■火災を起こす糞尿を撒き散らすウシ ~ ボナコン
今回はボナコン (Bonnacon)。
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パエオニア王国にはにはボナスス (Bonasus) と呼ばれる野生動物が生息することが報告されている。
この動物は馬の鬣 (たてがみ) を有するが、その他は雄牛 (おうし) に似ている。
角は後ろに反り返っており、戦闘には役立たない。
そのため、ボナススは逃げることで身を守ると言われているが、その際、自らの排泄物を撒き散らすという。
排泄物は3ハロン (約600メートル) に渡ることがあるといい、その排泄物に触れるとまるで火であぶられたように焼け焦げるという。
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これは大プリニウスの「博物誌」でのボナコンの描写で、「パエオニア王国」とは現在の北マケドニアおよびギリシャ、ブルガリア南西部に跨るかつて存在した王国の名、そして「ボナスス」はボナコンの別称です。
ゴールド・アントの時にも軽く触れた中世の書物、「動物寓意譚 (どうぶつぐういたん)」にもボナコンは登場します。
動物寓意譚はキリスト教的道徳観や教訓を各々の動物たちに与えており、登場する動物たちは実際に存在するものからユニコーンやバシリスク等、想像上の動物たち、つまり幻獣も多く収録されます。
冒頭の「博物誌」の描写でも分かる通り、ボナコンは到底実在するとは思えず後者に属すると考えらます。
とても「動物寓意譚」に登場した動物とは思えないようなとんでもない性質で、一見すると、というかどう考えても、素人考えでは何らキリスト教的道徳観や教訓は持ち合わせていないように思えます。
ですがこのボナコン、この特徴にして実は見た目はそれほど突飛ではありません。
冒頭の「博物誌」で描写された通り、その姿は「馬の鬣を有する雄牛」です。
(ハイランド牛)
(image credit: Wikicommons)
ウシ自体、もともと糞尿回数の多い (14~15回とも) 動物であり、ウシ1頭の1日の糞尿の量は30キロにも達するといいます。
1日50キロ以上も食べるというのだからそりゃ当然です。
そういうわけで、ちょっと珍しい見た目のウシと、もともと糞尿の多いウシの特性がミックスされてボナコンが創造されたのかもしれません。
誤って糞尿をかけられ、運悪く傷口などについて感染症をおこし亡くなった人がいたのかも?
例えば毛皮を纏い耐寒性に優れたスコットランド原産のハイランド牛なんかは伝説を生むには十分な見た目のインパクトがあります。(但しハイランド牛の歴史は6世紀~であり、博物誌 (起源77年頃) よりもずっとあとですが)
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