■濁った川に潜む人魚 ~ マッド・マーメイド
今回はマッド・マーメイド (Mud Mermaid)。
直訳して「泥の人魚」ですね。
― 人魚像のギャップ ―
一般的に、人魚と言えば古今東西、お伽噺に登場する美男美女タイプを想像する人が多いでしょう。
しかしUMAファンなら、実際に目撃される人魚の多くは、美男美女どころかグロテスクな外観をしていることがほとんどであることを知っているでしょう。
見た目だけではなく、性質も残虐であることが多く、人や船を襲った、といった記録もあるほどです。
さて今回紹介するマッド・マーメイドも、お伽噺のような美男美女タイプではありません。
それに加え、「マーメイド = 美しい海」というイメージも定着していますが、マッド・マーメイドはその名からも推測できる通り、目撃されたのは川、しかも泥 (mud) のように濁った川です。
それでは、1894年10月21日号のオハイオの地方紙、アクロン・イブニング・タイムズ (Akron Evening Times) に掲載された、マッド・マーメイドの記事を見ていきましょう。
― 19世紀アメリカの新聞報道 ―
― 新聞が伝えた「泥の人魚」 ―
インディアナ州ヴェヴェイ近郊のオハイオ川の砂州に、奇妙な生物が二体棲息しているとの報告がある。その姿は不気味であり、外見も習性も異様であるという。
これらの生物は両生性で、大型のトカゲに人間の特徴を加えたような姿をしている。黄色みを帯びたオハイオ川の水に部分的に浸かると、その姿は人間に非常によく似て見えるという。
この生物の正確な種類は不明であり、近づいて観察することは極めて困難であるため、正確な判断はできない。
目撃地点となった砂州は、干潮時には巨大な丸太や切り株で覆われており、川沿いでは「スナッグ」と呼ばれる障害物である。これらは、河川の航路を維持するために政府の作業船が沈めたものである。水位が十分に上がると、これらのスナッグの間に生物たちは棲みつく。水位が下がると、生物たちは姿を消し、未知の巣穴で水位の上昇を待つと見られる。
観察者の報告によれば、これらの生物は肉食性のようである。スナッグの周囲には、貝殻や魚の骨など、動物の残骸が積み重なっており、川の水が引くと前の残骸は姿を消し、新たなものに置き換わるという。このことから、彼らがこれらの食物を生活の糧としていることがうかがえる。
ヴェヴェイ周辺でこれらの生物が初めて目撃されてから、すでに約四年が経過しているという。
― ニュース記事の信憑性 ―
新聞の記事にもなったのだから確実!?
UMAであれば、願いを込めて信じたいところです。
しかし、19世紀末~20世紀初頭には、アメリカの新聞で創作されたUMA (未確認生物) 記事が紙面を賑わせていた、という事実があり、新聞記事だからと言って鵜呑みにできないケースもままあります。
マッド・マーメイドはどうでしょう?
空飛ぶ巨大なドラゴンや翼竜系の記事であれば、これは大方創作だろう、と即刻、実在性は却下できます。
しかしマッド・マーメイドは、「至近距離での確認ができない」という、うまい逃げ口上 (?) があるため、その姿を想像するのが難しく、幾ばくかの実在性を期待したくなります。
― 正体の仮説 ―
この新聞記事には掲載されていませんが、一説には体長1.2メートルと小柄で、四肢の指先には水かきをもつといい、完全に水中生活に適応していたようです。
敢えて実在する生物を候補に挙げるとすれば両生類ヘルベンダー (アメリカオオサンショウウオ, Cryptobranchus alleganiensis)、もう少し現実的なところではアメリカビーバー (Castor canadensis) やカナダカワウソ (Lontra canadensis) といったところでしょうか。
しかし新聞の記事の「これらの生物は両生性で、大型のトカゲに人間の特徴を加えた」という描写から伝わってくるイメージは、近代から現在にかけても稀に目撃される、爬虫類系のヒューマノイド、リザードマン的な存在が近いかもしれません。
― そして怪物は消えた ―
マッド・マーメイドは、創作UMAが盛んだった19世紀末~20世紀初頭に多く目撃されていたものの、その後はぱたりと報告が途絶えてしまったようです。
創作記事の盛衰と共に現れ消えたことは、マッド・マーメイドが創作であったことを示唆するものなのか、それともそれは偶然――
人間たちの目のふれない安住の地へ移動し「濁った水」に身を潜めているだけかもしれません。
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