■ただの民間伝承か?尾の返還を求める魔獣 ~ タイリポ
今回はタイリポ (Tailypo)、久方ぶりのアパラチアの民間伝承です。
タイリポはフィアサム・クリッター (北米、特に五大湖周辺の民間伝承系UMA) のひとつに数えられるときもあり、その性質上、実在性の高い生物ではありません。
しかしその姿は決して荒唐無稽なものではありません。
タイリポは真っ黒で犬ほどの大きさで知られ、ふさふさの長い尾を持つのが特徴です。
耳は大きく先端は尖っており、また目は黄色もしくは赤、鋭い爪を有しており、これは人間に対しても有効な武器となると考えられています。
(キツネの黒化個体)
(image credit: Wikicommons/雷太)
大きさや特徴を聞く限り、(赤い目を除けば) まったく普通の野生動物であり、特にオオカミもしくはキツネといったイヌ科の哺乳類を彷彿とさせます。
但し、、、そこはフィアサム・クリッター、パラノーマルな能力は持ち合わせており、「人の言葉 (英語)」を話すといいます。
この時点にて実在するUMAと考えるのはゲームオーバーですが、取り敢えず、タイリポがどのようなUMAであるかを見ていきましょう。
ダルビー・スプークを彷彿とさせますね。(ダルビー・スプークについては「1931年、人と会話するマングース ~ ジェフ (ダルビー・スプーク)」をご参照ください)
(オオカミの黒化個体)
(image credit: Wikicommons)
タイリポには都市伝説のようにいくつものバリエーションがありますが、細かい点を除けば話の内容は似通っており、おそらくひとつの元となる話から語り手によって尾ひれはひれがつき派生していったのでしょう。
基本的にタイリポの話に登場するのは年老いた猟師 (または木こり)、彼の所有する猟犬、そしてタイリポです。
猟犬の数にもバリエーションがあり、中には登場しないものもあります。
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山で一人暮らす年老いた猟師。
ある年の冬のこと、厳寒の冬を乗り越えるため溜め込んでいた食料も徐々に底を尽き、空腹に苦しんでいました。
の猟師は自ら所有する猟犬3匹を連れ山へと出かけます。
猟の成果は冴えないもので野ウサギ1羽だけ、飼い犬たちのエサの足しにしかなりません。
しかしその帰りの道中、思いがけない大物に出くわします。
その生物は犬ほどの大きさがあり、長くふさふさした尾を持っていました。
彼はそのチャンスを逃すまいと生物に向けライフルを発砲します。
残念ながら仕留めることはできませんでしたが、弾は尾の付け根に当たり獲物には逃げられましたが大きな尾を得ることはできました。
老人はその尾を調理し空腹を満たすことができました。
久しぶりのご馳走に満足し眠りにつこうとしたとき、異変に気付きます。
なにかがいる気配に加え、実際にかすかな物音がするのです。
カサカサカサ、、、
起き上がってみると、足元にはタイリポがいたのです。
「尾を返せ」
驚いた老人が猟犬たちを呼ぶと3匹は協力しタイリポを森へと追い払いましたが、戻ってきた猟犬は2匹だけでした。
それどころか間もなく、さきほどのカサカサという物音が聞こえます。
まさかと思い足元を見ると、そこにはタイリポの姿が。
「尾を返せ」
再び老人は猟犬を呼び、タイリポを森へと追い払いますが、戻ってきたのは1匹だけでした。
そしてまたもあのカサカサという音が、、、
老人は猟犬を呼び、三度 (みたび) タイリポを森へ追い払うことに成功しますが最後の猟犬も戻ってくることはありませんでした。
もうタイリポを追い払ってくれる猟犬もいません。
老人は布団に潜り込みただ無事に朝を迎えるのを待ちます。
先ほどまでのように追い払ってはすぐ現れるタイリポが現れるときのあの忌々しい音も聞こえてきません。
朝まであと数時間。
カサカサカサ、、、
「!」
老人はその音が猟犬が戻ってきた音であることを祈りながら布団からそっと顔を出します。
期待は無残にも裏切られました。
「尾を返せ」
老人はタイリポと対峙する覚悟を決めますが、タイリポに惨殺されたといいます。
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最後の描写はもっとえげつないものですが残酷なので省きました。
まあ怖い昔話といった感じでしょうか。
日本の昔話も残酷でトラウマ急に怖いものもありますからね。
タイリポの存在はネイティブから伝わる民間伝承かと思いきや、どうやらそうではなくヨーロッパの移民たちとアフリカ系アメリカ人それぞれにルーツがあるといわれています。
タイリポの話はアパラチアの山村での生活の不安、そして無意味な殺生に対する戒めが込められているといいます。
元になった動物は黒化個体のネコ科であればボブキャットやジャガー、イヌ科であればキツネやオオカミといったところでしょうか。
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