■殉職者の遺体を食べて巨大化した!? ~ フーバーダムの人喰いナマズ
今回はフーバーダムの人喰いナマズ(The Hoover Dam man eaters)。
― フーバーダム ―
まずはフーバーダム(Hoover Dam)がどんなダムであるか見ていきましょう。
フーバーダムの建設が始まったのは1931年。
世界恐慌の真っただ中でした。
職を失った数千人の労働者が、ネバダ州とアリゾナ州の境界、ブラックキャニオンに集められます。
夏場の気温は48.8℃を超える過酷な環境。
逃げ場のない谷底での重労働。
公式記録によれば、調査段階から完成直前までに命を落とした労働者は計112名にのぼります。
このダムは、コロラド川をせき止める重力式アーチダム。
当時としては世界最大級のコンクリート建造物でした。
内部には、硬化時の発熱を逃がすため、約937kmにも及ぶ冷却パイプが張り巡らされ、氷水が循環させられました。
完成までに使われたコンクリート量は、あまりに膨大です。
外観にはアール・デコ様式が採用され、内部には献納式当日の星空を再現した天体図まで描かれています。
国家の威信を賭けた「近代技術の象徴」。
それがフーバーダムでした。
― 殉死者はコンクリートに埋められた ―
この湖には多くの都市伝説が埋もれています。
それには理由があります、このダムの建造に関わった死者は112人にも及ぶ、という動かしがたい事実があるからです。
最も有名なものは、作業中に転落した労働者が、そのままコンクリートに埋められ、回収されなかったというもの。
結論から言えば、これは事実ではありません。
フーバーダムでは「ブロック工法」が採用されていました。
一度に流し込むコンクリートは、厚さわずか約2.5cm。
人間が沈み込むこと自体が物理的に不可能です。
また、遺体が内部に残れば構造的欠陥となり、水圧に耐えられなくなります。
厳格なエンジニアたちが、それを放置するはずもありません。
少なくとも公式記録上、遺体が回収できなかった殉死者はいない。
この点は明確に否定されています。
― 最初の死者と最後の死者 ―
フーバーダム建設において、最初と最後に命を落とした人物。
彼らは、実の親子でした。
父はJ.G.ティアニー。
ダム建設地の調査を行っていた測量士です。
1922年12月20日。
コロラド川の鉄砲水に巻き込まれ、溺死しました。
そして13年後。
1935年12月20日。
息子のパトリック・ティアニーが、取水塔から転落して死亡します。
電気技師助手として、完成直前の作業に就いていました。
同じ日付。
建設の最初と最後。
地元では、こう語られています。
「このダムは、ティアニー家によって始まり、ティアニー家によって終わった」
偶然として片づけるには、あまりに出来すぎた一致でした。
― ミード湖という巨大な墓場 ―
フーバーダムによって生まれた人造湖。
それがミード湖です。
現在では観光地として知られ、年間約700万人が訪れます。
しかしその水の下には、建設の歴史と共に、多くの死が沈んでいます。
近年、水位低下によって実際に発見されたのは、
ドラム缶に入れられたマフィアの遺体。
水没した車両。
行方不明者の痕跡。
「この湖には、死体が沈んでいる」
それは、もはや噂ではなくなりました。
― 人喰いナマズの目撃談 ―
ダムの底で作業を行っていたプロのダイバーが、フォルクスワーゲン・ビートルほどの大きさのナマズに遭遇した。
恐怖でパニックになり、二度と潜らなかった。
水難事故の遺体を捜索中、
巨大なナマズが、その遺体を飲み込もうとしていた――。
こうした証言は、必ず「目撃者付き」で語られ、一定の信憑性を人々へ与えました。
― 巨大ナマズの存在 ―
怪物がナマズであることにも、理由があります。
ナマズは底生魚。
光の届かない濁水の底で生きる存在です。
フーバーダムの取水口付近には、強力な水流があります。
そこに集まる餌。
逃げ場のない閉鎖環境。
「殉死者や水難事故の遺体を糧に、異常成長したナマズがいる」
そう言われても、不思議ではない条件が揃っているのです。
実際、この湖にはフラットヘッド・キャットフィッシュ(Pylodictis olivaris)やブルー・キャットフィッシュ(Ictalurus furcatus)、アメリカナマズ(Ictalurus punctatus)といった大型のナマズが生息しています。
特にフラットヘッド・キャットフィッシュやブルー・キャットフィッシュの最大個体は1.6メートル超、体重も60キロほどに成長します。
濁った湖底でそれに遭遇すれば、人はそれを「怪物」と呼ぶに違いありません。
そこが112人の死を抱え込んだ水底であるのだから――
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