■サメ博士がその存在を示唆 ~ ジャイアント・クッキーカッター・シャーク
体長は大きくて50センチ程度、およそサメらしからぬ細長い体型をしている深海性のサメ、ダルマザメ (Isistius brasiliensis)。
この小さな体にして、クジラやイルカ、ジュゴン、サメ、エイ、マグロといった巨大な海洋生物に見境なく襲い掛かります。
偶発的に人間が襲われたケースも散見されます。
(ダルマザメ)
(image credit by Wikicommons)
襲い掛かるといっても真っ向勝負できるわけもなく、体の側面に目いっぱい口を広げて咬みつき吸着し、そのまま体を回転させて体表表面の肉をこそげ落とします。
その傷跡はまるで円形のクッキーカッターでくり抜いたよう、そのためダルマザメの英名はクッキーカッター・シャーク (Cookie-cutter shark) といいます。
その姿も生態もサメとしては特異中の特異な存在といえます。
群れで移動することもありクッキーカッターによる型抜き跡が複数残っているクジラやイルカも珍しくありません。
特に体が弱り遊泳力に問題を抱える大型海洋生物はクッキーカッター・シャークの群れに襲われ放題となり、数百の傷跡が残っている個体も発見されています。
その傷跡はひと目でクッキーカッター・シャークの仕業と分かるものですが、クッキーカッター・シャークの体長からも分かる通りその傷跡は直径は5センチ程度の小さなものです (但し深さは7センチ)。
(ダルマザメによる無数の傷跡を持つミナミオウギハクジラの死骸)
(image credit by Wikicommons)
さてそんな小さなクッキーカッター・シャークですが巨大種、つまりジャイアント・クッキーカッター・シャーク (Giant Cookie-cutter shark) が存在するかもしれない、そう語ったのは「シャーク・レディ」の異名を持つアメリカ人の著名な魚類学者ユージェニー・クラーク (Eugenie Clark) 博士。
彼女は母親が日本人であり日本人のルーツを持ちます。
その異名からも分かる通り、特にサメの研究で有名な人物です。
さて今回の主役ジャイアント・クッキーカッター・シャークですが、実は目撃されたことは一度もありません、理論上の存在です。
それなのに彼女はなぜそのような生物が存在すると仮説を立てたのか?
クッキーカッター・シャークの独特の傷跡を思い出してください、傷跡だけでその犯人が分かってしまう円形の傷跡。
アラスカ近郊でクッキーカッター・シャークに襲われた跡のあるイッカク (Monodon monoceros) の死骸が見つかりました。
前述の通りクッキーカッター・シャークによる傷跡は直径5センチ程度ですが、そのイッカクの体にそれよりもはるかに大きな円形の傷跡が見つかったのです。
これだけの傷跡を残せるクッキーカッター・シャークが存在するとすればそれはとてつもない大きさに違いない、彼女はそう考え、未発見のジャイアント・クッキーカッター・シャークの存在を示唆しました。
しかし現在でもそのような生物は発見されていません。
一説にはそのイッカクにあった円形の傷跡は巨大ザメとして有名なオンデンザメ (Somniosus pacificus) やニシオンデンザメ (Somniosus microcephalus) によるものではないか、と推測されています。
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