■ビクトリア湖に棲む「角ある影」 ~ ルクワタ
アフリカ最大の湖――ビクトリア湖 (Lake Victoria)。
ウガンダ、タンザニア、コンゴ共和国にまたがるこの淡水の海には、古くから奇妙な影が棲むと伝えられています。
――その名は「ルクワタ (Lukwata)」。
現地の人々はそれを「船を襲う水の悪霊」と呼び、十九世紀の宣教師たちはその名を恐怖とともに記録しました。
それは、湖の底に沈んだ「太古の記憶」そのものなのかもしれません。
― ビクトリア湖という「内なる海」 ―
ビクトリア湖の表面積は約68,000平方キロメートル。
日本の琵琶湖のおよそ100倍――まさに「内陸の海」です。
その広さゆえ、水平線の彼方に陸影が見えず、初めて訪れた者が「海」と錯覚するのも無理はありません。
そしてこの広大な湖の深みで、古くから「正体不明の影」が目撃されてきました。
― 四角い頭をもつ「水の魔獣」 ―
古い民話によれば、ルクワタはイルカのような体を持ち、頭部は「四角い箱のよう」だったといいます。
肌は茶色く、腹は白――まるで淡水に棲むイルカのような配色です。
しかし時代が進むにつれ、ルクワタの姿は変貌しました。
首の長い竜のようなタイプ、蛇のようにくねるタイプ、さらにはカバにウシの角を生やした怪獣型まで。
どうやら「ルクワタ」とは、ビクトリア湖で見られたあらゆる「異形の水棲生物」をひとまとめにした呼称のようです。
― 巨蛇か、古代生物の残響か ―
報告される体長は3メートルから30メートル以上とまちまち。
中には「湖面を滑る長い影」や“水中で体をねじるような巨大な蛇”を見たという証言もあります。
こうした目撃の中で、有力な「地上起源説」として挙げられるのが、アフリカニシキヘビ (Python sebae) とナタールニシキヘビ (Python natalensis) です。
特にアフリカニシキヘビはアフリカ大陸最大のヘビであり、最大クラスの個体であれば7.5メートルに達することもある巨大種。
水辺を好み、泳ぎも巧みなため、ビクトリア湖の入り江や湿地帯で見間違えられても不思議ではありません。
アフリカの大蛇系UMAの正体としても常に筆頭候補に挙げられます。
一方で、「首長竜タイプ」の目撃例については、淡水に適応した「エラスモサウルス (Elasmosaurus)」の生存説が根強い人気です。
もちろん、恐竜と時代を共にした巨大海棲爬虫類が現代に――しかも淡水で生き残っている、というのは、ロマンの域を出ませんが――
さらに、「イルカタイプ」のルクワタは巨大ナマズや導入直後のナイルパーチを見誤った可能性もあるとされます。
当時、2メートルを超すナイルパーチは現地住民にとって未知の魚であり、まさに「怪物」に見えたことでしょう。
― 湖の闇に潜む「水の記憶」 ―
現在、ルクワタの存在を決定づける物的証拠は存在しません。
それでも、夜のビクトリア湖では不思議な音が聞こえるといいます。
「風のない夜に、水面が突然波立つ」
「暗闇の中で、何かが水を漕ぐ音がする」
それは風のせいか、魚の群れか――
あるいは、いまだ姿を見せぬ「水の魔獣」が静かに息づいている証なのかもしれません。
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