2024年4月21日日曜日

大飢饉を呼び起こした魔性の植物 ~ ハングリーグラス


■大飢饉を呼び起こした魔性の植物 ~ ハングリーグラス

「ハングリー・グラス」

今日は久しぶりに動物ではなく植物の話題、といっても普通ではなく怪植物です。

ハングリー・グラス (Hungry Grass) はUMA風に表現すればUMP (Unidentified Mysterious Plants, 「未確認植物」の意) という表現になります。

アイルランドに伝わる怪植物でそのハングリー・グラスという名は「飢えた草」を意味し、この「飢えた」にはいくつかの解釈があります。

まずこのハングリー・グラス自体が字義通り飢えていると解釈する場合、それは「人喰い植物」である説と「作物を食べる植物」というふたつの考え方に分かれます。

前者であれば直接人に敵対し、後者であれば人間との食物の取り合いとなり間接的に人と敵対することを意味します。

そしてもうひとつの解釈、ハングリー・グラスが能動的に人や作物を食べるのではなく、この草が生えている一帯を人間が歩くと、その人物は飽くなき飢えに苦しむ、もしくは空腹過ぎて倒れる、という説があります。

これはもしかすると草原を歩いていたときに原因不明の失神等で倒れたりしたことを、合理的に説明しようとした末の迷信かもしれません。

いずれにしてもこの植物に人間は近寄るべからず、といった存在です。

この植物はアイルランド、マンスターのベアラ半島にあるハングリー・ヒル (Hungry Hill / Cnoc Daod) という実在する丘 (実際は山) を発祥とすると信じる人もいます。

もちろん「ハングリー」という名を持つからです。

このハングリー・ヒルに生えるハングリー・グラスの逸話があります。

ハングリー・ヒルは海沿いの丘でここを超えるとそこには海が広がります。

海に行くにはこの山を越えなければいけません。

しかしこの山には魔性のハングリー・グラスが生い茂っており無事に山を越えることはできません。

実際この丘を上った人は二度とその姿を見ることはないといいます。

ある時、このことを知らない若い釣り人が海に行きたいとこの村に訪れました。

人々は彼をとめましたが村人たちに彼は耳を貸しません。

彼はリンゴとサンドイッチを携帯すると、リンゴを食べながらハングリー・ヒルに登っていきました。

すると想像通り、静かだった地面は突如うごめき、ハングリー・グラスが次々と地面からヘビのようにのたうち回り青年を包み込もうと襲い掛かりました。

しかし彼はそれを気にも留めずリンゴを食べ続けました。

すると彼がリンゴをひと咬みするごとに襲い掛かってきたハングリー・グラスは地面に崩れ落ちていくのです。

そして青年がリンゴを咬みながら歩を進めるごとに襲い掛かってきたハングリー・グラスは地面に崩れ落ち、そしてすべてのハングリー・グラスは青年から離れました。

彼は無事に海へと辿り着くことができました。

ここからハングリー・グラスの上を歩くときは2つの食べ物を食べながら歩けば襲われないという逸話が出来上がりました。

もちろんこれはフィクションですが、このハングリー・グラス自体は19世紀、特に19世紀半ばにピークに達したジャガイモ飢饉 (Potato Famine) の未曽有の辛い体験が深くかかわっているのではないかといわれています。

この大飢饉でアイルランドは100万人以上の餓死者・病死者がで、また島外へ人口の20%程が流出したことにより急激な人口減を引き起こしました。

この時代、ジャガイモを次々と枯らせたジャガイモ疫病菌の存在は分かっておらず、ハングリー・グラスのようなスーパーナチュラルなものでも創造し自分たちを納得させない限り精神が持たなかったのかもしれません。

(関連記事)





3 件のコメント:

  1. なんか関連記事のマンドレイクだけリンクになっていませんよ!

    返信削除
    返信
    1. ご指摘ありがとうございます!直しておきます

      削除
  2. 日本で言うヒダル神ですね。疲れと低血糖でぶっ倒れないよう飯を用意しておこうッて話

    返信削除