■最も有名な宇宙人写真 ~ 捕らえられた宇宙人
今回は「捕らえられた宇宙人」。
誰でも見たことのある「アレ」です。
英語圏では一般的に「ヴィースバーデナー・ターゲブラットの宇宙人(The Wiesbadener Tagblatt Alien)」と呼ばれます。
これは、1950年、ドイツの『ヴィースバーデナー・ターゲブラット(Wiesbadener Tagblatt)』紙に掲載されたことに由来します。
日本での報道のされ方は数多くありますが、例えば以下のようなものが典型的です。
― 真偽不明の写真 ―
いわゆる宇宙人の写真とされるものの中でも、とりわけ論争の的となってきたのがこの小人宇宙人の写真だろう。出所からして曖昧きわまりない。マーガレット・サッチスの『UFOエンサイクロペディア』には、1950年代に西ドイツのケルンの新聞に掲載されたものだという説明がある。
なんでも、メキシコシティーの近くに不時着した宇宙船の乗員だという。写真の小人が生きているのか、それとも死体なのか、ということさえはっきりしない。なんだかいわくありげなトレンチコートの男性二人に両手をつかまれて直立している。宇宙人の身長は一メートル足らずだろう。それを二人の婦人が見まもっている。
この写真がアメリカで紹介されたのは、おそらく1959年のこととみられる。この年に出版された単行本に掲載されているらしい。ただ調べてみたが、その出版社は少なくとも当時の住所には存在していない。たぶん、会社はもうないと思われる。その後は詳しい解説もなしに、写真だけがなにかというと引用されてきた。
UFO研究家のほとんどは、この写真が偽物だという見解をとっている。サルの毛を剃って宇宙人らしく見せかけたのだとか、ロウ人形を使って細工したのだというのである。だが、腕のつけねあたりの筋肉や真っすぐに伸びた脚、そして知性を感じさせる顔立ちは、サルとは信じがたい。
これまでにも何度か、UFOの専門誌などがこの小人宇宙人写真についての情報提供を一般に呼びかけたが、はかばかしい成果はあがっていない。
― 宇宙人の死体写真集(中村省三著)より
― FBIの関与 ―
日本では、このように「謎」や「論争」を強調する一方で、「FBIの極秘文書から漏洩した写真」として紹介される場合もあります。
これは、後にアメリカのタブロイド紙などが「FBIが宇宙人を連行している証拠」として紹介したためです。
そのため、英語圏でも「1950年のFBI宇宙人(The 1950 FBI Alien)」と呼ばれることもあり、実際にFBIの資料に入っていたことは事実です。
しかし、ここでお気付きの方もおられると思いますが、FBIが連行したのか、FBIの極秘資料に入っていたのかで、話は全く異なります。
結論を先に言うと、「FBIの極秘文書から漏洩した写真」は全くの嘘ではありません。
しかし実態は少々異なります。
FBIの資料に含まれていたことは事実ですが、決してそれは極秘文書ではなく、当時のFBIが「世間でこんな噂が流れている」という情報を単にスクラップして保管していただけ、というのが真相です。
― 実体は? ―
では、この写真の正体は何なのか。
その答えは拍子抜けするほどシンプルです。1950年の4月1日、つまり「エイプリルフール」のジョーク企画として制作された捏造写真。それが全ての真相です。
宇宙人の正体は、同紙のカメラマン、ハンス・シェフラー(Hans Scheffler)の息子、ピーター君です。
当時の工夫で写真の上からペイントを施し肌の質感を演出し、奇妙なエイリアンに仕立て上げられました。
彼を両脇から抱えるトレンチコートの男たちも、当局の捜査官などではなく、単なる新聞社の従業員や関係者です。
ドイツの一地方紙がついたささやかな「嘘」が、後年、海を渡り、タブロイド紙の格好のネタとなり、ついにはFBIのスクラップブックにまで紛れ込んだというわけです。
この「公的機関の記録に残っている」という事実が、この写真に不思議な説得力を与え、日本のオカルト界でも長きにわたり大切に語り継がれることとなったのです。
― 語り継がれる「未解決」のロマン ―
海外では数十年前に結論が出ているこの写真が、なぜ日本の一部では今もなお「真偽不明の怪写真」という立ち位置を保ち続けているのでしょうか。
そこには、単なる情報の遅れではない、日本のオカルト界が守り続けてきた一種の「様式美」があるように思えてなりません。
細かな検証やファクトチェックで「正体」を暴いてしまうことよりも、あのトレンチコートの不気味さや、捕らえられた小人の悲哀に満ちた表情から広がる「想像力の余地」を優先する。
それは、合理的ではないかもしれませんが、かつて私たちが未知のものに対して抱いていた、純粋な畏怖やワクワク感を保護するための、一つの優しさでもあったはずです。
しかし、情報が瞬時に世界を駆け巡る現代において、こうした「永遠の謎」という形での見せ方は、次第にその居場所を失いつつあります。
「真相は闇の中」としておくことが、かつてのサブカルチャーに特有の熱量を生んできたのは事実です。
ですが、あの日のトレンチコートの男たちが抱えていたのは、実は宇宙人ではなく、私たちがいつまでも持ち続けていたいと願った「未知への憧れ」そのものだったのかもしれません。
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