2025年9月14日日曜日

ダーウィンもその存在を信じた未知の猛獣 ~ グラン・ベスティア


■ダーウィンもその存在を信じた未知の猛獣 ~ グラン・ベスティア

「『グラン・ベスティア』と呼ばれる生物がいる。

まだ生後数か月しか経っていないが体高は1.2メートルもある。

非常に獰猛であるため、鎖で繋がれていた。

全体的にブタに似るが、蹄の代わりに大きなかぎ爪がある。

鼻もブタに似るが、はるかに長い。

もう少し成長すれば馬や牛をも容易に捕らえ連れ去ることができるだろうといわれていた」
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今回はグラン・ベスティア (Gran bestia)。

グラン・ベスティアは1930年代、ダーウィンのビーグル号での航海 (1831年~1836年) において、パラグアイのタナグン (Tanagung) で目撃されたというUMAです。

地名のタナグンについては全く情報がないので、パラグアイのどのあたりかは分かりません。

さて、グラン・ベスティアのうわさを聞き、かのチャールズ・ダーウィンはグラン・ベスティアの実在を完全に信じたわけではありませんが、少なくとも状態のいいメガテリウム (Megatherium) の骨格標本が存在するに違いないと信じました。(標本からグラン・ベスティアがあたかも存在しているように広まった)

(メガテリウムの全身骨格)
(original image credit: Wikicommons)

冒頭の日記は、ビーグル号の艦長を務めたロバート・フィッツロイ氏が日記に記していたもので、実際に目撃したのは彼ではなく、アルゼンチンのエントレ・リオス州出身のバイア・ブランカ駐屯地司令官ロドリゲス氏です。

若かりしダーウィンはこの一報を受け、この一報をそのまま信じようとはしなかったようですが、少なくともロドリゲス氏は実際に目撃しているような感じにフィッツロイ氏に伝えているのが気になるところです。

ただの地元住民たちからの伝聞だけではなさそうな雰囲気が伝わってきます。

「生後数か月」というのは明らかに地元住民からの伝聞と思われますが、それ以外に関しては実物を見たような表現となっています。

話を聞いたフィッツロイ氏も、ロドリゲス氏がなんらかの未知、もしくは希少種を目撃したのは確かなのでは?と思っているようです。

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「私はこの話を聞きロドリゲスが『アメリカバク』を目撃したに過ぎないと考えている。

但し、彼はその生物が希少種であり、獰猛な肉食獣と主張し続けていた。

それが正しいとすればアメリカバクには当てはまらない」

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「生後数か月で体高1.2メートル」も信用すれば成体は相当の大きさに成長したに違いありません。

確かにその姿は絶滅したメガテリウムのような巨大陸棲ナマケモノを豊富とさせます。

(アメリカバク)
(image credit: Wikicommons)

このビーグル号の航海で、ダーウィンはメガテリウム、ミロドン (Mylodon) 、グロッソテリウム (Glossotherium) 等、巨大ナマケモノの標本を得ていたことから、南米大陸には陸棲の巨大ナマケモノが実在する、幾ばくかの期待は込められていたかもしれません。

まぁ現在でもUMA的には地上棲巨大ナマケモノ生存説は健在ですから、今から200年以上前ならなおさらです。

そうはいってもこの「獰猛な肉食獣」に関しては当時のセオリーでも巨大ナマケモノには当てはまらず、ダーウィンは「大きなかぎ爪」を目撃したロドリゲス氏が、そこから「肉食獣に違いない」と連想したに過ぎないと考えたようです。

では僅か200年前までは巨大ナマケモノは細々と生きていたのか?

もしそうであれば現在でも生きている可能性が十分考えられます。

ロマン溢れますね~

(オオアリクイ)
(image credit by Wikicommons)

もう一度ロドリゲス氏の「目撃談」を見てみましょう。

ブタに似た鼻 (吻)、しかし豚よりもはるかに長い、蹄ではなく大きなかぎづめを有している、(生後数か月は無視して) 体高は1.2メートル。

大きなかぎ爪から獰猛さを感じ取り、肉食動物と思ったくだりなんかを考慮すると、もしかして疥癬に罹って毛を失った成体のオオアリクイ (Myrmecophaga tridactyla) を見たのかもしれませんね。

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