■干上がるミード湖、その湖底から現れるのは死体だけか? ~ ミード湖の怪物
今回は前回に引き続き、ミード湖の怪物(Lake Mead monster)。
前回は、フーバーダム周辺で古くから語られてきた巨大魚伝説や、エリア51と結びついた軍事実験説を紹介しました。
もちろん、現時点でそれらを裏付ける証拠は見つかっていません。
しかし、ミード湖の水位は今も下がり続けています。
つまり、これまで100年近く湖底に隠されてきた世界が、少しずつ人間の前に姿を現し始めているのです。
そして、最後まで隠されるものほど、人々の想像力を刺激します。
それでは、現在も語り継がれている最後の怪物伝説を見ていきましょう。
― 湖底から蘇った町 ―
前回も少し触れましたが、ミード湖の底にはセント・トーマス(St. Thomas)という町が眠っていました。
1930年代、フーバーダムの建設によってコロラド川の水位が上昇すると、この町はゆっくりと湖の底へ沈んでいきます。
人々は家を離れ、建物は水没し、やがて町そのものが歴史から消えました。
しかし近年の水位低下によって、その景色は再び砂漠の中へ現れます。
崩れた石壁。
教会の基礎。
道路の跡。
乾いた大地に点在する廃墟は、まるで時間だけが止まっていたかのようです。
現実には観光地として多くの人が訪れる場所ですが、その異様な光景は「水没都市」という言葉以上の不気味さを感じさせます。
そして、この町が再び姿を現した頃から、新たな都市伝説も語られるようになりました。
― 本当に恐ろしいのは「泥のフェーズ」 ―
水没都市の怪談では、町そのものより恐れられている場所があります。
それは、町を取り囲む黒い泥です。
湖が完全に干上がれば、地面はやがて乾きます。
しかし、その途中には長い「泥の時代」があります。
水でも陸でもない、中途半端な世界です。
海外のオカルトコミュニティでは、
「怪物が現れるなら、この時期だ。」
という話がたびたび語られています。
100年間、一度も太陽を浴びなかった泥。
そこには魚でもなく、両生類でもなく、何とも説明できない何かが潜んでいる。
そんな噂です。
中には、
「泥の中から人の腕のようなものが伸びていた。」
「目のない白い生き物が這っていた。」
「夜になると泥そのものが呼吸するように動いていた。」
といった都市伝説も存在します。
もちろん、どれも信憑性はありません。
ですが、「乾ききる前の泥が最も危険」という発想は、水辺の怪談としては非常に印象的です。
怪物は深海から現れるのではない。
最後まで湿った泥の中に身を潜めている――。
そんなイメージが、人々の恐怖をかき立てているのでしょう。
― ネオンの街が生んだ変異生物 ―
ミード湖には、もうひとつ現代らしい都市伝説があります。
ラスベガスです。
世界有数の歓楽街ラスベガスは、ミード湖を重要な水源のひとつとしています。
この地理的な近さから生まれたのが、「ネオン色の怪物」の噂です。
話によれば、長年にわたって流れ込んだ化学物質や排水の影響で、水中の生物が異常な進化を遂げたというもの。
ある者は巨大なナマズだったと語り、
またある者は、ワニのような姿だったと証言します。
しかし共通しているのは、その身体が青白く発光していたという点です。
夜の湖面にぼんやり浮かぶ蛍光色の背びれ。
暗闇の中でゆっくり動く二つの光る目。
まるでラスベガスのネオンが、そのまま生き物へ姿を変えたかのような怪物です。
科学的に考えれば、自然界には発光する淡水魚はほとんど存在せず、この話を裏付ける証拠もありません。
ですが、「人工湖」「歓楽街」「化学物質」という現代的な要素が組み合わさることで、この都市伝説は独特のリアリティを持っています。
― 湖底から現れる「本当の怪物」 ―
では、水位低下によって本当に何か未知の生物が現れる可能性はあるのでしょうか。
巨大魚。
軍の実験生物。
泥の怪異。
ネオン色の変異生物。
現時点では、どれも都市伝説の域を出ません。
一方で、現実に見つかっているものもあります。
沈没船。
ドラム缶に詰められた遺体。
白骨化した人骨。
水没した町。
そして、長年誰にも知られることなく湖底へ沈められていた数々の生活の痕跡です。
つまり、ミード湖は「怪物は見つかっていない」が、「想像以上のものは次々と見つかっている」という、極めて特異な場所なのです。
この現実が、かえって都市伝説へ説得力を与えています。
「ここまで見つかるなら、まだ何かあるのではないか。」
そんな期待が、新たな噂を生み続けているのでしょう。
― 100年という時間が育てたもの ―
怪物伝説は、単なる作り話だけでは長く語り継がれません。
そこには必ず、現実が持つ「余白」があります。
ミード湖の場合、その余白とは100年という時間でした。
100年間、誰も底を見ることができなかった湖。
100年間、町を飲み込み続けた水。
100年間、暗闇に閉ざされてきた世界。
その空白が、人々に怪物を想像させたのです。
ネス湖にはネッシー。
シャンプレーン湖にはチャンプ。
そしてミード湖には、巨大魚や軍の怪物が語られる。
湖が違っても、人間の心理は驚くほどよく似ています。
見えない場所には、何かがいる。
そう信じたくなるのです。
― 湖底のカウントダウンは、まだ終わらない ―
ミード湖は今も静かに水位を下げ続けています。
今年見えなかったものが、来年は姿を現すかもしれません。
来年見えなかったものが、10年後には砂漠の真ん中に横たわっているかもしれません。
それが、忘れ去られたボートなのか。
100年前の建物なのか。
あるいは、これまで誰も知らなかった巨大魚なのか。
誰にも分かりません。
ひとつだけ確かなことがあります。
これまで湖底から姿を現したものは、すべて「人間が沈めたもの」でした。
ですが、本当に人々が恐れているのは、そのさらに下です。
100年という時間が閉じ込めた暗闇の最深部。
そこに眠る最後の秘密は、まだ水の向こう側にあります。
そしてミード湖の水位が下がるたび、その秘密との距離もまた、少しずつ縮まっているのです。
UMA探しの旅は終わらない (国内外1000体以上のUMAが待っています)
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