2024年10月28日月曜日

ヤギの血を吸うもの ~ チュパカブラ


■ヤギの血を吸うもの ~ チュパカブラ

メジャーなUMAは後回しにしているため、いまさらながらチュパカブラ(Chupacabra)の紹介です。

UMAファンにはもうお馴染み、現代UMAを代表する根幹的な存在のひとつですので、今回は要点を絞って軽く触れていきます。

チュパカブラはプエルトリコ発のヒューマノイド系UMAで、スペイン語で「ヤギの血を吸うもの」を意味します。

英語圏では直訳してゴート・サッカー(Goat sucker)という異名もありますが、海外ではチュパカブラのほうが圧倒的に一般的です。

― 1995年、ヤギの血を吸う怪物が現れた ―


チュパカブラの名が世界に知られるようになったのは1995年。

3月、プエルトリコで8頭のヒツジが血を抜かれた状態で発見され、胸部には奇妙な3つの刺し傷が残されていました。

この事件が、現在知られているチュパカブラ伝説の出発点とされています。

その後も家畜の不可解な死が相次ぎ、1995年中には1000件以上の動物の死亡がチュパカブラの仕業とされたともいいます。

そして、この怪物の姿を決定づけたのが目撃者マデリーン・トレンティーノ(Madelyne Tolentino)です。

彼女が目撃したとされる生物は、後に広く知られる「元祖チュパカブラ」のイメージそのものでした。

― 元祖チュパカブラは爬虫類型 ―


(日本製のチュパカブラの食玩フィギュアを見れば一目瞭然)
(コレクト俱楽部七不思議編 UHA味覚糖製)

(月刊ムー監修 株式会社ハート製)

(ブリスターがそのままディスプレイになります)

(飛び抜けて精度の低い (笑) チョコエッグキッズ フルタ製)

中南米で語られるチュパカブラは、二足歩行する爬虫類といった姿をしています。

体長は0.9~1.5メートルほど。

全身を緑色や灰色の鱗、あるいはゴムのような皮膚が覆い、四肢には大きなカギ爪を備えています。

頭頂部から背中、さらに尾にかけて鋭く尖ったトゲが並び、身体に比してやや大きめの頭部には、爬虫類を思わせる大きな赤い目があるとされます。

口からは巨大な犬歯が覗き、ヘビやトカゲを思わせる二股に分かれた舌を持つという証言もあります。

後肢はカンガルーのように発達しており、二足歩行だけでなく驚異的な跳躍力を持つとされます。

なかには約6メートルも跳躍したという話まであり、木々の間を飛び跳ねるように移動する姿が目撃されています。

また、前肢と胴体がコウモリのような薄い被膜でつながっているという証言もあります。

ただし、翼というほど大きなものではなく、跳躍の補助や高所から飛び降りた際の滑空、着地時の衝撃を和らげるための器官ではないかと考えられています。

さらに、鳴き声は「シャーッ」という威嚇音や甲高い悲鳴のような声とされ、強い硫黄臭を発していたという証言まであります。

まるで、爬虫類と獣脚類とコウモリを混ぜ合わせたような生物です。

― ところが北米では「犬」になった ―


(典型的な北米版チュパカブラ)
(original image credit: MONGABAY)

ところが21世紀頃を境に、チュパカブラの目撃場所が北米へ広がっていくと、その姿は大きく変化します。

こちらは完全にイヌ科動物を思わせる四足歩行の生物。

写真や死骸も数多く報告されていますが、一般的には痩せこけ、毛がほとんどなく、青黒色から灰色がかった皮膚をしています。

長い鼻、大きな耳、突き出た眼窩などが特徴で、見た目だけなら病気になった大型のイヌといったところです。

そして、この北米版チュパカブラについては、かなり現実的な正体が考えられています。

それが、疥癬などの皮膚病に罹患して毛が抜け落ち、やせ細ったコヨーテCanis latrans)などのイヌ科動物です。

実際、アメリカでは「チュパカブラ」として捕獲・射殺された動物を調査したところ、コヨーテとイヌの交雑個体で、疥癬や寄生虫に感染していたという事例もあります。

2008年にはテキサス州で、警察官が道路脇を走る毛のない奇妙な動物を撮影した映像も話題になりました。

こちらもコヨーテなどのイヌ科動物ではないかと考えられています。

― なぜ同じ「チュパカブラ」なのか? ―


ここがチュパカブラの非常に面白いところです。

中南米で目撃されるチュパカブラと、北米で目撃されるチュパカブラは、あまりにも姿が違います。

前者は爬虫類型のヒューマノイド。

後者は毛のないイヌ科動物。

本来なら別々のUMAとして扱ってもよさそうなものです。

しかし、どちらも「家畜を襲う謎の生物」という一点で結びつき、同じチュパカブラという名前で呼ばれるようになりました。

UMAには、こうした「目撃情報がひとつの怪物へ集約されることで姿が変化していく」現象がしばしばあります。

― すべての「目撃」が目撃ではない? ―


(タテガミオオカミ)
(image credit : Wikicommons)

そもそもチュパカブラには、もうひとつ注意すべき点があります。

世界中から何千件もの目撃情報が寄せられているとされますが、そのすべてが「実際にチュパカブラを見た」という意味ではありません。

家畜やペットの惨殺死体が発見される。

原因が分からない。

すると、その付近で目撃された動物まで「チュパカブラ」としてカウントされる。

このような形で情報が積み重なっていった可能性があります。

実際、家畜の死体を発見した際、その周囲にいた野生動物が犯人とは限りません。

たまたま近くを通りかかっただけの動物でさえ、チュパカブラのイメージを構成する材料になってしまうわけです。

こうして、ピューマPuma concolor)、ジャガーPanthera onca)、ジャガランディHerpailurus yagouaroundi)といったネコ科動物、タテガミオオカミChrysocyon brachyurus)やコミミイヌAtelocynus microtis)、カニクイイヌCerdocyon thous)、ヤブイヌSpeothos venaticus)などのイヌ科動物まで、さまざまな既知動物が「チュパカブラの正体」として取り込まれていったのかもしれません。

なかでも面白いのが、巨鳥レアRhea americana)です。

(レア)
(image credit : Wikicommons)

「二足歩行し、翼を持つ怪物」という先入観を持った状態で、夜間に遠くからシルエットだけを見たなら、巨大な鳥を未知の怪物と誤認する可能性も十分にあります。

もちろん、これはあくまで既知生物の誤認を考えた場合の一例です。

すべてのチュパカブラ目撃談を既知動物の誤認として片づけられるわけではありません。

― そして「本物のチュパカブラ」は残る ―


北米版については、疥癬に感染したコヨーテなどでかなりの部分が説明できます。

しかし、1995年のプエルトリコで語られた、あの爬虫類型チュパカブラについてはどうでしょうか。

目撃証言は後から別の目撃情報と混ざり合い、家畜の死体にはさまざまな原因が考えられます。

それでも、あの奇妙な姿だけは30年以上経った現在もUMAファンの記憶に残り続けています。

チュパカブラという名前が生き残ったのは、単純に「ヤギの血を吸う怪物」という設定が強烈だったからだけではありません。

目撃されるたびに姿を変え、既知の動物を取り込みながら、それでもなお「本物のチュパカブラ」の輪郭だけが消えずに残っている。

もしかするとチュパカブラとは、1種類の生物ではなく、人間が「説明できない動物」をひとつの怪物へまとめ上げてしまう、その過程そのものなのかもしれません。

とはいえ、UMAとしてはやはり、いつか決定的な映像が撮影されることを期待したいところです。

そのときカメラに映るのは、疥癬に苦しむコヨーテなのか、それとも――1995年から姿を変えずに生き残ってきた、あの爬虫類型の怪物なのでしょうか。

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