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2026年10月9日金曜日

自治体を動かした「一九七三年ノ山狩リ」~ 剣山の大蛇(セクション3)


■自治体を動かした「一九七三年の山狩り」 ~ 剣山の大蛇(セクション3)

セクション2の続き。

― 剣山に残る「大蛇」の記憶 ―


実は、剣山の大蛇には1973年以前の伝承もあります。

剣山の麓では、大正時代(1912~1926年)に狩猟中の人物が巨大なヘビに遭遇したという話が伝えられています。

この人物は大蛇に遭遇した後、発熱し、数日後に死亡したともいわれています。

この話は、1973年の事件とは直接つながっているわけではありません。

また、伝聞によるものであり、現代の史料として確認された事件と同じ扱いはできません。

しかし、非常に興味深い共通点があります。

「大蛇に遭遇した人物が、その後に死亡する」

というモチーフです。

これは日本各地に残る蛇の怪異譚にも見られるパターンです。

日本では古来より、蛇は単なる動物ではありませんでした。

水や山、雷、豊穣などと結びつき、ときには神として、ときには人間に災いをもたらす妖怪として語られてきました。

巨大な蛇になれば、その意味はさらに強くなります。

「山に何か巨大な蛇がいる」という話は、単なる生物目撃談ではなく、山そのものに対する畏怖と結びつきやすいのです。

そう考えると、1973年の事件も興味深く見えてきます。

昭和のUMAブームという現代的な要素の中に、もっと古い「山の大蛇」というイメージが重なった。

そこに4人の目撃者と120人の捜索隊という現実の事件が加わったことで、剣山の大蛇は新しいUMAとして姿を現したのかもしれません。

― 剣山に眠る「秘宝」と大蛇 ―

(史上最大のヘビ、ティタノボアの実寸骨格模型)
(image credit : DAVID MIKKELSON)

剣山には、もう一つ奇妙な伝説があります。

それが、古代イスラエルの失われた秘宝が、この山に隠されているという「ソロモンの秘宝伝説」です。

そして1973年の大蛇騒動が起きたころには、この大蛇を秘宝の守護者と結びつける話も現地で囁かれていたといわれています。

では、なぜ剣山にソロモンの秘宝があると考えられるようになったのでしょうか。

この伝説の背景には、昭和初期の聖書研究家・高根正教(たかね まさのり)氏の存在があります。

高根氏は「ヨハネの黙示録」や「古事記」などを独自に研究し、古代イスラエルの聖櫃が剣山に隠されているという説を唱えました。

そして昭和11年(1936年)から、実際に剣山で発掘活動を行っています。

つまり、「剣山にソロモンの秘宝がある」という話は、古代から剣山に伝わってきた民間伝承というわけではありません。

昭和初期に生まれた一つの説が、実際の発掘活動などを通じて広まり、その後の剣山のイメージの一部になっていったものなのです。

そんな背景を持つ剣山で、今度は「10メートルもの大蛇が現れた」という事件が起きました。

大蛇が秘宝を守っていたという話が生まれたのも、こうした土地の物語を考えれば、それほど不思議なことではありません。

もちろん、ソロモンの秘宝が剣山に存在したという歴史的証拠はありません。

しかし、この話を知っておくと、1973年の大蛇が単なる巨大なヘビとしてではなく、「剣山に隠された何かを守る存在」へと解釈されていった背景が見えてきます。

― 剣山の大蛇はどこへ消えたのか ―


剣山の大蛇について、最も奇妙なのは、その後です。

10メートル級の巨大なヘビが本当に存在したのなら、なぜ二度目の目撃がほとんどないのでしょうか。

120人もの捜索隊が山を探しても、大蛇そのものは見つかりませんでした。

その後、明確な写真も標本もありません。

巨大なヘビが通ったという痕跡だけを残して、姿を消してしまったのです。

もし海外産の大蛇だったなら、寒冷な山中で長く生き延びることができなかったのかもしれません。

もし巨大な在来種だったなら、そもそもそのような個体がどこから来たのかという問題が残ります。

もし見間違いだったなら、4人が同時に見た「10メートルのヘビ」とはいったい何だったのでしょうか。

そして、もし伝説だったなら、なぜ町役場まで動くほどの騒動になったのでしょうか。

どの説を採っても、ひとつは説明できても、別のところに謎が残ります。

だからこそ、剣山の大蛇は面白いのです。

巨大なヘビそのものよりも、「確かに何かを見た」という複数の証言と、その後に残された痕跡だけが存在し、肝心の怪物だけが消えてしまった。

この構図が、非常にUMAらしいのです。

1973年の剣山。

朝の山中で草刈りをしていた4人の前に現れた、全長10メートルともいわれる巨大な蛇。

彼らは逃げ帰り、町へ報告した。

そして120人もの人々が山へ入った。

しかし、そこに怪物はいなかった。

それから半世紀以上。

剣山の大蛇が再び現れたという確かな記録はありません。

それでも、山のどこかには今も「10メートルの蛇がいた」という記憶が残っています。

もしかすると、あの日の目撃対象は本当に巨大なヘビだったのかもしれません。

あるいは、昭和という時代、そしてUMAブームが生み出した一瞬の怪異だったのかもしれません。

そして剣山という深い山そのものが、人間の想像力を「大蛇」という形に変えただけなのかもしれません。

それでも、4人が目撃したという巨大な姿と、山中に残された幅40センチメートルもの痕跡が、いったい何だったのかは分かっていません。

120人が山を捜索しても、大蛇の姿を捉えることはできませんでした。

大蛇は見つからないまま、あの日の証言と痕跡だけが、今も剣山に残されています。

(参照サイト)


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