2026年8月21日金曜日

長い腕で獲物を抱き寄せる海の怪物 ~ ニウヒ


■長い腕で獲物を抱き寄せる海の怪物 ~ ニウヒ

今回はニウヒ(Niuhi)。

ポリネシアの海に伝わる巨大な海の怪物です。

その姿はサメやシーサーペントにも似ていますが、最大の特徴は人間のような「腕」と「手」を持つことでした。

― サメではない「ニウヒ」 ―


「ニウヒ」という言葉は、ポリネシア各地で古くから使われてきた名称です。

本来はホホジロザメやイタチザメ、シュモクザメといった人喰いザメや大型種のジンベエザメ、さらにはクジラやアザラシなど、「大型で危険な海の生物」を意味する総称でした。

転じてニウヒは強欲さや底知れない食欲の象徴ともなり、大食漢や、肉をむさぼるように食べる人を「ニウヒのようだ」とたとえる表現としても使われています。

しかし、未確認動物学で語られるニウヒは、それらとはまったく異なる存在です。

イースター島(ラパ・ヌイ)、マルキーズ諸島、クック諸島、サラ・イ・ゴメス島周辺などで語られるニウヒは、長い腕を持つ謎の巨大海洋生物として知られています。

― 腕を持つシーサーペント ―


ニウヒの詳細な証言を収集したのは、ニュージーランドの歴史学者ジョン・マクミラン・ブラウン(John Macmillan Brown)でした。

彼は当初、この怪物の話を非常に懐疑的に見ていました。

過去の文献には一切登場せず、島民だけが知る伝承だったためです。

しかし、何人もの住民へ繰り返し聞き取り調査を行った結果、互いに示し合わせた形跡がないにもかかわらず、驚くほど一致した証言が得られたといいます。

その姿は全長約9メートル。

幅広い体に、滑らかな濃い青色の皮膚を持ち、頭部は横に広く、上あごが下あごより長く突き出していました。

そして何より異様なのが、首の後ろに折りたたまれた約1.2メートルもの長い腕です。

腕の先には「人間の手」あるいは「鋭い爪」があり、狩りの際にはこれを伸ばして獲物を抱き寄せ、そのまま鋭い歯で飲み込むと伝えられています。

― 2頭で狩りをする怪物 ―

(イトマキエイを従えるブリモドキ)
(image credit: Wikicommons


ニウヒは単独ではなく、2頭で行動すると言われています。

主な獲物は魚ですが、サメやエイと同じように、体の周囲にはコバンザメNaucrates ductor)やパイロットフィッシュことブリモドキNaucrates ductor)が付き従うこともあるそうです。

ポリネシア神話では人間を襲う恐ろしい怪物としても恐れられ、一部では海の神や祖先の霊の化身として畏怖される存在でもありました。

その眼光には獲物を金縛りにする不思議な力があるとも伝えられています。

― 漁師たちが目撃した海の怪物 ―


ブラウンは島民から数多くの目撃談を集めています。

なかには、飲み込まれた人間が生きたまま吐き出されたという伝説めいた話もありましたが、比較的現実味のある証言も残されています。

ある島民は、モトゥ・ヌイ島付近で仲間とマグロ釣りをしていた際、釣り上げようとしていたキハダマグロを、腕を広げたニウヒが追いかけているのを目撃しました。

ニウヒはそのままマグロを丸飲みにし、船の近くまで浮上してきましたが、漁師たちがオールで頭を叩くと海中へ姿を消したといいます。

また別の日には、夕暮れ時に海岸へ立っていたところ、自分たちの影が海面へ映りました。

すると沖からニウヒが近づき、その影へ噛みつこうとしたという奇妙な証言も残されています。

さらに、アピナでカニ漁をしていた男性ノエが2頭のニウヒに襲われた話や、マタベリ湾ではウリヘヘウという男性が足をつかまれて海へ引きずり込まれそうになったものの、2頭のニウヒ同士が争い始めた隙に救助されたという話も伝えられています。

― 現代にも続く目撃例 ―


ニウヒを思わせる目撃談は近年にも報告されています。

1993年9月、クック諸島のマニヒキ島とラカハンガ島の間で漁をしていたソロモナ牧師と息子は、海鳥が一点に集まっている場所を不審に思い船を近づけました。

すると水面から、「トカゲに似ているがクジラよりも巨大な生物」が姿を現したといいます。

親子は危険を感じ、その場から急いで離れたため、それ以上詳しい観察はできませんでした。

この目撃例も、ニウヒや未知の海棲爬虫類ではないかと考える研究者がいます。

― 正体はヒョウアザラシか、それとも未知の海獣か ―

(ヒョウアザラシ)
(image credit: Wikicommons

ブラウン自身は、ニウヒはサメでもクジラでもなく、未知の海棲哺乳類、あるいは海棲爬虫類ではないかと考えていました。

一方、研究者アニック・プサールは、1934年に制作されたニウヒの彫刻について、南極に生息するヒョウアザラシHydrurga leptonyx)ではないかと指摘しています。

ヒョウアザラシは稀にイースター島付近まで北上することが知られており、長い前肢を持つ姿が「腕のある怪物」と誤認された可能性も考えられます。

また、大型のサメや未知の海棲哺乳類、さらには絶滅した海棲爬虫類の生き残りなど、さまざまな説が唱えられています。

事実、コバンザメ・ブリモドキを従える習性などからはサメやハクジラ類の影がちらつきますが、一方でヒョウアザラシのような未知の来遊生物の記憶が混ざり合うことで、この伝説が形作られていったのかもしれません。

しかし、獲物を抱き寄せるための長い腕という特徴は、既知の海洋生物では説明が難しく、現在でもニウヒはポリネシアを代表する海のUMAとして語り継がれているのです。

UMA探しの旅は終わらない (国内外1000体以上のUMAが待っています)

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