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2026年7月4日土曜日

新聞にも掲載された犬殺しの巨獣 ~ マスタートン・モンスター


■犬を殺した謎の獣 ~ マスタートン・モンスター

今回はマスタートン・モンスター(Masterton Monster)。

1883年5月9日付けのニュージーランド・タイムズ紙(New Zealand Times)に掲載された、奇妙な未確認動物の記録です。

― ルアマハンガ川の怪物 ―


事件の舞台はニュージーランド北島、ワイララパ地方。

ルアマハンガ川(Ruamahanga River)周辺で、奇妙な生物が目撃されたといいます。

その姿は新聞記事の中で、わずかな言葉で説明されています。

幅広い鼻面。
短い脚。
そして縮れた体毛。

この生物は川の近くで目撃され、半水棲の動物であった可能性が高いと考えられています。

当時の住民は、この正体不明の獣を非常に危険なものと判断しました。

家畜への被害を恐れた彼らは、猟犬を放ってこの生物を追わせたのです。

― 犬との戦い ―


猟犬の群れはすぐにその獣を発見しました。

しかし、結果は人々の想像とはまったく違うものでした。

最初に接触した犬は、怪物に襲われ、激しく引き裂かれてしまいます。

記事では、その犬が「flayed(皮を剥がされた)」と表現されています。

非常に残酷な描写ですが、それほど激しい攻撃だったのでしょう。

この一撃で、残りの猟犬たちは戦意を失いました。

群れは一斉に逃げ出し、尻尾を巻いて退散したといいます。

怪物の姿は、そのまま川辺から消えました。

新聞記事は、この出来事を簡潔に報じたところで終わっています。

― 正体は何だったのか ―


記録に残る特徴は、わずか三つです。

幅広い鼻。
短い脚。
縮れた体毛。

この描写から、多くの研究者はこの生物を哺乳類であった可能性が高いと考えています。

縮れた体毛という特徴から、研究者の中にはこの生物を巨大なカワウソのような動物だったのではないかと考える者もいます。

実際、ニュージーランドには「ワイトレケ(Waitoreke)」と呼ばれるカワウソ型のUMAの伝承も存在しています。

もっとも、この説を裏付ける証拠はなく、あくまで想像の域を出ません。

ただし問題があります。

ニュージーランドには、もともと陸生哺乳類が存在しません。

在来種はツギホコウモリMystacina tuberculata)、オオツギホコウモリMystacina robusta)、そしてミゾクチコウモリChalinolobus tuberculatus)のコウモリ3種だけです。

しかし、この事件では人々が猟犬を放っている――

― マオリの犬の正体 ―


実は13世紀にポリネシア系先住民マオリがニュージーランドに到達した際、犬(クリ/kuri)は既に持ち込まれています。(偶発的にナンヨウネズミRattus exulans)も)

また、19世紀には欧州からの移住者たちもシープドッグや猟犬を持ち込んでおり、さらに事件の起きた1883年時点で、ポッサム(1837年~)、ワラビー(1870年~)等がオーストラリアから導入されていました。

つまり、この時代には既に外来の陸生哺乳類が存在しており、完全に「哺乳類のいない島」ではなくなっていたのです。

しかし、見慣れた犬(クリ)を誤認するはずもなく、ポッサムもワラビーも犬を殺すほど獰猛な生物ではありません。

つまり、この事件が起きた1883年当時、現地に存在するはずのないタイプの動物が目撃されたことになります。

― 忘れられていた怪物 ―


この奇妙な事件は、長くほとんど知られていませんでした。

再び注目されるのは1931年。

怪奇現象の収集家として知られるチャールズ・フォート(Charles Fort)が、自身の著書『Lo!』の中でこの新聞記事を紹介したためです。

フォートは当時の新聞記事を引用し、次のように簡潔にまとめています。

未知の生物が出現し、猟犬が放たれ、
一匹が殺され、残りは逃げ出した――

ただそれだけの出来事です。

しかし、この短い記録が「マスタートン・モンスター」という名前を世界に残しました。

― ニュージーランドの失われた哺乳類 ―


興味深いことに、ニュージーランドでは近年、古代の哺乳類化石が発見されています。

セント・バサンズ哺乳類(St. Bathans mammal)と呼ばれるその動物は、およそ1500万年前にこの地に生息していたと考えられています。

もちろん、マスタートンの怪物と直接関係があるわけではありません。

ただ、この国が完全に「哺乳類のいない島」だったわけではないという事実は、想像の余地を少しだけ広げてくれます。

― 川辺の影 ―

(ミナミゾウアザラシ)
(image credit : Wikicommons)

マスタートン・モンスターとして最もあり得そうなものはアザラシ等の鰭脚類(ききゃくるい)たちでしょう。

その場合、ニュージーランドオットセイArctocephalus forsteri)、ニュージーランドアシカPhocarctos hookeri)、ミナミゾウアザラシMirounga leonina)、ヒョウアザラシHydrurga leptonyx)等が候補となります。

この中で、当時の住民にとって見慣れない生物であった可能性を考えると、ニュージーランドで見かけることが非常に稀なミナミゾウアザラシ、もしくはヒョウアザラシのいずれかであった可能性があります。

マスタートン・モンスターの目撃は、ただの一度きり――

その後、同じ生物が再び報告された記録はありません。

未知の獣だったのか。

先に挙げた鰭脚類だったのか。

それとも未知の巨大なカワウソのような動物だったのか。

1883年の春、ルアマハンガ川のほとりで、犬を殺した「何か」がいた。

確かな記録として残っているのは、それだけです。

UMA探しの旅は終わらない (国内外1000体以上のUMAが待っています)


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