■フィリピンの森に潜む木の精霊のような怪物 ~ アグタ
今回はアグタ(Agta)です。
フィリピン、東ビサヤ地方の伝承に登場する、人知を超えた存在です。
アグタはカプレに似た性質を持つとされ、森や大木に棲むと伝えられています。
― 高身長の樹上生活者 ―
目撃証言や伝承によれば、アグタは背の高い人型の姿をしています。
皮膚は濃い色で、森の影に溶け込むかのような外見です。
彼らは主にサントまたはバレテの樹に住み、地上よりも樹上での活動が目立ちます。
多くの描写では裸に近い姿で、巻き葉巻を咥えて煙をくゆらせるとされています。
― 人間を惑わす存在 ―
アグタは人間に悪戯を仕掛けることがあると伝えられます。
花を使って女性を誘い、時には攫うとも言われます。
漁師に対しては、海に出るのを避けるよう警告する習性があるとされ、警告を無視すると、樹を倒して海岸を塞ぐなどの行動も報告されています。
そのため、古くから人々はアグタに出会った際の護身法として、水銀を入れた瓶を携帯するとよいと伝えています。
― 1957年、マスバテでの目撃 ―
フィリピンの民俗学者マキシモ・ラモスによると、1957年、バリオ・パラナス(マスバテ州)の小道で、ヴィルジニア・タグルコップとその姉妹がアグタを目撃しました。
サントルの木の下に座っていたアグタが、二人に向かって歩いてきたため、二人は逃げたと報告されています。
ヴィルジニアはまた、夜8時から翌朝4時までの間に、サントルの木の下で煙草を吸うアグタを見たこともあると語っています。
― 森に潜む、人知の境界 ―
アグタの姿や行動は、その特性から単なる伝承の産物と考えるのが自然でしょう。
しかし複数の目撃証言や、樹上に潜む高身長の存在、巧妙な人間への干渉は、未知の生物あるいは人間の認知のズレによる存在である可能性も示唆します。
今日も東ビサヤの森では、アグタの気配が人々の記憶と森の影の中にひそやかに残されているのです。
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