアナゴでない可能性を加味しても5~10倍程度になるに違いない、つまりは9~18メートルサイズの巨大なウナギ状の生物に成長するものと推測されました。
海のUMAといえば巨大海蛇ことシーサーペント、多くの目撃情報が寄せられながらもその存在を決定的なものにする証拠は発見されていませんでしたが、この巨大レプトケファルスこそがシーサーペントの存在を証明する間接的・潜在的な証拠と考えられました。
1930年に発見されたこの巨大なレプトケファルス以降も、これほどではないにしろ (40~80センチ)、 続々と大きなレプトケファルスが発見されます。
1959年には新種の生物とみなされ レプトケファルス・ギガンテウス (「巨大なレプトケファルス」, Leptocephalus giganteus) という学名も与えられます。
しかし、、、
現在のところ巨大なレプトケファルスこそ時折発見されるものの、その成体である「シーサーペント」のほうは捕獲されていません。
由々しき事態です。
これには訳があり、レプトケファルス幼生の時代を経て成長するウナギ目、フウセンウナギ目、カライワシ目、ソトイワシ目、総勢800種以上にも上るこの魚類たちの中には「レプトケファルスの大きさが最大値」のものも存在するのです。
つまり「レプトケファルスの大きさ = その魚の最大値」ということです。
(クロソコギス)
(image credit: Wikicommons)
特にソコギスの仲間 (Notacanthidae) はレプトケファルス幼生が巨大であり、レプトケファルス・ギガンテウスもキツネソコギス属のクロソコギス (Notacanthus chemnitzii) ではないか?と考えられています。
残念がることはありません、透明の薄っぺらな魚 (レプトケファルス) に2メートル級の魚がいること自体が神秘です。
この先、もっと巨大なレプトケファルスが発見されるかもしれません。
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