■メダカだってゾンビ化! ~ ユーハプロルキス
最初に断っておくと、タイトルにメダカと書いてますが、実際はカダヤシです。
カダヤシはメダカと姿が酷似しているのでイメージが湧きやすいようにメダカと書いただけで、姿こそ似ているもののメダカはダツ目 (Beloniformes)、カダヤシはカダヤシ目 (Cyprinodontiformes) と目 (もく) すら違います。
さて今回は寄生虫、ユーハプロルキス・カリフォルニエンシス (Euhaplorchis californiensis) という吸虫です。
以前に紹介したディプロストムムとかなり似たライフサイクルを辿ります。
名前からも分かる通り、アメリカのカリフォルニアを拠点としています。
最終宿主は海鳥で、まずは海鳥の糞の中に含まれる卵からスタートです。
卵入りの糞がヘタナリの仲間、海洋性巻貝ケリシデオプシス・カリフォルニカ (Cerithideopsis californica) に食べられることで孵化することができます。
このユーハプロルキスの卵を食べた巻貝は不妊となります。
食べた時点で巻貝は次世代に子孫を残すことができなくなり、そのエネルギーを全てユーハプロルキスの幼生、セルカリア (ケルカリア) の生産に注ぎ込んでもらいます。
生きる屍第一号の作成成功です。
この巻貝が海鳥に食べられてはいけません、もう一段宿主を変える必要があります。
セルカリア軍事工場となった巻貝から毎日夥しい数のセルカリアがまき散らされます。
セルカリアは二股に分かれた尾を持つ非常に泳ぎに特化した幼体で、次なるターゲット、カリフォルニアカダヤシ (Fundulus parvipinnis) を目指します。
(カリフォルニアカダヤシ)
(image credit by Wikicommons)
いくら遊泳に特化しているとはいえ、自分たちより遥かに大きい魚に寄生するのは至難の業、それ故数で勝負です。
質より数で勝負し、なんとかカダヤシのエラに貼り付くことに成功すれば第二ステージです。
神経を伝って脳に辿り着くと、もはや泳ぐ必要がないので丸っこい樽型のメタセルカリア (メタケルカリア) へとモデルチェンジ、着々と大人の階段を上っていきます。
さてカダヤシに辿り着き、しかも脳に寄生しているのですから屍第二号の作成に取り掛かっているに違いありません。
しかし寄生されたカダヤシは見た目も行動も変わらず、長い間、ユーハプロルキスはいったいどういうマインドコントロールをしているのか分かりませんでした。
しかし寄生されたカダヤシとそうでないカダヤシを比較してみたところ、ジグザグな泳ぎ、身をよじって体を横向きにする、水面の近くに上がる、といった行動が寄生されたカダヤシでは4倍近くに跳ね上がっていることが分かりました。
どれも魚本来の動きであるため単体で見ていると分かりにくかったのです。
こういった目立つ行動を極端に増やすことにより捕食者の海鳥により見つけられやすくしていたのです。
つまりはカダヤシに自殺を誘引させていたのです。
これはドーパミンを過剰分泌させることにより興奮状態をつくっていたようです。
この目立つ行動を4倍に増やすことで、海鳥に食べられる確率は寄生されていないカダヤシのなんと30~40倍も高いことが分かっており、とても効率よく最終宿主の海鳥の体内へ取り込まれているようです。
海鳥の体内へと渡ったユーハプロルキスは成体へと成長し、海鳥の糞に卵を大量に混ぜ込みます。
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