■アーカンソー・スナイプ (スキーテルー)
今回はアーカンソー・スナイプ (Arkansas Snipe)、またの名をスキータールー (Skeeteroo) といいます。
北米の民間伝承上の生物、いわゆるフィアサム・クリッターの一種で名前からも分かる通りアーカンソー州に伝わるUMAです。
アーカンソー州はミシシッピ川流域に位置し自然に恵まれているため、未知の生物が潜んでいそうな雰囲気をぷんぷん醸し出します。
さてアーカンソー・スナイプとはいったいどんな生物か?
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年老いた先住民族のクワシン (Kwasin) は友人のガイドに会うためにキャンプ場へやってきました。
ガイドはキャンプの新参者 (しんざんもの) にクワシンを紹介するとこういいました。
「ところで、クワシンの腕と首にある大きな傷が見えるか?あれは嘴 (くちばし) をもつ蚊の仕業だ。クワシン、こいつに話してやってくれ」
クワシンはうめくだけで黙っていたためガイドが話を続けました。
「わしは長い間そいつを見ておらん、昔はこの辺にもたくさんいたんだがな。鶏と同じぐらい大きくて嘴は6~8インチ (約15~20センチ) 程、鋼のように固いんだ。
小川の土手でやつらはいつも口吻を磨いて鋭く保っていた。なあ、クワシン、やつらの群れがあんたを襲った時の話をこいつに話してくれないか?」
「いや、あんたが続けてくれ」クワシンは重々しく返答した。
「そうか。
ある日のことだ、クワシンがカヌーでフィッシュクリークを下っているとき、群れがクワシンに襲い掛かってきたんだ。クワシンは急いで川岸へたどり着くとカヌーを陸に引き上げひっくり返し、その中に身を潜めたんだよ。
やつらは鋭い口吻でカヌーをやたら滅多に刺しまくった。クワシンは何とか助かろうと石を拾ってやつらの口吻を叩き曲げてやったのさ、するとやつらはカヌーごと飛び去っちまった!そうだろ、クワシン?」
クワシンはうめいた。
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バックグラウンド・ストーリーもフィアサム・クリッターらしく「恐ろしくもユーモラス」な存在であることが分かります。
アーカンソー・スナイプは実在するか真面目に議論するような存在ではありませんが、アーカンソー・スナイプのようにUMAの中で最も実在するのが困難なのが「巨大昆虫」を含む「陸棲の巨大無脊椎動物」です。
現生でもっとも巨大な陸棲の無脊椎動物はヤシガニ (Birgus latro) で体長40センチ超、長い脚を広げた場合1メートルを超す場合があり、4キロ以上に達します。
この大きさに達するには40年以上かかるといわれ、一説には120年との説もあります。
いずれにしても非常に長命で知られています。
飛翔できる昆虫となるとヘラクレスサン (Coscinocera hercules) の翼開長28センチが最大だといわれます。
絶滅種の昆虫だとどうでしょう?
巨大昆虫と聞いて真っ先に思い浮かぶのがやはりメガネウラ (Meganeura)、研究者により推定される大きさはまちまちですが、羽根を広げた長さが最大で75センチともいわれる巨大なトンボです。
また、メガネウラほど知名度はありませんが、同じく巨大トンボ、メガネウロプシス (Meganeuropsis) も翼開長70センチ以上、メガネウラと同等かそれ以上ともいわれます。
ムカシアミバネムシの最大種、メゾサイロス (Mazothairos) も翼開長が56センチもあり、翼開長は引けを取るものの体長的には彼らより大きかったともいわれます。
これらはみな現在より酸素濃度の高かった (現在の1.5倍~) 古生代の石炭紀 (約3億5900万年前~2億9900万年前) やペルム紀 (約2億9900万年前から2億5100万年前) の昆虫です。
とまあ、かなり大きな昆虫は一応存在していたのですが、時代は恐竜よりも古く、なにより酸素濃度の関係から現在までその巨体を保持したまま細々と生き残っている、というのは考えにくいところではあります。
(コモン・スナイプことタシギ)
(image credit by Wikicommons)
この生物の基となったのはもちろん昆虫の蚊だとは思いますが、このアーカンソー・スナイプという名前から、昆虫ではなく鳥類のタシギ (Gallinago gallinago) にヒントを得ている可能性もあります。
タシギは蚊の口吻を彷彿させる非常に細長いクチバシを持ち、英名をコモン・スナイプ (Common snipe) というからです。
(参照サイト・参考文献)
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