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2025年10月23日木曜日

レミングは空から降ってこないし集団自殺もしない ~ 真・レミング


■レミングは空から降ってこないし集団自殺もしない ~ レミングの真実

和名はタビネズミですが、日本人ですら属名のレミング (Lemming) の方がはるかに通りがいいでしょう。

レミングはハムスター的な丸っこいシルエットをした、体長10センチ前後の小柄な齧歯類で、北極圏とその周辺の寒冷な地域に棲息します。

特筆すべき奇妙な姿をしてもいなければ、ペットで大人気というわけでもありません。

が、その知名度は抜群といえます。

レミングの知名度を上げている要因は2つあります。

ひとつは16世紀、地質学者のヤーコプ・ツィーグラー (Jacob Ziegler) が、何を勘違いしたか、レミングは自然発生する (嵐の日に空から降ってくる) という説を唱え、それが信じられていたこと。

17世紀になりオーレ・ヴォーム (Ole Worm) により自然発生は否定されたものの、嵐の日に空から降ってくることは否定されませんでした。

なんやかんやと18世紀まで自然発生するだの、空から降ってくるだの言われていたため、長く神秘的な生物として君臨していたわけです。

ですがまあ、そうはいっても18世紀までの話。

もうひとつが「レミングは集団自殺する」こと。

レミングは多くの齧歯類がそうであるように高い繁殖力を持ちます。

(ノルウェーレミング)
(image credit: Wikicommons)

特に大きな群れをつくり大移動するのはノルウェーレミング (Lemmus lemmus) であり、3~4年周期で猛烈な個体数の増減を繰り返します。

この「減」の方法が「種の存続を守るため集団自殺する」というのがレミングの習性、そして定説として広くいきわたりました。

彼らは「死の行進」と呼ばれる長距離の大移動を行い、崖から海へ向かって身を投げ自ら命を絶つといわれています。

確かにあまりに群れの数が増えすぎると食べ物が無くなり群れ全体が行き詰ってしまいますから、個体数の調整に自殺する、というのは一見すると理にかなっているようにも感じてしまいます。

が、その場合「誰が自殺するのか」が問題となります。

大増殖し、密集することにより、仮にフェロモンの濃度が一定値を超えると入水自殺トリガーが引かれる、とします、仮にね。

その場合、「死の行進」に参加した全員が一斉に海に飛び込み、個体数の調整どころか群れごと全滅してしまう可能性があります。

それを避けるには選ばれしものだけが入水自殺をしなければなりません。

先天的に入水自殺トリガーを持つモノと持たないものがいる?

もしくは入水自殺を行い続けることで群れの数はみるみる減り、もしかするとフェロモン濃度が一定値を下回り、個体数が少なくなったことを察知しトリガーがオフになる?

あれこれ書きましたが、これはレミングが自然発生したり空から降ってくるの同様、「死の行進」も都市伝説に過ぎなかったことが分かっています。

元々遊泳力の高いレミングはエサを求めての大移動時に、進行方向に川や湖があっても水に入ることを厭わず、そのまま対岸へ泳ぎ切ろうとする場合があります。

しかし、対岸が思ったよりも遠かったり、予想以上に流れが強かったり、または遊泳中に天候が崩れたり、といった災難に遭い溺死してしまう場合があります。

しかもその数も夥 (おびただ) しいため、個体数を調整するため入水自殺している、と人間たちに受け止められてしまったというわけです。

実際は「事故」ですね。

また「群れで大移動」と書きましたが、実際のところは無造作に散らばるものの絶対数が多いことにより「群れ」になってしまうだけで、リーダー的な存在によって統率されているわけではなく、群れに見えるのも結果論に過ぎません。

んで、まぁ、これをさらに広く世間に知らしめてしまったのがディズニーが1958年に公開したドキュメンタリー映画「白い荒野 (White Wilderness)」。

このフィルムにおいて「噂通り」レミングは走って崖の先端に向かって走り、そして数百匹のレミングたちが海 (北極海) へ次々と飛び込む姿が映し出されています。

やがて溺死し海上を漂う無数の、そして無残なレミングの姿が映し出されます。

やはりレミングは個体調整のために自殺をするんだ、、、

いや、、、

実は撮影クルーが用意した大量のレミングを崖に配置し、クルーたちが大声で叫びながら崖に向かってレミングたちを追い詰め「入水自殺を強要」していたといわれています。

(実際の撮影風景を暴露したCG、右側からクルーがレミングを追い立て驚かせ、左側にある崖から落下させているのを撮影)
(image credit: Animal Planet)

それどころかカメラが回っていないところではレミングを直接海へ放り投げていたとの噂も。

あのディズニーが!?そんなことするはずがないでしょう!?

ディズニーファンは一応ご安心あれ、この演出を行ったのは野生動物写真家のジェームズ・R・サイモン氏といわれ、ディズニーの承諾なしに上記の残虐行為を自己の判断で勝手に行っていたといわれています。

人気テレビプログラム、アニマルプラネットの "The Most Extreme" では、「白い荒野」のレミングの場面をフェイクと言い切り、当時の撮影の様子を再現しています。

実はレミングたちが飛び込んでいるのは北極海ですらなく、カナダ、アルバータ州のボウ川であることまで突き止められています。

で、レミングには6属20種ぐらいいるのですが、サイモン氏が用意したレミングたちは集団自殺どころか集団移動すらしない種であるという致命的なミスまで犯していました。

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