■羊ほどの大きさを誇る黒い怪鳥 ~ バッジズ・ブラック・バード
今回はバッジズ・ブラック・バード(Bagge's Black Bird)。
アフリカ・ウガンダの霧深い高山で目撃された、羊ほどの大きさを持つとされる謎の巨鳥です。
目撃例はただの1度だけですが、その舞台や目撃者の信頼性も相まって、現在でもアフリカの未確認生物の1つとして語り継がれています。
― スティーブン・ソールズベリー・バッジ ―
この怪鳥の名は、イギリス人行政官スティーブン・ソールズベリー・バッジ(Stephen Salisbury Bagge)に由来します。
バッジは1890年代、イギリス保護領となったウガンダの行政官として赴任し、後には地方行政長官なども務めた人物です。
現地住民との関係を重視した誠実な官僚として知られ、引退後には考古学者として大英博物館へ数多くの遺物を寄贈したことでも知られています。
怪鳥を直接目撃したのは彼自身ではありません。
1898年、ルウェンゾリ山脈を調査中、同行していた現地ガイドが奇妙な巨大鳥の群れを目撃し、その報告が記録として残されたことから、この名で呼ばれるようになりました。
― 「月の山脈」と呼ばれる秘境 ―
目撃地点はウガンダ西部、ルウェンゾリ山脈のスペケ山南麓にあるブジュク湖付近。
標高約4000メートル近い高山地帯です。
この一帯は「月の山脈」とも呼ばれ、年間を通して濃い霧に包まれています。
氷河が削り出した谷には湖や湿原が点在し、巨大ロベリアや巨大キオンといった数メートルにも達する奇妙な高山植物が生い茂る、まるで異世界のような景観が広がっています。
現在でもアフリカ屈指の秘境として知られる場所です。
― 羊ほどもある黒い怪鳥 ―
現地ガイドが目撃した怪鳥には、いくつかの特徴が伝えられています。
全身は漆黒の羽毛に覆われ、体の大きさは羊ほど。
さらに危険を察知すると、牛がうなるような低く重い警戒音を発したといいます。
しかも目撃されたのは単独ではなく、複数羽の群れでした。
これ以降、公的な目撃報告は確認されておらず、その正体は現在も謎のままです。
― 正体はシロエリオオハシガラスか ―
(image credit: Wikicommons)
バッジズ・ブラック・バードについては現生鳥類でいくつかの候補が挙げられています。
一例を挙げれば、カンムリクマタカ(Stephanoaetus coronatus)やゴマバラワシ(Polemaetus bellicosus)、そしてシロエリオオハシガラス(Corvus albicollis)等です。
その中で最も有力視されているのがシロエリオオハシガラスです。
この大型のカラスはウガンダの高山地帯に普通に生息し、ルウェンゾリ山脈も分布域に含まれています。
群れを作る習性もあり、標高約2700メートル付近で複数羽が確認されたという証言とも一致します。
実際の体長は50センチほどですが、濃霧や急峻な谷では距離感が狂いやすく、翼を広げて飛ぶ姿は実際以上に巨大に見えることがあります。
また、シロエリオオハシガラスは非常に太く低い鳴き声を持ち、遠くから聞けば牛のうなり声のように感じられた可能性も考えられています。
アフリカではカラス類は知恵や祖先の使者として語られる地域も多く、不気味さと神聖さを併せ持つ存在として扱われてきました。
― 未知の猛禽類だった可能性 ―
もちろん大型のワシ類が誤認された可能性もあります。
カンムリクマタカやゴマバラワシらもアフリカを代表する巨大猛禽で、特にゴマバラワシは翼開長2メートルを超えることもあります。
しかし、いずれも生息環境や行動には目撃証言と一致しない点があります。
カンムリクマタカは森林性で、高山の岩場で群れることはほとんどありません。
一方、ゴマバラワシはサバンナを主な生息地としており、霧に包まれたルウェンゾリ山脈の高地で見られることは極めて稀です。
そのため現生鳥類で説明するならハジロガラスが最有力候補ですが、証言のすべてを完全に説明できるわけでもありません。
霧に閉ざされた「月の山脈」のどこかに、まだ人類の知らない大型猛禽類がひっそりと生き残っている――。
そんな想像をしてしまうのも、このバッジズ・ブラック・バードというUMAならではの魅力なのかもしれません。
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