■見た者に死が訪れる川の怪物 ~ テネシー・テラー(セクション1)
今回はテネシー・テラー(Tennessee Terror)。
アメリカ・テネシー州を流れるテネシー川に伝わる、全長6~7.6mにも達するといわれる巨大な水棲UMAです。
長い蛇のような身体に巨大な頭、そして水面から突き出す黒い背びれ。
しかし、この怪物が恐れられてきた理由は、その異様な姿だけではありません。
「テネシー・テラーを見た者は、やがて死ぬ」
そんな不気味な呪いまで、この怪物には付きまとっているのです。
― 巨大な身体と黒い背びれ ―
UMAではで珍しいことではありませんが、テネシー・テラーの姿にも、いくつかの異なる描写があります。
全長は20~25フィート(約6~7.5メートル)。
身体は細長く、蛇のような形をしている一方で、かなり幅があり、表面は滑らか、あるいはヌルヌルしていたといわれています。
そして、何より目立つのが背中に生えた巨大な黒いヒレです。
その高さは18インチ(約45センチメートル)から2フィート(約60センチメートル)ほど。
水面を進む巨大な身体から、黒い背びれだけが突き出していたといいます。
頭部は身体に対してかなり大きく、犬もしくは大型のイヌ科動物を思わせる形だったともいわれています。
さらに、ある伝承では背中が青く、腹側は黄色だったといいます。
つまり、典型的なシーサーペントとは少し違います。
蛇のように長い身体を持ちながら、頭部は大きく犬に似ており、その背中には巨大な魚を思わせる黒いヒレがある――
まるで複数の動物を組み合わせたようなキメラ系UMAといえます。
しかし、テネシー・テラーの最大の特徴は、身体的な恐ろしさだけではありません。
この怪物には、もうひとつの「恐怖」が伝えられています。
― 「テラー」という名前に隠された二重の恐怖 ―
「Tennessee Terror」という名前を直訳すれば、「テネシーの恐怖」といった意味になります。
もちろん、最も単純な意味では、テネシー川に現れる恐ろしい怪物ということです。
7メートルを超える巨大な身体。
犬のような巨大な頭。
そして、水面を切り裂く高さ60センチメートル近い黒い背びれ。
これだけの怪物なら、「Terror」と呼ばれても不思議ではありません。
ところが、テネシー・テラーという名前には、「もうひとつの恐怖」が重ねられています。
つまりはダブルミーニング。
それが、「この怪物を見た者は死ぬ」という伝承です。
1820年代の目撃談として伝えられている話では、怪物を目撃した人物が、その後まもなく死亡したとされています。
単なる危険な動物ではありません。
「遭遇した時点で、すでに死への運命が始まっている」
そう考えれば、Terrorという言葉は怪物そのものだけでなく、怪物を目撃することによって生じる恐怖まで意味することになります。
さらに、これは確認された語源ではありませんが、海外の怪談・UMAファンの間では、英語の「Terror」と「Teller」を掛けた解釈が語られることもあります。
Terrorは「恐怖」。
一方のTellerは、「物語を語る人」です。
つまり、
「怪物を見た者は、その話を語り、そして死ぬ」
という伝承から、「怪物の物語を語る者にも死が待っている」という言葉遊びを読み取るわけです。
これは歴史的に確認された名前の由来ではありません。
しかし、テネシー・テラーという怪物が単に「怖い姿をした生物」ではなく、「見たことを語ることさえ不吉」とされる怪談へ変化していったことを考えると、非常にテネシー・テラーらしい解釈ではあります。
そして、この「死の呪い」を象徴するような目撃談が、19世紀前半に残されています。
― 1822年、バック・サットンが見た怪物 ―
テネシー・テラーの最初期の目撃談として知られているのが、1822年の出来事です。
テネシー川沿いの「ヴァンズ・ホール(Van's Hole)」と呼ばれる場所で、バック・サットン(Buck Sutton)という農夫が釣りをしていました。
そこでサットンは、水中を移動する巨大な蛇のような生物を目撃しました。
その大きさは約25フィート(約7.5メートル)。
サットンは目撃した怪物について友人たちに話しました。
すると、その数日後、彼は死亡したといいます。
この出来事が、後にテネシー・テラーの「呪い」と結びつけられることになります。
もちろん、サットンの死亡原因や、この出来事が当時どのような記録として残されたのかについては不明な部分があります。
そのため、これをもって「怪物を見たために(そして人に話したために)死んだ」と断定するのは乱暴すぎます。
しかし、後世の伝承では、この偶然の一致こそがテネシー・テラーの恐ろしい特徴として語り継がれていきました。
― カヌーを襲ったテネシー・テラー ―
1827年には、ビリー・バーンズ(Billy Burns)という男性の目撃談が伝えられています。
バーンズはテネシー川をカヌーで渡っていたところ、巨大な生物に遭遇しました。
その大きさは、彼の乗っていたカヌーとほぼ同じ大きさでした。
怪物の背中は青く、腹側は黄色だったといいます。
そして怪物は、バーンズのカヌーへ突進してきました。
カヌーは大きく揺さぶられ、あやうく転覆するところだったといいます。
この出来事を知人に語った後、バーンズもまた亡くなりました。
時期は目撃した翌年の夏といわれており、これもまた後世の人々によって「呪い」の証拠として扱われました。
1822年のサットン。
1827年のバーンズ。
そして、その2年後にもまた同じような目撃談が登場します。
セクション2へ続く。
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