■謎の島で目撃された謎の怪物 ~ ヘンダーソン・アイランド・モンスター
今回はヘンダーソン・アイランド・モンスター(Henderson Island Monster)。
1893年7月3日付けのタコマ・デイリー・レジャー紙(Tacoma Daily Ledger)に掲載された怪物です。
― ヘンダーソン・アイランド ―
タコマ・デイリー・レジャー紙は1880年に週刊紙として創刊され、1937年まで続いた朝刊紙です。
その後、幾度か名前や形態を変え、現在でもニュース・トリビュート紙(The News Tribune)として残っています。
そんな歴史ある新聞が報じたのがヘンダーソン・アイランド・モンスターです。
ひとつ目の謎はヘンダーソン島(Henderson Island)です。
アメリカ、ワシントン州のピュージェット湾(Puget Sound)内にある島だといいますが、そのような名を持つ島は歴史上存在しません。
しかし、この湾内には大小さまざまな700以上の島が存在するため、130年以上も前の話であり、名称が変わった可能性は十分考えられます。
あるいは、タコマからほど近いアンダーソン島(Anderson Island)の誤記であった可能性も指摘されています。
いずれにしても、この怪物事件は「場所そのものが曖昧」という、奇妙な前提から始まります。
― 怪物との遭遇 ―
事件当日、数名の男たちが釣りのため島の近海に出ていました。
同じ海域には、測量作業を行っていた調査隊の一行もいたといいます。
そのとき、海上に突然、異様な轟音が響き渡りました。
直後、水面が強烈な光で照らされ、同時に電流のような衝撃が周囲の水を走ります。
何が起きたのか確かめようと水に触れた2人の男は、瞬時に気絶してしまいました。
光の発生源は、すぐに姿を現します。
それは水面下から浮かび上がった巨大な物体でした。
目撃者によれば、その全長はおよそ150フィート(約45メートル)、胴の最も太い部分は30フィート(約9メートル)にも達していたといいます。
頭部はセイウチのそれを思わせる形状で、しかしはるかに巨大でした。
顔には6つの目があったと証言されています。
その配置については、正面に並んでいたとも、左右に3つずつ並んでいたとも語られています。
どれも鈍い光を宿した大きな目だったといいます。
さらに不可解なのは、その身体構造でした。
胴体には銅の帯のような輪がいくつも巻き付くように見え、そこから電気のようなエネルギーが放たれていたと証言されています。
頭部には角のような突起があり、そこから電気を帯びた水を噴き出したとも語られました。
そして尾の代わりに、回転するプロペラのような器官が備わっていたといいます。
怪物はしばらく海面近くを漂ったのち、再び水中へと潜りました。
しかし不思議なことに、体から放たれていた光だけは、水面の下でもしばらく見え続けていたそうです。
― 生物か、機械か ―
この奇妙な目撃談に対して、後年いくつかの解釈が提示されています。
有名な未確認動物研究家ローレン・コールマン(Loren Coleman)は、この存在を「未知の潜水装置」であった可能性を指摘しました。
つまり、U.S.O.(Unidentified Submerged Object)、生物ではなく、正体不明の未確認潜水物体だったのではないかという説です。
確かに、電気を放つ帯や回転するプロペラという描写は、生物というより機械の特徴に近いものです。
しかし問題は、これが1893年の出来事だという点です。
電動潜水艇の研究はこの時代にも存在していましたが、目撃証言にあるような巨大で発光する未知の機械が、ピュージェット湾の一角に現れるというのは、あまりに突飛です。
実際、1897年に建造されたアメリカ軍初の潜水艇ホランド(Holland VI)でも全長は19メートル、それより一足先、1888年に建造されたフランス海軍のジムノート(Gymnote)も18メートルと大きさは半分以下です。
しかも、現場にいた人々は口をそろえて「生き物のように動いていた」と証言しています。
― 誰も知らない怪物 ―
ヘンダーソン・アイランド・モンスターは、その後一度も報告されていません。
島の名も曖昧で、事件の詳細も新聞記事以外にはほとんど残っていません。
まるで、存在そのものが記録の隙間に沈んでしまったかのようです。
もし目撃談が事実だったとすれば、それは巨大な未知生物だったのか。
あるいは、19世紀にはありえないはずの、秘密裏に建造されていた潜水艇だったのか。
真相は分かりません。
ただ確かなのは、1893年の夏、ピュージェット湾のどこかで、数人の男たちが「説明のつかない何か」を目撃したという記録が残っていることだけです。
[参照サイト]
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