■バラ色の角を持つ幻の小さなヤギ ~ ドメネク・スード・ゴート
今回はドメネク・スード・ゴート(Domenech's Pseudo-goat)。
「ローズホーン・クロード・ゴート(バラ色の角を持つ鉤爪のヤギ)」とも呼ばれる、アメリカ・テキサス州で報告された奇妙なUMAです。
ヤギのようでヤギではない、その異様な姿は現在でも未確認動物学の世界でたびたび話題になります。
― 宣教師が目撃した奇妙な動物 ―
この生物を記録したのは、フランス人宣教師エマニュエル・ドメネク(Abbé Emanuel Domenech)。
1850年代、テキサス州フレデリックスバーグ周辺で布教活動を行っていた彼は、ある日、コマンチ族の女性が連れていた奇妙な動物を目撃しました。
その女性は非常に大切そうにその動物を飼育しており、高額な報酬を提示されても決して手放そうとはしなかったといいます。
ドメネクはその姿を詳細に記録し、後に「ドメネク・スード・ゴート」として知られるようになりました。
― ヤギなのに蹄がない ―
ドメネクの記録によると、その生物は猫ほどの小さな体格でした。
全身は雪のように白く、絹糸のような光沢を持つ美しい毛で覆われています。
頭には鮮やかなバラ色の角が2本生えており、見た目は小型のヤギによく似ていました。
しかし最大の特徴は足です。
ヤギなら当然あるはずの蹄ではなく、鋭い鉤爪を備えていたのです。
この一点だけでも既知のウシ科やヤギの仲間とは大きく異なります。
― カリコテリウムの生き残りか ―
(カリコテリウム)
(image credit: Wikicommons)
この奇妙な特徴に注目したのが、著名な未確認動物学者、カール・シューカー博士です。
博士は、この生物が中新世に生息し絶滅したとされる有蹄類「カリコテリウム(Chalicothere)」の生き残りではないかという大胆な仮説を提唱しました。
カリコテリウムは草食動物でありながら蹄ではなく巨大な鉤爪を持ち、それを使って木の枝を引き寄せて葉を食べていた非常に特殊な動物です。
もちろん化石から知られるカリコテリウムは大型動物であり、猫ほどのサイズではありません。
しかしシューカー博士は、北米の奥地で小規模な個体群が独自に小型化して生き延びていた可能性まで視野に入れて考察しています。
また、絶滅したノトウングラタ類や未知のウシ科動物ではないかという説も唱えられています。
― 本当に存在したのか ―
一方で、この記録そのものを疑問視する研究者も少なくありません。
ドメネクは先住民文化や北米各地について、やや誇張気味の記録を残したことで知られており、この生物についても意図的な脚色や勘違いだった可能性は十分考えられます。
ただしシューカー博士は、「誇張癖があったからといって、すべてが創作とは限らない」と指摘しています。
現代人でも未知の動物を目にすると、知っている動物に例えて説明することがあります。
シューカー博士は、ドメネクも実際に見た正体不明の動物を、最も近い印象を受けた「ヤギ」と表現しただけだった可能性もあると考えています。
― 今も残る小さな謎 ―
白い絹のような毛並み。
バラ色の角。
そして蹄ではなく鉤爪。
この3つの特徴を同時に備える動物は、現在知られている哺乳類には存在しません。
たった一度だけ記録された小さな「偽のヤギ」は、奇形の家畜だったのか、それとも絶滅した古代動物の最後の生き残りだったのか。
1850年代のテキサスでコマンチ族の女性が大切に育てていたその不思議な生き物は、今もクリプティッド研究者たちの想像力を刺激し続けています。
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